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【悲報】在宅ワーク中に「リアル垢BAN」されました。 ~派遣先の同僚(実は神だった)がノルマ達成のために俺を異世界へ強制連行~  作者: 無呼吸三昧


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第010話 「疑念の始まり」

矢人間 ヒガシカ参上!

サイキョウ?


さぁ……誰ですか?

ショーヴ師匠の事ですか?


――ははは――


矢刺さってて痛いな~っと。


※大規模修正

 ふと気がつくと、俺は空中に浮いていた。


 眼下には猛スピードで流れる景色。

 俯瞰視点で自分が見える。

 幽体離脱というやつだろうか。


 気を失ってるからかな?

 痛みを感じないのはありがたい。


 あ~もしかして。


『これ、天ちゃんのサービス?』


 俺は脳内で問いかける。


『そうとも言えます。

 ですがそう言う訳でもないとも言えます。

 気を失って倒れている間に治療が進むと思われます。

 その間に不足した情報の整理をお願い致します』


 あ、そういうこと?

 要するに、寝てる間に仕事しろと。

 状況説明ナレーションを済ませておけと。


 ご都合用ですか。

 ブラックですね、相変わらず。


 さて、じゃあまだ足りてない補足をしましょうか。

 暇だし。


 まず、さっきまで乗っていた乗り合い馬車は12人乗りでしたよ。

 乗ってたのは僕と師匠だけでしたけどね。

 貸し切り状態でした。


 御者は二人いました。

 一人は交代要員です。

 これはどうでも良いところでした。

 モブです。


 そうそう。

 走っていた場所はアルケンダス帝国の首都クルー=マイスの郊外です。

 軍の演習場がある所から程近い場所を通る街道があるんです。


 元々は自分が兵士の訓練のために来ていたので、軍施設の演習場で降りる予定だったんですよね。

 勿論、本当はそこから自分の足で歩いていく予定だったけど。


 運が悪かったのかな。

 あと少しで到着って時にこうなってました。

 到着目前でのゲームオーバーです。


 今?

 今の状況ですか?


 眼下を見てください。


 僕は未だに気を失ってますが、師匠のお姫様抱っこで軍の施設に向かってますね。

 膝に矢が刺さったままなので、振動を与えないように上半身を固定する、完璧なキャリーです。


 しかも、かなりの猛ダッシュですね。

 人が人を持ち上げた状態で出せるスピードじゃないです。

 背景が流線になってます。


 元々の身体の知識として、師匠がそれくらいの速度を楽に出せる程凄い人物なのは分かるんですけどね。

 斎京の知識としてみたら人間じゃないです。

 車より速い。


 1歩が10メートル。


 グ○コとかじゃないですよ?

 それは1粒で300メートルです。


 表現が難しいですが、ザザッザザッザザッ!って感じで100メートル走なら3秒位です。

 チーターです。

 動物の方じゃなくて、不正行為の方のチーターレベルです。


 実は自分……

 いや、ヒガシカ君も同じ位の速度で走れるっぽいですね。

 身体スペックの記憶がそう言ってます。


 今となっては走れた……が正しいですかね。

 過去形が辛い。


 では、ついでにヒガシカ君の事を話しましょう。


 顔は普通ですけど、身長は170cmくらいです。

 赤茶の短髪で目も茶色。

 日焼けはあまりしてないです。


 何所にでもいる好青年といった感じだと思ってください。

 モブ顔に近い主人公顔です。


 で、驚くことなかれ。

 なんとね。

 この子の剣術レベルは53です。


 剣聖の説明の時、レベル50程度で生涯を終える事が殆どって言ってたの覚えてます?

 達人が50です。

 要するに、15歳にして剣の達人と同じ境地にいると。

 既に一般の達人を超えていると。


 そういうことです。


 剣聖が認めるだけあります。

 所謂本当の天才ってヤツです。

 SSRキャラです。


 え?

 それってチートじゃないかって?


 そうですね。

 まぁ、世の中そんなに甘くないですけどね。

 その才能を発揮する足が、今このザマですから。


 ……。


 ……。


 あ、もう施設に到着してしまいましたよ?

