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第001話 「今さら異世界ってネットもないし……」

終わったコンテンツと言っても過言ではない異世界ストーリー。

ちょっと懐かしさを味わいながらも、先人の軌跡を辿って色々と変わった人生を楽しもうか。


※大規模修正しました。

少しでもとっつきやすくなっていればいいのですが……

※2021/09/07 誤字等修正、後半に合わせて会話内容の整合性確保

※2021/09/18 続投に向け整合性見直し、全体の記載方法統一、誤字修正実施



 2月28日 晴れ♪



 俺はどこにでも居そうな中年のオッサン。



 そして貴族だ。



 日本だし華族なんじゃないかって?

 なに言ってんだ……

 貴族も貴族、独身貴族に決まっているだろう!




 シャッとカーテンを開け窓の外を見る。




 曇ってますね……


 どんよりと。



 最初の「晴れ♪」はなんだった?




 ――そしていつも通りの朝が始まる――




 自重に揺れるお腹が怨念の唸りをあげる。


 まずはトイレで用を足そうじゃないか。


 そして手洗いついで歯を磨いて顔を洗う。




 鏡の中の俺はいつも眩しい。





 上から照らすライトが頭頂に反射してるからだ。


 最近は反射率がパない。

 人の肌は脂でこうも光るのだというのが分かった。



 人生経験というのは大事なものだな……






 お腹の中がスッキリした俺は部屋に戻ってデスクトップパソコンの電源を入れる。






 最近のパソコンはBIOSの起動が遅い気がする……


 え?

 UEFIだって?




 ちょっと間違えただけだろう…

 そんな事にツッコむなんて中年のなんたるかを分かってないなぁ。




 ――いつの間にか起動したOSは、顔認証カメラで俺の顔を認識しログインを成功させた。


 最新のCPUとSSDの高速なデータ読み出しのお陰で、起動直後からスムーズな動作である。


 続けて必要なアプリケーションを起動。


 まずはSkyppuだ。

 もちろんBusiness!


 起動、自動ログイン…されて連絡先が次々と表示される。



 時間は8時過ぎたところ。

 まだ皆は準備中か移動中か。



 案の定、殆どのメンバーはオフラインか長時間の退席中だ。



『うーん、伊勢とちょっと話したかったんだけど…まぁもうすぐINするかな?』



 ――伊勢っていうのは自分の労働派遣先のプロパー……社員さん――



 続いてリモート接続のSplasherを起動。

 仕事先のリモートPC経由で出勤打刻を~完了っと。


 ハイこれで無事出社。


 在宅ワークの良さだなと思う。



 何やってたって?


 在宅ワーカーの出勤風景です。

 どうでも良かったですね。




 仕事を始めるのにはちょっと時間が早いので、ローカル側のメーラーアプリであるウォーターバードを起動して個人的なメールをチェックする。


 いつも変なメールが何通かは届くんだよね。

 普通のメールが0件でも……



 きっと俺だけじゃ無いはずだ!!



 それはさておき、その内の一通を確認してみる。



(えーと、なになに?)


件名:アカウントが制限されました

本文:お客様のアカウント情報をロックしましたです。

……



(宛先はちゃんと顧客名で書けよな。

日本語もおかしいし……こんなのに引っかかるやついねぇだろ?)



 パチパチと怪しいメールを迷惑メールに振り分ける。

 やってもやっても新しいメアドで来るからやっかい極まりない。




(ん?なんだこのメール… え?)



――当選のお知らせ――


だと!


件名:当選のお知らせ

本文:斎京 剣士 様

ネット懸賞サイト神の園 事務局と申します。

この度はmVidderグラフィックアダプター購入者限定、豪華旅行の当たる連動応募懸賞にご応募頂きありがとございます。


この度、斎京様は特等「異世界転生(転移可)」に当選致しました。

おめでとうございます。


特等は公式では商品内容非公開の特別な賞となっております。

詳細につきましては、後日担当者よりご連絡致します。


……


 どうやら懸賞に当選したらしい。


 斎京 剣士 - さいきょう けんし - はガチ本名。





 ちなみに職業は剣士じゃないがな。

 いや、そうだろ?

