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ダメダメな主人公とスーツ着脱マンの俺。

この小説を読む時の注意は、特に何も無いですが、寛大な心と暖かい眼差しで見てくださると助かります。

待ちに待った大学生活。俺はどれだけこの時を待ちわびたことか。

高校時代は周囲の奴らが青春を謳歌している中、彼女はいない、部活もしていない、勉強はそこそこ、友達もそこそこの中途半端な何も取り柄のないただの男子高校生だった俺だが、ようやく、夢のキャンパスライフを過ごすことができる!!

オシャレして、落ち着いた雰囲気のカフェで彼女とデート。

あぁ、なんて素晴らしいんだ…。

平凡でつまらなかった俺の人生を変えるべく大学生活をエンジョイ!


「する予定だったのに……。俺にも分け隔てなくそんな夢の生活が訪れると思っていたのに……」


「あんたまだそんなこと言ってるの?バッカじゃないの??男ならもっとシャキッとしなさいよ」

「誰のせいでこんな状況になったと思ってるんだよ!!俺だって……。俺だって……。普通の女の子と仲良くデートしたかったッ!!」


呆れたという表情をしている女、ニコニコしているお姉さん、こちらを白い目で見るショタ。


 なんだこの状況ッ!


 俺の夢の生活を返してくれぇー!!!



あれは遡ること大学入学3日前。俺は入学式に着ていくスーツを着ては脱ぎ着ては脱ぎという着脱作業を大学入学が楽しみのあまりずっと繰り返していた。

我ながらおかしな光景だとは思うが、それぐらい大学入学が楽しみだったというのは伝わるだろう。

そんな着脱を繰り返している最中、突然謎の光が俺を包み込んだ……。

 

 そう、パンイチのまま……。


  ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄


「眩しッ!ちょっと母さん、子供がまだ着脱している途中でしょうが!!」

俺はてっきり母親がスーツ姿の息子の写真を撮りに来たのとばかり思っていた。

だが、俺がカメラのフラッシュだと思っていた光は、どうやらフラッシュなどではないらしく、眩しくて閉じていた瞼を開けると、目の前にはRPGの世界によくある玉座が、そしてそこにはイメージ通りの王様、ではなく2つ結びのロリっ子が座っていた。

あまりの突然の出来事に俺は動揺を隠せなかった。だってさっきまで自分の部屋でスーツを着脱してたんだよ!?

「ふぅー、落ち着け。まずこのような場合は周囲の状況確認が先決だ。」

目の前には玉座に座るロリっ子、俺はレッドカーペットの上にいる状態で、俺の横には3人ほど人がいた。

1人は魔法少女的な胡散臭い服装の女の人、もう1人は学ランを来た小学生くらいの男の子、最後の1人は大胆な鎧に身を包んだグラマーなお姉さんだった。

「ダメだー!!周囲の状況を確認しても何が何だか全く分からない!!」

なんだこの状況!!

あれか、異世界転生、異世界召喚、異世界転移的なやつなのか!!

勘弁してくれッ!

俺は夢のキャンパスライフをガールフレンドと共に過ごす予定が…。

「キャーー!!」


 ドゴッ


すると突然横にいた胡散臭い服装の女に棒のようなもので殴られた。突然殴られたので思わず睨んでしまった。

だが女の目には涙が浮かんでおり、少し顔も赤い、そして可愛い。

突然殴られたとはいえ可愛い女の人を睨んで怖がらせてしまった。

これは男、いや紳士として謝らなければ…!!

「お嬢さん、急に睨んでしまいもうしわけ…」


 ドゴッ!!


「二度もぶった!!親父にもぶたれ…」

暴力反対この女苦手だわ。

だいたい俺が何をしたと言うんだ。

近頃の若者は直ぐに手をあげてしまうのか。やれやれ困ったものだな。

などと考えていると、コスプレ女が俺の方を直視せずに顔を赤らめて怒鳴ってきた。

「早く何か着なさいよ!!このパンイチ変態野郎ッ!!」


この女は何を言ってるんだ……?


