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【悲報】在宅ワーク中に「リアル垢BAN」されました。 ~派遣先の同僚(実は神だった)がノルマ達成のために俺を異世界へ強制連行~  作者: 無呼吸三昧


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第014話 「緑の悪魔と幼き神」

何故、死んだと思われていた姉が生きていたのか。


※大規模修正

第014話 「緑の悪魔と幼き神」


 私が10歳になった年のある日。


 これまで優しかった世界は、突然私達に牙を剥いた。


 父は逃げろと言った。

 領民を、家族を守るために。

 その背中が、私が父を見た最後の姿だった。


 長兄と次兄、母二人、そして私は逃げた。


 取るものも取らず、村から飛び出した。

 村を預かる私達の家族が殿しんがりだった。


 湖から離れる方向にある町を目指して走った。

 後ろからは、緑色の波が迫っていた。


 父が追いついて来ることは無かった。


 それでも皆で走った。

 涙を拭う暇もなかった。


 隣町の大きな門が見えた。

 既に伝令が伝わっているのだろう。

 門は開け放たれていた。


 母二人と私は門から町の中に入った。


 他の町の人は既に逃げ出したあとなのだろう。

 町には逃げ遅れた年寄りと病人だけが残っていた。


 二人の兄は、男手として扉を固める為に門に残った。

 少しでも時間を稼ぐために。

 町の住人を少しでも助けるつもりだったのだろう。

 立派な騎士の卵だった。


 私は母達と一緒に、来た方向と反対の出口から走って町の外に出た。


 馬もなにもない。

 ただ歩を進め、次の町を目指す。


 兄二人はもう追いついてこなかった。


 出来るだけ遠くに逃げなければいけない。

 あの緑の悪魔から。

 全てを飲み込み、溶かし尽くすヘドロの海から。


 走る、歩く、そしてまた走る。

 次の町は見えない。

 喉が焼け付き、肺が悲鳴を上げる。


 高台に差し掛かる。


 私達にはもう坂を登り切る体力は残っていなかった。


 そこで母達は座り込んだ。

 私ももう歩けなかった。


 スカートは走るのに邪魔なので破り捨てた。

 買ってもらったばかりの綺麗な靴は、傷んで捨てた。


 今は町で見つけた辛うじて履ける程度の草のサンダル。

 それもすでのボロボロだった。


 足の裏は皮が剥け、すり切れて血が出て酷い痛みがする。


 体力も使い切った。


 満身創痍。


 もう無理なのだと。

 幼いながらにそう悟った。


 ヒガシカとニシカの母様は、私だけでも逃げなさいといった。

 その顔は泥だらけだったけれど、とても美しかった。


 私と兄上達の母は首を横に振った。

 あなただけでも最後は私と一緒にと。


 三人で抱き合いその時を待った。

 緑色の悪意が、丘の下まで迫っていた。


 すぐにその時はやってきた。


 一瞬の闇。


 刹那の痛みと苦しさ。


 身体が溶ける感覚。


 その後は何も無かった。


 今はただ、無限に広がっている微睡み中で消滅をまっている。

 意識が闇に溶けていく。


 その筈だった。


◇◇◇◇◇◇◇


――肌寒い――


(真っ白な部屋にいる?)


 手を見る。

 見慣れた少女の手があった。

 泥も血も付いていない、綺麗な手。


 身体をみる。

 一糸まとわぬ状態だった。

 ほんの少しだけ膨らみかけた胸も見慣れたものだった。


 こちらを見ている気配を感じる。


 意を決して気配のある正面を見た。


 黒く長い髪を左右で括った幼い少女が、立ったままこちらを見ている。

 裸の少女ウチカの全てを見透かすかのように、澄んだ黒い瞳は真っ直ぐにこちらを見据えていた。


 さっきまでは居なかった筈だった。


(いつの間に現れたのだろう。

 5~6歳かしら? 可愛らしい子。

 今頃ニシカがこの位の歳だったかしら?)


 少女の頭には最後に別れた時のヒガシカとニシカの顔が浮かんだ。

 北の国へ療養に行っていた弟と妹。


(あの場所に二人が居なくてよかった。

 でも、最後にもう一度二人に会いたかった……)


 ウチカはついさっきまで母様に抱きついていた筈であった。

 だが、今はウチカだけがこの場所にいて、母親達はどこにもいないようだった。


 自分は死んだ。

 そしてここが死後の世界なのだろうと思った。


 死ぬときは一人だと誰かに聞いた気がした。

 寂しいけれど、不思議と恐怖は感じなかった。


 不意に鈴を転がすような声がした。


「我が世界の少女よ、心して聞くがよい」


 黒髪の幼い少女が、私にそう話し掛けて来たのだ。

 その声には、見た目にはそぐわない威厳があった。


『はい』と返事をしようと私が口を開き掛けると、幼き少女は人差し指を自身の口にそっと縦にあてる。

 そして[しぃっ]と息を吐いた。


 口を開くなと、そう言っているのだと理解した。


 私はグッと口を紡ぎ話し掛けるのを我慢する。


「それでよいのじゃ。

 妾はお前達の住む世界の神じゃ、信じるかどうかは好きにせよ」


 幼き少女……いや幼女は自分を神だと言った。


 私は今、彼女の神々しさを直接肌で感じ取ってる。

 神である彼女の言葉が間違いで無いという直感に、首をコクリと縦に振る。


「余り多くは語らぬぞ。

 一度だけ聞くのじゃ。

 妾は其方に特別な役割と使命を与えて現世に戻そうと考えておる」


 神の言葉に私の身体がビクリと震えた。


(現世に? という事は生き返れる……と?)


 そう聞こえた。


「勘違いしてはいかんのじゃ。

 他の生き物どもと同じように好き勝手に生かしてやろうという話ではない。

 それは世界のことわりに反する。


 それと、詳しい話は面倒なのでせん。

 妾はこの役目が其方で無くとも一向にかまわんのじゃからな。

 それでもこの話に乗る気があるかの確認なのじゃよ。

 どうする、乗るかの?」


 神様は冷徹だった。

 慈悲で生き返らせてくれるわけではない。

 ただの取引だと言っている。


 だが。


 悩む必要などない。


 既に死んでいるのだ。

 これ以上失うものなど何もない。


(ヒガシカとニシカ、あの二人に生きてもう一度会えるかもしれない!)


 それは絶望の中に射した、とても大きな希望の光だった。


 私は迷うことなくコクリと大きく頷いた。

現世への帰還を望んだウチカの運命は?

次回、まだまだ白い部屋。


ちょっとまた白い部屋かよ~と気になりましたら★★★★★頂ければ幸いです。

ブックマークやコメントも嬉しいです。


宜しくお願い致します。


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