 今日日、そんな職業じゃ生活出来ないと思うぞ?



 まぁいいや。



 ちなみに連動応募となっているが、購入後に製品アカウント登録を済ませると勝手に応募されるやつだ。


 ちゃんと本名で送られてきたメールはしっかり確認する必要がある。

 グラボのユーザ登録時の過去メールを確認すると、確かに応募している履歴もあった。

 間違いなさそうだ。



――当選ヒャッハーーーーー!!!!!――



 の前に、確か


  1等「キリバス共和国」


   ……ってそれどこなん?


  2等「岐阜」か「群馬」のどちらかを選択


   ……下呂か草津ってことかなぁ


     あってる?


  3等「ギフト券」一万円分


   ……めっちゃ普通だな



 というか、特等マジでか。

 異世界転生(転移可)ってどうやるんだよw



 普通に考えてあり得ない。



 もしかしてコレ、大人がやる冗談なのか!?




 海外動画配信者の一般向けドッキリ企画とかじゃないだろうな?



(日本じゃ問題あるから[海外の]なんだけど……)





 色んな思考が頭を過るが、こればかりは想像で解決するものでもないだろう。




(うん、一旦忘れて次だ、次っと。

おお?

丁度良く伊勢もログインしたか)




 タスクバーでSkyppuのアイコンが点滅している。

 クリックすると会話窓が開き、[伊勢 快真]と表示され既に会話したログが表示されていた。


 ちなみに伊勢のフルネームは[伊勢 快真 - いせ かいしん -]だ。


 物凄くイイカゲン(好い加減ではないぞ?)で嫌な事やキツイ冗談も平気で言ってくるんだけど、何故か俺は全然腹が立たないだよな~。

 不思議な奴だ。


※ここからの「」はチャットになります。



「斎京さん、おはようございます。」


「おっす伊勢、昨日教えて貰ったアニメ見たぞ?アレ、最後の展開いらなくね?」



 そうそう、自分が伊勢に伝えたかった内容はコレ。

 というかコレだけ。


 くだらない?

 そんなもんですよ……



「え?もう見終わったんですか?

 あれ2クールありましたよね?


 ちょっとペース早すぎませんか~

 まぁ……感想には同意なんですけどね。」



「あんなの、一晩あれば見終わるだろう、普通?」


「いや、普通の生活なら見終わらないですよ…どんだけ暇なんですか――

 と。そうそう、実は今日は斎京さんに別の用事があったんです。」



 と、伊勢が唐突に話題を変える。



「ん?

 なに?

 俺に仕事でも振ろうってか?

 それじゃぁ取り敢えず断る方向で!」



 こうは言うものの、実際の所はいつも冗談だ。

 派遣先のプロパー社員とはいえ、別部署の伊勢が俺に仕事って事はないだろう。

 どうせプライベートな話なんだろうと思って軽く受ける。



「斎京さん、神の園の異世界転生(転移可)に当たりましたよね?」






 ぶっ!?


 な、なにぃ!



「な、なんで知ってる!?

 個人情報漏洩か?

 おまえ、まさかウチのPCハッキングしたのか!?」




「違いますよ!

 断じて違います!!


 ほら?


 届いた懸賞のメールの最後に書いてあったでしょ?

 詳細は後日[担当者]から連絡が行くって…斎京さん、ちゃんとメール読んでますか?」




 あー?




 あー…





 ホントだ。

 書いてあった。



「って、お前が何で担当者なんだ?

 お前、プロパー社員だろ?」



 伊勢は俺の派遣先のプロパー社員。

 その認識に間違いは無い筈だ。



(俺?俺は孤高のビジネスパートナー、そうBP社員なんだぜ?)



「そうですよ?

 仕事と言える仕事は他にはしてないですね。」



「じゃあなんで!?」



「なんでって、転生(転移可)の異世界の神が自分なんで、担当として調整がいるから連絡してるんです。

 あとコレは給料貰ってないので仕事じゃないです」



「なに?え?

 神ってボランティアなの?


 ねぇ?


 ――――って、神ぃぃ!?」



 無給というか普通に働いて生活しないといけないの?>神


 余所世界の神が?

 この世界で?


 っていうか神!?

