表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】在宅ワーク中に「リアル垢BAN」されました。 ~派遣先の同僚(実は神だった)がノルマ達成のために俺を異世界へ強制連行~  作者: 無呼吸三昧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/30

第015話 「奪われ与えられし者」

天ちゃん視点になります。

続きます~よ~!


※大規模修正


 お互いの距離、僅か5メートル程度の別室。


 壁一枚。

 それが私と、この世界の絶対たる創造神との間に横たわる、永遠の距離。


 放送室。


 与えられた私の全て。


 今、指示を待っている。

 無機質な白い壁を見つめながら。


 今までは生きていた。

 今は生きている。


 違う……


 存在を許されている。

 生かされているとすら言えない。

 ただ、そこに在ることを許容されているだけ。


 役割の全うをずっと待つ。


 ここは無限の牢獄。


 椅子に座れる自由。

 考えを巡らせる自由。

 妄想の自由。

 叫ぶ事の自由。

 狂う事の自由。

 壊れる事の自由。


 自由。

 自由……

 自由……


 そう。

 これは捨て置かれた自由。

 神が使い道を思いつくまで放置されているだけの、空白の時間。


 私は……いや、僕は……


――いけない、考えては……いけないこと――


 過去を振り返れば、狂気が顔を覗かせる。


 何人も、何世代も、何個も、何匹も……。

 同じようにココに座っていた[個]は居た。

 私以前の「誰か」たちの残滓を感じる。


 だが……居なくなった。

 壊れたのか、消されたのか、あるいは別の何かに作り変えられたのか。


 だから私がここに居る。

 今は私が、その席に座っているだけ。


 それが本当の神の意志。


――神意――


 ひたすらに待つ。


◇◇◇◇◇


 [伊勢 快真 - いせ かいしん -]