 流石に師匠は速いなぁ。


 それでは、カメラを師匠視点に切り替えましょう。


◇◇◇◇◇


 馬車の中、スッと立ち上がる剣聖ショーヴ・ノワール・ミズカミ。


 俺の剣の弟子であり、末の弟の如く面倒を見てきたヒガシカ。

 その才能に惚れ込み、その境遇に涙し、実の家族以上に慈しんできた。


 今、俺の眼前ではそのヒガシカが膝に受けた矢の痛みで気を失っていた。


 俺は目の前で白目を剥いて倒れているヒガシカを、両腕でそっと抱え上げる。

 矢が何かに触れぬよう。

 振動が患部に響かぬよう。

 細心の注意と、最速の動きで。


 バンッ! と乗合馬車の扉を蹴り開けると、そのまま間髪を入れずに飛び降りる。


 遠く目線の先に見える建物。


 向かうは演習場の治療施設。

 ここからざっと400メートル程先にある剣術の訓練施設に併設されている。


 ショーヴは地面を蹴った。

 土が爆ぜ、景色が置き去りになる。

 全力で走りだした。


◇◇◇◇◇


 元々、ショーヴとヒガシカは後200メートル程先の馬車の乗り合い場で下車する筈であった。


 確かに近くには弓兵用の訓練施設はあった。

 しかしそれは、通常の矢では貫通する事などない壁に囲われた場所にあるのだ。

 安全管理は徹底されているはずの場所だ。


 自国の領内。

 目的地に着く直前。


 最も油断するタイミングでの事故だった。


(膝、しかも両膝とは……なんと言う、なんという不運なのだ!

 家族を失い必死に足掻いてきたこの子が、いったい何をしたと言うのだ!?

 なぜにこの子はここまでの不幸を背負わねばならぬのだ!!

 怪我が膝でなければ……せめて怪我の原因が矢でさえなければ……クソ、クソ、クソ!!)


 抱きかかえられたヒガシカの膝。

 そこに深々と突き刺さった矢。

 そのやじりは、陽の光を浴びて鈍く、しかし神々しいほどの輝きを放っている。


 黄金色の金属で出来た特殊な鏃。


(オリハルコン……[竜貫き]で間違い無いな)


 一般兵が訓練で使うような代物ではない。

 国宝級の武具だ。


 弓を射ったヤツはもう分かっていた。

 この距離、この貫通力、そしてこの鏃。


 エターノル神王国 筆頭近衛騎士 聖弓 ナーニ・ワノア・キンドウ。


 そして[竜貫き]は聖弓の称号を持つ者だけに作成と使用が許される。

 所謂ユニーク武器。


(チィッ! いけ好かない守銭奴国家の雌ガキめが……とうとう手を出して来やがったか……)


 先週からアルケンダス帝国に賓客として招かれていたのは周知の事実。

 両国の友好の証として、合同演習の視察に来ていたはずだ。


(選りに選って最もやっかいな客の流れ矢かよ……クソが!!

 あの女は狙ってやがったんだ……間違い無い。

 今日、俺がこいつを……

 ――ヒガシカ――を連れてここに来るのを!)


 壁を貫通する事を前提とした試射訓練。

 馬車が通る時間を計算し尽くした狙撃。


 そして流れ矢での事故。


 ショーヴは訓練での試射に[竜貫き]を使った事に、聖弓ナーニの悪意を確実に感じとっていた。

 あのアマ、笑ってやがるにちがいない。

 脳裏に、金に汚いあの女騎士の嘲笑が浮かぶ。


 だが、状況証拠だけでは故意と断定は出来ない。

 これはあくまでも訓練場からの「不運な」流れ矢なのだ。


 事故。


 そう、悪意のない事故として方を付けるしかないのだ。


 エターノル神王国とアルケンダス帝国は現在停戦中の間柄。

 本来はアルケンダス帝国の敵対国家なのだ。


(ここで相手の気分を害せば、仮初めの和平に大きな亀裂を入れかねない……)


 特に、剣聖であり剣術指南役として大きな力を持つ剣聖ショーヴ・ノワール・ミズカミ。

 彼が口を出すのは問題が拡大する可能性が高かった。

 個人の感情で国を動かすわけにはいかない。


 大陸最大の国力を誇ったアルケンダス帝国。

 だが、不幸にも帝国は東方山間部から始まった不死のヘドロによる甚大な被害により、その国力を大きく失っていた。

 農地は汚染され、多くの民と兵を失った。

 そして10年経った今でも、その傷跡は癒やし切れてはいなかった。


 今の帝国の状況は、エターノル神王国と事を構えることを、なんとしてでも避ける必要があった。

 たとえ、相手が挑発してきていると分かっていても。


(俺だけの力ではなんともできぬ……弟子の……身内の怪我の仇を取ってもやれんとは……)


 ギリリ、と奥歯が砕けそうなほど噛み締める。


 ――剣聖とは何だ。何と弱き者だろうか――


 湧き上がる悔しさ。

 何時以来だろうか……。

 剣を極め、最強と呼ばれて久しい自分が、これほどまでに無力さを感じるとは。


 負傷し意識のない愛弟子を胸に抱き、ショーヴは走る。

 今はただ、一秒でも早く、この子の足を……未来を繋ぎ止めるために。


 目的の治療施設の扉が、ショーヴの目前に迫っていた。

シリアスが仕事を始めてしまったようです。

なんか真面目な話になってきました。


変な名前で真面目要素は無い筈なのにおかしいな?


というか、ヘドロの被害デカすぎじゃない!?


治療の続きが気になりましたら★★★★★頂ければ幸いです。

ブックマークやコメントも嬉しいです。


宜しくお願い致します。


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