何か着なさいよって……。


あ……。


「キャーーー!!!」

玉座の間にうら若き青年の悲鳴がそれはそれは響いたのだった…。


なんやかんやあり、召使い的な人に服を貰い少し落ち着きを取り戻した。

だが疑問は山のようにある。

一通り説明してもらわないと困る。

玉座にいるロリっ子の親御さんなら何か知っているかもしれない。

「あのそこのお嬢さん、質問があるんだけど親御さんは居ないかな

 ??」

「私はお嬢さんでは無い!メメだ!そして君より遥かに年上だ!」

面倒くさいタイプの子だ。

このような子供はあまり刺激せずにその子の言うことを否定することなく上手く流すのが正解であり大人な対応だ。。

「そうなんだ。お兄さんより年上なんだね。メメちゃんはいくつなのかな?それとパパかママはいないのかな??」

否定せずにメメという子の言うことを聞きつつ、上手く情報を引き出せないだろうか。すると横のコスプレ女が耳打ちしてきた。

「あの方は神様だからあまり無礼な態度取ると天罰がくだるわよ」

「神様???あのロリっ子が???」


俺は話が全く理解出来ず首を傾げた。

そして思わず声に出してしまった。

「ナギサちゃんが言う通り私は神だ。あとロリっ子はやめてくれないか?若く見られるのは嬉しいがロリという言い方はさすがに…」

俺も馬鹿ではないからこの現実味のない状況下で神と言われれば信じるしかないが、内心ドッキリでした〜的なことを、まだ疑っている自分がいる。

謎の光に包まれて、気がついたらパンイチのまま玉座の間的な所にいる。

あまり深く考えても仕方ないのでとりあえず信じよう。

だが、信じるは信じるが……。

「とりあえず家に返して貰えませんかね?」


ファンタジー的な世界ということはわかったが、俺は家に帰りたい。

するとロリ神様は困ったように話しかけてきた。

「待ってくれ、マサトくん。まずは話を聞いてくれ。君たち4人を集めたのは他でもなく私だ。色々疑問に思っていることは多いだろう。だが私も集めたくて君たち4人を集めたわけではない。」

さっきからこのロリ神様の言っていることが理解ができないが、俺も含めたこの4人にはそれぞれ特殊能力的な、神の力的なのを授けて貰って大冒険とか!?

男の子的には凄くワクワクな展開!!

キャンパスライフも捨て難いがこれはこれでいいのかもしれない…。


勇者マサト。いい響きじゃないか。


「なんで神様が俺の名前を知ってるのかはさて置き、どんな大冒険が俺を待っているのですか!?」


「では、説明させて貰おう。まず先に世界の成り立ちについて話せねばなるまい。まず世界というのは複数存在しており、人間が存在している、していない、モンスターがいる、いない、魔法という概念がある、ない、という風に様々パターンの世界が存在している。そして、それぞれの世界ではどのような形であれ正義と悪が対立するように出来ている。そして正義と悪がぶつかり合い、何らかの形で正義か悪にに勝敗が着き、世界は勝った方の理想に近づく。そして時間が流れ、また正義と悪の衝突が始まる。これを繰り返すことによって世界の均衡は保たれるのである」


正義と悪の対立……?

俺の世界でそんな対立あったか?

少なくとも俺はそんな対立知らないな。

でも他3人はなんか理解してる感じだ。

分からないことを分からないままにするなと先生が言ってたので、まずは質問だ。

「あの、神様!質問よろしいでしょうか?」

「なんだい、マサトくん」

「他の皆様方は理解している感じなんですけど、俺の世界には正義と悪の対立なんてないと思うのですが…?」

もしや、俺は自分の世界とかではなく多くの世界を救うべく生まれてきた超特殊な人間なのでは?

または、実は戦闘種族の血を引いていて、戦うために生まれてきた的な!?

オラ、ワクワクすっぞ!


「それはだね、マサトくん…。まぁ先に君に他の3人を紹介しよう。この3人はそれぞれの世界での主人公に当たる存在である。まずは君の隣にいる子だが田所 ナギサちゃんである。彼女は18歳で()()()()である」

魔法少女…だと…。

そんなことサラッと言われてもはいそうですか、とはならない。

やはり俺の理解を遥かに超えるだったか。

だが、それにしても……。

「18歳で魔法()()って…w」

ギリギリ少女って言う年齢じゃん。

「何よ!言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!この変態!変質者!キモ男!私だって好きで魔法少女やってる訳じゃないのよ!!!」