 神って派遣先のプロパーの事だっけ?




 あれ?普通に神で合ってる?




「ボランティアっていうか、自分の場合は家業?みたいなものですかね。」



「家業!

 ウル○ラマン一家は皆ウルトラ○ンみたいなもんか?

 お前の会社、プロパーは神か、すげぇなw」



「……言われてみたらウ○トラマンは似てるかも?


 というか親類縁者みんな神ですが、プロパーは関係ないですよ?

 あれ?

 でもウルト〇マンは母がいるから出産か産卵で増えますよね?


 じゃあちょっと違うみたいですね」


 そのツッコミは、ウルトラ〇ンが産卵かもしれないって話なの?

 だったら母が女王ってこと?





 いや、ツッコミどころはそこじゃない。

 流石にそれは分かってる。


 それよりも、こんな身近に神がいるとは!

 って事だよな。



 あれ?



 と言うことは…神の力で別のお願いにも出来るの…か?



「所で……伊勢君は神なんだよな?」


「はい?君?


 ええ、まぁ神ですよ。

 異世界のですが。


 名前で気が付きませんか?


 [いせ かいしん]ですよ?」





 ――ほ、ほほほ! 本当だーーーっ!――




「それ、お父さんが洒落でつけたんじゃないの?」



 って、洒落で子供の名前はつけないよな。

 付けるなよ?



「やだなぁ。

 これは自分でつけたんですよ~。


 父は別の宇宙の神ですけど、人間の有り様とは違うので生まれた子の神に名前をつけたりはしないんですよ?

 神は生まれた時点で一人前の自我と教養がありますからね。


 それでも若い神は経験も乏しいので、年配の別の神の元で色々と覚えるんですけど。」




 すげぇ…

 神ってそうなんだ。



 子育て要らずとか流石は神だな。



「そうそう、神なんだったらさ、異世界じゃなくてこの世界で金持ちとかにして貰えないの?」


 その方がいい気がするんだよね、危ない世界とか行ってもしょうがないし。



「そんな事が出来たら自分は働いてませんよ!

 まぁ、出来るのはこの世界の神だけです。

 僕は所謂ところの管轄外ってやつなんで無理ですよ。」



 確かにそうかも。

 実際に働いてるもんね。



「でも、じゃあさ、神って何が出来るの?」



「色々出来ますよ?

 自分の管轄領域でなら。」




 管轄領域?



「管轄があるの?」


「そうですよ?そう言ってるじゃないですか。


 自分の管轄領域。

 プライベートエリアですね。


 この世界からみたら異世界ですよ?




 どうですか?

 早速行きますか?」



 ってそんな軽いノリで行けるのかよ。



「ちょ、ちょっと待って!

 そんなサクっと行けるの?

 すぐ帰れる?」



「サクッと行けますよ?

 すぐ帰れませんけど。」



(帰れないのかよ!!!!)



「片道切符じゃねぇか!」


「切符はいらないですよ?」


「そういう話じゃねぇよ!!」


「じゃあ行かないんですか?」







 いや、正直行きたいけど…





 けどなぁ……






「斎京さん、もしかして凄く悩んでます?


 じゃあ特典つけますよ。

 今なら大サービスです!」



 それ、TVショッピングと訪問販売が得意なやつじゃん…



「まぁ……


 一応揺れてるから?


 聞くだけ聞いてみるけど?」




「こんなのどうですか?

 スタートを粘体生物か節足動物で始めるとか?」



 それ、もう今更やってもどうにもならないやつじゃん…



「それか死に戻っちゃうとか?


 あと死なないってのもありますよ?


 えーとそうだ。


 好きなゲームの世界観とかどうですか?

 何が好きでしたっけ?」


「テトリスだけど?」


「…

 ……

 それは世界観が成り立たないですね……





 って、この前[ドラゴン探求]の新作とか、今更昔のMMOで[ラネージスリー]とかやってませんでしたっけ?」




 バレた。




「よく覚えてたな。」


「幼児退行の始まった痴呆老人じゃないんですから覚えてますよ!

 じゃあ片っ端から流行の…もとい既視感を伴うヤツで行って死に戻っちゃいましょうかね。


 残機無限チートをプレゼント!