 元々それは私の名前だった。


 異世界の神に奪われた名前、存在。


 異世界の神が顕現するのに丁度良い名前だったのだろうか。

 ただの音の響きが気に入っただけなのかもしれない。


 面白いと、そう言われた。

 神は無邪気に笑っていた。


 そしてこうも言われた。


――代わりに好きな世界を楽しませてやろう――


 それは慈悲などではなかった。

 実験動物への餌付けだった。


 チート、理不尽、ほのぼの、ハーレム。

 沢山の世界を渡り歩いた。

 主人公として、あるいは脇役として、時には魔王として。


 違う世界はあった。

 異世界神の造る不条理な理屈と、理不尽な摂理の上に成り立つ、歪な箱庭。


 そして異世界は、世界の歪みの責任を問うてくる。

 私が望んだわけでもないのに。

 神が設定しただけの悲劇なのに。


 捏ねて纏め固められた無垢の悪意の責任を、私が背負わされる。


 耐えられないと思った。

 何度も死に、何度も生まれ変わり、その度に魂が削れていく。


 この世界の神たる存在にそう告げた。

 「もう、止めてくれ」と。


 ならば横に立つが良い。

 神はあっさりとそう言った。


 そして部屋があてがわれた。


 想像でモノが造れると神に言われた。

 何もない白い空間に、私の想像力だけが許された。


 机と椅子とパソコンとマイクがある。

 何故か造ろうと思った。

 前世の、人間だった頃の職場の風景。

 だが、使う気は起きない。


 神は放送室と言った。

 ここから世界を見下ろせと。


 それも良い。

 役目が与えられるなら。

 当事者として苦しむよりは、傍観者として枯れる方がマシだ。


 生前……、いや存在していた頃の地球の食べ物を想像して造る。

 あの頃のジャンクフード。

 そして食べた。

 当たり前の想像通りの味。

 味覚だけが、私が私であった証。


 神に食べている物が異常なほど臭いと文句を言われた。

 ブルーチーズとくさやのラザニア。


 人とのやり取りのようで嬉しかった。

 文句を言われることすら、コミュニケーションだと感じた。

 そっと与えられた部屋の扉をしめ、創造で造った食べ物を味わった。

 孤独の味と共に。


 何年かが過ぎ、そして今に至った。


 暫くして白い部屋が騒がしくなった。

 斎京という男がやって来たからだ。


◇◇◇◇◇


 斎京という男が此方側の世界で顕現した。


 主のお気に入り。

 新しい玩具。


 名前は剣士ケンシ


 変わった名前、あぁ、犠牲者か。

 と、瞬時にそう理解した。

 神は名前遊びが好きだ。

 この世界の絶対神はパロディが大好きだ。


 勝手気ままに造って弄り、嗤い、飽きて捨てる。


 世界も星も対象が何であってもやることは変わらない。

 命の重さなど、紙切れ一枚ほどもない。


 ただの妄想の延長。

 空想の使い捨て。


 その中で存在する私。


 悠久の時の中で与えられた"斎京"という何者かとの短いやり取り。

 彼もまた、踊らされている道化。


 くだらない。

 何も救われない。

 彼がどんなに足掻こうとも、神の手の平の上だ。


 ただ、懐かしい……

 人とのやり取りが。

 対等な(と思っている)相手との会話が。


 思い出す。

 遠い昔の自分の名を。

 初めて白い部屋に来た日のことを。

 今の彼と同じように、希望と困惑を抱いていたかつての私を。


 そして神はその男のための新たなる世界を造った。

 無数の星を。

 ゆうに何千兆を超える数の、新たなる魂の犠牲者達を。

 たった一人の暇つぶしのために。


 いつの間にだろうか、自分の姿が変わっていた。

 手が自分の物と違うので流石に気が付いた。

 シワの刻まれた男の手が、白く滑らかな女の手に変わっていた。


 自立する全身鏡を造り出し、己の姿を映し見る。


 40代半ばのハゲデブだった自分が、スラリとした女性の身体になっていた。

 ここからはそういう設定が必要なのだと瞬時に理解した。


 眼鏡。

 髪型は金髪お団子。

 服装は女物の紺のパンツスーツ。


 秘書か、あるいは英語教師だろうか。

 神の趣味か、あるいは「できる女」という役割か。


 そうか……

 ならばと覚悟し、椅子に座ってその時を待つ。

 心を殺して。


 目を閉じる。

 じっと。

 ずっと。


◇◇◇◇◇


 斎京様とのやり取りは愉快そのものだ。


 彼は反応がいい。

 ここの異世界の神が気に入ったのも理解出来た。

 悲壮感がなく、どこか飄々としている。


 それと、色んな声の演出を考えるのも楽しい。

 事務的なアナウンスの裏で、少し遊ばせてもらった。


 ゾウリムシに『グリーンフラット』と名付けたのは私のセンスだ。

 本当は[ミドリムシ]だと分かっていて、あえて異世界感が出るようそう名付けた。

 少しカッコいい名前の方が、彼もやる気を出すと思ったからだ。


 結果、彼自身のモチベーションには何も問題がなかったのでよかった。


 だが、あの生き物が造られた世界へ及ぼした影響は甚大だった。

 あれほどの繁殖力と変異性は、計算外だった。


 沢山の犠牲者を見た。

 把握の為に見続けた。

 私の名付けた生物が、世界を飲み込んでいく様を。


 小さきモノも、大きなモノも、強きモノも、か弱きモノも。

 斎京様だったモノに流され、呑まれ、喰われて消えていく。


 たとえ世界の全てが呑み込まれて終わったとしても。

 私はその全てを把握しようと見続けた。

 それが、放送室に座る者の義務だと思ったから。


 だが、神から10年単位で確認を促し、無反応が3回続けば中断せよとの指示があった。

 飽きたのだろう。

 変化のない世界に。


 神の予想通り、今回の斎京様の転生は3回目の確認を持って中断となった。

 緑一色に染まった世界は、リセットされた。


 その後、斎京様は他の生き物として再度の転生。


 斎京様が虫に転生されている間に、異世界の生命体の客が白い部屋に招かれた。

 神は斎京様が不在のこのタイミングを狙ったのだと思う。

 別の暇つぶしを見つけたようだった。


 私は斎京様を楽しませて時間を引き延ばすための作戦を練った。

 彼が簡単に死んでしまわないように。

 まだ、この物語が終わらないように。


 虫としての転生をアクションゲームにする事を思いついた。


 操作用のコントローラーはZ-Boxタイプにしておいた。

 私はReplayStationコントローラの方が好きだったのだけど何となくそうした。

 斎京様は変なマニア臭がするので、きっとL2R2のトリガー操作に拘りそうだと思ったからだ。

 案の定、彼はそれに食いついた。


 そこそこ楽しんで貰えたようで、実時間で500日以上もずっとプレイしていた。

 途中、依り代の虫が死ぬからと睡眠などを織り交ぜさせたのが記憶に新しい。

 私もMMO全盛期を駆け抜けた人間だが、ただのレベリングを淡々とこなす斎京様に少し戦慄を覚えたのは秘密だ。

 彼の適応能力は、異常だ。


 結局の所、斎京様は虫の生に行き詰まり、毒蜘蛛への特攻による自殺でその転生は終わった。

 やはり竜も狩るような蜘蛛という生き物に、ゲジゲジ世界の最強程度では歯が立たないのは仕方がないのだろう。


 普通、蜘蛛は竜を狩らない?

 いえ、有名作品の設定は絶対ですので。

 そういう理不尽が、この世界にはまかり通っている。


 そんなタイミングに、白い部屋での大きな仕様変更が発生した。


 神は何故か幼女の姿となり[イセちゃん]を名乗った。

 私の名前を、愛称のように使い始めた。


 それに合わせて私のこのキャリアウーマンのような姿。

 これは、今この仕様変更のためだったのだと理解した。

 神のおままごとの配役が決まったのだ。


 何故か女子高生になってしまった斎京様は[キョウちゃん]と呼ばれている。


 私は[天ちゃん]だそうだ。

 天の声だから、天ちゃん。

 安直だが、悪くない。


 それも良い。

 他にやることもない。

 大した刺激もない。


 キョウ様はとうとう人間として転生する事になったようだ。


 やっと始まるのだと思った。

 虫けらとしての実験は終わり、物語が動き出すのだと。


 チュートリアルを終え、白い世界での気休めから設定、そして準備の時間は終わったのだと。


 そしてキョウ様は人間として異世界へと旅立っていった。



もう少しだけ天ちゃんが続くのじゃ。

次回、天とウチカの邂逅。


ぜってぇ見てくれよな。


な、そうつなげるの?という煽りが気になりましたら★★★★★頂ければ幸いです。

ブックマークやコメントも嬉しいです。


宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