ちょっとハッキリ言い過ぎじゃないですかね。

さすがに年下にそんなに言われるとお兄さん泣いちゃう。

「まぁまぁ、2人とも落ち着きなさい。ナギサちゃんには魔法少女ナギナギという立派な名前があるのだから!!」

「ナギナギwwwwwww」

ナギナギは反則だろ。

面白すぎてお腹が痛い。

一生懸命名前を紹介するロリ神様可愛いな。

「絶対殺すからな……。変態……。」

まるで世界が凍りつき時間が止まったかのように感じた。

「ひっ……」

あまりの殺気に一瞬で笑いが止まった。

ロリ神様もあまりの怖さにオドオドしている。

可愛い。

「ま、まぁ、ナギサちゃんの紹介はこの辺にして次にマサトくんの反対側にいるのが、リリールド・ルーナ・ルーリリちゃんだ。彼女は20歳で勇者をしている。」

「り、りりーる?」

「リリールド・ルーナ・ルーリリです。ルナと呼んでくださいね〜。マサくん」

はぅ、眩しい。いや神々しい。

ロリ神様とはまた違った神々しさがある。

魔法少女の子も可愛いが、お姉さんはなんというか、母性の塊。

溢れ出す母性。

そして、ダイナマイトボディ。

素晴らしい……。

「キモ男…」

「ちょっと言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!」

ボッソっと言われたのでさっきのの口調を真似して魔法少女に言い返してみた。

「あんたみたいなキモイやつさっさと死んで、地獄に落ちて、でも地獄でもその気持ち悪さから追放されて、そのまま永遠に無の空間を彷徨い続けて、孤独という名の絶望を永遠に味わい続ければいいのに」

やだ、何この子。凄い想像力。

傷つくとか、そういうのじゃなくて、逆にそこまで言われたらいっそ清々しい。

「あらあら、喧嘩はダメよ〜。ナギちゃんもマサくんも仲良くしないと〜」

流石年上のお姉さん。

これには魔法少女もバツが悪そうに黙り混んだ。

というか、勇者と言われるとこの鎧もなんとなく納得できる気がする。

「話は済んだかね?脱線するのは構わんが程々にな。まだ紹介が済んでいないのだから。おっほん、そして最期に紹介するのは、神崎 タイガくんだ」

そういえばこのショタは一体なんなんだ?

魔法少女、勇者ときたら次はなんだ?

超能力者とか?それとも実は見た目は子供の名探偵とか?

「タイガくんは13歳で()()()()だ」

「ヤン…キー…?」

この可愛らしい中性的な顔の子がヤンキー???

しかも13歳ってことは中学生か。

小学生かと思ってた。

てか、ヤンキーってなんだそれ。

おかしいだろ。魔法少女、勇者、ヤンキーってなに?

どんな世界観でこの物語は進んでいくの?

考えれば考える程に、俺の頭は混乱していった。

さすがにこの事実は魔法少女もお姉さんも、びっくりしている。

「何かおかしいですか?」

ヤンキーのタイガくんが初めて口を開いた。

おかしいか、おかしくないかで、聞かれたらおかしいとしか言いようがないが、なんというか言いづらい。

普通の真面目な生徒に見えるし、喋り方も普通。

ヤンキーであるはいいが、見た目とのギャップが……。

「おかしいか、おかしくないかで言われればねぇ?」

魔法少女が目を合わせながら、あんた何とかいいなさいよ的な目でこちらを見てきた。

そんな事言われても俺はなんという言えばいいのか。

まさかヤンキーだとは思わないだろ。

などと考えているとお姉さんが急にショタに話しかけた。

「おかしいですよ!トラちゃんみたいな可愛い子供がヤンキーだなんて!」


『トラ…ちゃん…?』


その場にいた全員が困惑した。

タイガ、タイガー、トラからのトラちゃんだとして、ヤンキーに対して可愛いは不味いのではないだろうか。

そもそも男の人に対して可愛いというのは褒め言葉では無い。

「今なんと言いましたか?」

あぁ、これはプッチンきたパターンだよ。

漫画とかでよく見るやつだよ。

このアマ、二度と口がきけないように、蝋人形してやろうか的な啖呵が出るぞ。

「流石に僕もヤンキーというのは良くないと思いますが、可愛いというのは男に対しての侮辱。それを聞き流しては男が廃るというもんです」

「でも、とても可愛らしいですよ??綺麗でスベスベのお肌に、学ランがまだそんなに似合っていないあどけなさ、完璧に可愛いですよ」

「うなっ!だ、だから可愛いとかそーいうのは、や、やめてくださいと…」

「なんでですか、可愛いのに。もっと自分に自信を持ってもいいんですよ?」

 明らかにお姉さんがニヤニヤしている。年下をいじめて楽しんでいる表情だ。

というか少し変態チックというか、なんというか。

そして、ショタヤンキーは顔を赤くしながら必死にやめてくださいと言っている。

本当にヤンキーなのだろうか?