 不死もオマケしとくので安心ですよ!」







 待て。



「不死になったら死に戻れないじゃんか?

 その無限の残機はいつ使うんだよ!?


 あと生き埋めになったらどうなるの?


 ねぇ、どうなるの?


 超心配なんだけど?」





 不死で生き埋めとか洒落にならん。





「大丈夫ですよ。

 脳内コンソールにリセットつけときます!!」



「脳内?

 それ、頭を大岩とかでぶっ潰された状態だとどうなる?」



「まぁ脳が潰れた状態だと脳内コンソールは開けないですね。


 死んだけど、やっぱり死んでない風ですかね。


 でも岩が風化して無くなれば頭が勝手に元に戻りますよ?」




 それ、何百年かかんの?

 もしかすると何千年も待つんじゃね?




「ない、ない、ない。


 それはないよ伊勢…


 それにしてもさ、なんでそんなに異世界に送ろうとしてるんだ?」



 本当に不思議だ。


 伊勢は神は仕事じゃないと言っていた。

 じゃあ何故、俺を異世界に送ろうとしているのだろう?





「お手伝いですけど?」


「え?」


「え?

 なんか変ですか?


 ……こっちの神って、人間でいうところの親戚の叔父みたいなものなんです。


 自分、誕生日にちょっと欲しい物あってですねぇ…


 叔父のお手伝いすると好きなものを買って貰えるんですよね。

 あとお小遣いも貰えるし!」



「そうなの?

 そんな程度の話なの?

 というかこっちの神?その叔父さんにとって俺を異世界に送り出す理由ってなにかあるの?


 勇者とか?

 魔王とか?」




「済みません、そういえば…

 地球の神からしてみれば理由は特に思いつかないですね…


 まぁ、送る人を選ぶのは自分なんで。」




 ないのかよ…


 ってお前が選んでるんかい!!



 そりゃ地球の神にはが理由ねぇ訳だよ!!



「でも、こっちの神は[手伝いもしないヤツにタダでものは与えられない]って厳しいんですよ?

 こっちも欲しい物があるし頑張ってるんです!

 ま、それでいつも同じような手伝いをやってるんですけどね。」



(それって、おじさんが甥っ子に何か買ってあげるための既成事実作って単にプレゼントしてあげたがってるだけじゃね?)


(厳しいの?俺には単に甘々な理由にしか聞こえないんですけど?)


(神って馬鹿なんじゃねぇの?)



 はっきり言ってこの話、なんか危なそうだからあんまり乗り気じゃない。


 正直、無かった事にして欲しい。

 辞退したい。


(うーん、こっちの神に黙ってればわからないんじゃないか?)



「なぁ。

 こうシレっとさ、行かなくても行ったことに出来ないものかね?」



「あ、今後ろで地球の神本人が見てるんで無理です。

 諦めて異世界に行く方向でお願いします。」





 あ、そう。





 神様達って暇なんだな~





 あ~、在宅ワークの余波かもしれんね…


 平和だな…







(あれ?画面を良く見たらSplasherが閉じてる!?)



 慌ててアプリケーションを開きなおすが自動ログインで弾かる



(なんかSkyppuのユーザも伊勢しかいなくなってる…

それどころか自分のユーザー名が表示されてないのに会話出来てる…だと?)



「それと、斎京さんのこの世界の存在はもう消してしまったそうです。

 こっちの神がそう言ってます。

 なので安心して異世界行きましょう!」


 存在を!?

 消しただとぅ!!



(リアル垢バンだとぅぅ)



「てめぇ!ちょっと!戻せ!コラ!!

 補填しろ補填!!

 訴えるぞ!!!」



「まぁまぁ。

 とりあえず、一旦はこの世界から離れましょう。

 今からこの世界の斎京さんは完全に消すらしいです。

 じゃあまたあとで。」


 伊勢の最後の書き込みを認識した瞬間、俺の意識は何の前触れもなく遮断された。



次回、定番の白いところ。

やっぱ行かないでどうするよ?



もし

もしですよ?


少しでも続きがきになりましたら★★★★★頂ければ幸いです。

ブックマークやコメントも嬉しいです。


宜しくお願い致します。


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