それにしても中性的な顔立からとても可愛いくみえる。

これが男の娘と言うやつなのか。

いやいや、いくら可愛くても相手は男、成長すればいずれはに可愛くなくなるだろう。

冷静になれ、俺ッ!

「みさなん、それぞれ疑問もあるでしょうが、本題はここからです。なぜ、皆さんが集められたのか。3人とも心当たりありますよね?」

すると3人とも下を向き、自称神から目を逸らした。


「先程話したが世界は正義と悪がぶつかることによって常に均衡を保っている。それなのに君たち3人ときたら、主人公的な存在なのに、全く悪と向き合おうとしないではないか!」


 

俺には状況がさっぱり分からない。

というか、俺以外のみんなは面識があるのか?

「イマイチ内容が理解できないのですがきないのですが、俺以外の皆さんはそもそも面識がおありで?」

「そうだな、半年に1回、各世界の正義の味方側の人間を集めて定例会を開きそれぞれの近況報告をしているためナギサちゃんとルナちゃんのように基本的には面識があるのだが、タイガくんのように定例会に参加しない子が数名おるのだが、そのような子達は私としか面識がないのだよ」

俺の知らないところではそんな事が半年に1回行われてるのか。

それにしても他の世界の正義の味方はもっとまともな人であり、ここに集められたのか3人はポンコツということなのか?

というか、全く悪と向き合わない主人公って、なに?

それはもはや主人公なのか?

悪と向き合わないなら…。

「それなら、主人公を変更とか出来ないんですか?」

「私もそれができるならそうしたいのだが、世界にはヒーローの血筋とヴィランの血筋という物があり、生まれた時からその者が主人公になるのかどうか定められているのだ」

ということは、ここに同じく呼び出された俺は、主人公!?

まぁ、薄々気がついてはいたが、俺が主人公……。

「神様、ということはこのダメな主人公達を構成させるために、真の主人公である、俺がここに呼び出されたわけなんですね。だいたい事と次第は把握したました。主人公なんで!必ず悪を根絶やしにしてみせましょう。主人公なんで!」

この俺が主人公。

主人公。なんていい響きなんだ!

平凡だった高校生活にもこれで納得がいく。

「いいか!ダメな主人公諸君。今日から私のことは教官……いや、真の主人公と呼びたまえ!」

ふっ……決まった……。

やはり真の主人公たるもの厳しく指導しなければ……。

少し白い目で見られている気もするが、気にするものか。なぜなら俺は真の勇者だからッ!

「あながち間違ってはいないが……。まだ君が召喚された理由を話していなかったな。吉田マサトくん、19歳。君は……」


「俺は……」

玉座の間に、その瞬間静寂が訪れた。

そして俺は、なぜここに呼ばれたのか知ることになる。

「君は…………



      ()()で選ばれました」




()()?」



「君は無作為に選ばれたただの凡人です」

「え、ま、まって、特別な力は?特殊能力は?」

「ないです」

ないです、ナイデス、ナイデス………。

俺の頭の中で「ないです」という言葉が永遠にリピートとされていた。

「じゃあ、なんで、なんのために俺はクジで呼び出されたんですか……?」

真の主人公的な存在じゃないならなんで俺は……。

なんか一気に萎えてきた…。

「まず、君の世界に正義と悪がぶつかり合ってはいないと言ったね。それは君が主人公でも、またその仲間でもない証拠である」

さっきまで白い目で見ていた3人の目が哀れみの目に変わってきた。

「まして、正義と悪のことを知らないとなると全くの部外者であり、主人公などとは程遠い存在である」

やめて、そんな哀れみの視線を俺に送らないでッ!

これ以上惨めな俺を見ないでッ!

「全くの部外者の人たちの中から無作為に選ばれたのが、吉田マサトくん、君であり、君にはこれからこの3人の主人公達と共にそれぞれの世界を巡り彼らを悪と向き合わせてくれ。そして世界の均衡を保ってくれ。」

「いや、主人公でなければその仲間でもなく、ただの部外者の俺にはそんな大役無理ですよ。無理無理無理。どっか有能そうな人でも適当に見つけてその人連れていけばいいじゃないですか。俺はパスで。」


『えぇ……』


 さっきまでの威勢はどうしたとばかりの周囲の声。

なんの特殊能力もなければ魔法も使えない、剣も扱えない、狙撃も出来ない、力もない。

そんな俺に何ができるだろうか。何も出来ない。


だから俺は…。


「俺は………夢のキャンパスライフを過ごすんだぁぁぁぁ!!!」


 そう言って俺は玉座の間から飛び出した。



  ---------------------------


以上が回想である。

結局凡人の俺が逃れられるわけがなく、さらに自力では元の世界に帰ることも出来ないので、渋々、魔法少女、勇者、ヤンキー、そして凡人というよく分からないパーティで過ごすことになってしまった。

そして今現在何をしているのかというと、自称神が作った仮装世界でこれから悪と戦う可能性があるため、何かしらの力を俺が身につけなればならないらしく、修行(仮)を、している。


「修行と言ったって俺には別に特技もなんもないのですが……」

「本当になんの取り柄もないのね。魔力も1ミリも感じないから魔法も出来なさそうだし」

 うっ……。

「あまり体を鍛えてるようには見えないから、剣術も無理そうよね」

 はうッ!

「同じ理由で殴る蹴るという動作も厳しそうです」

 ぐはぁッ!

もうやめてマサトのライフはゼロよ!

「あの、ほんと、こんな役立たずがクジで選ばれてすみません、なんなら、生まれてきてすみません」

仮想世界が重たい空気に包まれている。

みんな俺になんと声をかけたらいいか迷っているようだ。

ふっ、これも作戦通り。こうして全員の同情を誘いみんなで神様に俺を元の世界に返してもらおう作戦。

我ながら名案だ。

正義の味方ならこんな俺に同情しないはずがない。

特にお姉さんとショタは直ぐに同情してくれるだろう。

魔法少女がしつこそうではあるが……。

「な、何かしらの特技は、あるでしょ!例えば得意なスポーツとか!」

「ないです」

「じゃあ、勉強が得意とか!」

「いや別に」

「コミュニケーション能力が高いとか!」

「まったく」

「じゃあ―――――」


魔法少女の質問責めは凄まじかったが、本当に自分に改めて特技がないことが分かった。

なんか、凄く悲しい気持ちになりました。


「やっぱり神様に言って元の世界に返してもらった方がいいのではないでしょうか?」

ナイスショタ!!

それ、その言葉を待ってたのよ!!

「俺も皆さんの足を引っ張るくらいなら、元の世界に戻って平凡でつまらない人生を送った方が迷惑がかからないかと思うのですが」

はい、完璧。

これで元の世界に帰還できる。ありがとう異世界。

そしてただいまマイワールド。


「そういう訳にも行かないのだよ、マサトくん。君はクジで選ばれしまったからには、世界の均衡が保たれるまで元の世界に返す事ができないのだよ」

「なん……だと……」


どこからともなくロリ神様が降臨し、俺たちに話しかけてきた。

というか、理不尽すぎないか!

クジで選ばれただけなのに……。

「ですが神様、彼は本当に何もできないのです!運動も出来なければ頭も別に良くない。特技は何も無く、ほんとに使えないんです!!」

おいショタ、もっとオブラートに包め。

天然で言ってるなら相当タチ悪いな。

意識して言っててもタチ悪いけど。

「だいたい君たちは彼にそんな事言える立場じゃないだろう……。なんで自分たちが悪と向き合えないのか悪れたのかい?というか君たちも彼を元の世界に返して悪と向き合うの避けたいだけだろう……」

すると、全員バツの悪そうな顔をした。

そっかこの人たちも悪と向き合いたくないのか。

そういえばなんでこの人たちは悪と向き合わないのだろうか。


「ナギサちゃん、君は魔法の詠唱ができるようになったのかい?」

「いや、それは……」

 詠唱ができない???


「ルナちゃん、君は魔物を倒すことができるようになったのかい?」

「うふふふ〜」

 倒すことができない?


「タイガくん、君はやる気が出たのかい?」

「…………」

 やる気がない?


「お前らみんなポンコツじゃねぇかぁ!!!!!」

 あまりの驚きに大声が出てしまった。

こいつら主人公としての自覚がないというか、問題外というか。

「詠唱が出来ないって魔法使えないってことじゃん。魔物倒せないって戦えないってことじゃん。やる気がないって、やる気ないやん!神様、これはどういうことですか!何をどうしたらこんなことが起きるんですか!」

全員面目ないという顔をしている。

ショタヤンキーに関してはやる気出すだけだろうがッ!

「滅多にこんなことはないというか、私もこのようなケースは初めてで、困っているのだよ」

というか、こんな主人公達でその世界は無事なのだろうか。

無事なわけないか。とっくに魔の物の手に落ちてるんだろうな。

「ショタヤンキーはともかく魔法少女とか勇者って結構大事な役割なんじゃないんですか?」

「ショタ!?」

「わ、私の世界はそもそも悪役があんまり襲ってこないのよ!もし襲ってきた時は魔法のステッキで、殴るというか……。なんというか……。」

「それ魔法少女じゃなくて、撲殺少女なのでは。そして少女でも無くなると撲殺女……」

「ちょっとやめてよ!!」


「私はなんと言いますか、魔物を退治するのが可哀想で…。でも、襲ってくる魔物は強い冒険者さん達がやっつけてくれるので、何とか平和は保たれてます」

なんというか、責めにくいな。

勇者としてはダメダメだが女性としてはパーフェクトなんだよな。

「平和なら、まぁ、いいんじゃないですか?」

「私の時は酷いこと言ったのにッ!」

別に酷いことを言ったつもりはないが、理由が理由だし、後は年下というのもある。

そして、女性的な魅力の差といいますか、主に胸の……。

「あんたどこ見てんのよ……。きも……。」

あ、なんか思ってたのと違う。

もっと罵られると思ってたのに、ボソッて言われることでより精神的に来るな。

まぁ、今のは俺が悪いんだけど。

「そもそも、なんで詠唱が出来ないんだよ。そんなに記憶力がないのか、余程詠唱が難しいとかなのか?」

でないと詠唱が出来ないなんて事そうこうないのではないか?

まぁ、俺の勝手なイメージだけど。

「別に記憶力が悪いとかそういうのじゃないの!詠唱の文が……」

「詠唱の文が?」


「は、恥ずかしいのよ……」


かわいい……。

だが、それとこれとは別だ。

別にもっと恥ずかしがっている姿が見たいわけじゃない。

「恥ずかしい詠唱ってどんな感じなの?ねぇねぇねぇ??」

「べ、別にそんなのなんだっていいじゃない!」

「なんだっていい事はないぞ。だって俺たちは少なからず冒険をしないと行けないだろ。だから、ね?分かるだろ?」

我ながら少し変態じみている気はするが、これは今後のため、そうあくまで今後のためです。他意はないです。

「それでも、やっぱり恥ずかしいのよ……」

あらあら顔赤くしちゃってもう。

いいねその表情。ってやばい。このままでは本当に犯罪者になってしまう。

ショタと、お姉さんの目が少し痛い。

何とか誤魔化さなければ…!

「恥ずかしいって言ったて、その服とあの名前なんだから今更恥ずかしがることなんてないもないよ!だ、だからいずれは詠唱できるようになるよ!」

完璧なるフォロー。パーフェクトフォロー。

アイム ア パーフェクトヒュー……

 ドゴッ


「死ね」


そうして俺の意識は遠のいていった。

今後仲間になるだろう人たちから冷ややかな目をされながら……。



  ---------------------------










「何がクジで選んだ、だよ。適当なこと言っちゃってさ」


「そうする他なかったんだよ。できるだけお互い平等であるためには…」


「何はともあれ世界の均衡をどう保ってくれるか楽しみだね」









意味深な感じで終わりましたね。

この後物語はどう進展していくのか!?

私もとてもワクワクしております。

この物語が気に入って貰えば応援などして頂けると作者のモチベが凄く上がるのでお願いします。

(ㅅ˙³˙)♡

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