第四話 真実
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
俺の名前は白羽勇樹。
この世界でハーレムを作る男の名前だ。
俺は先月、この世界に産まれた。
おっと勘違いするなよ。産まれた、というのは母親である白羽由美から産まれた、という意味ではない。
ある日、病室で目覚めた俺はこの世界が元いた世界と違う世界であることに気づいたんだ。
──最初に見えたのは、白い天井だった。
塗りたてのように無機質で、どこまでも平ら。
目を動かすたびに光が反射して、視界がじわりと滲んだ。
――ここは、どこだ。
喉が乾いて声が出ない。
手を動かそうとすると、細い管が腕に刺さっているのが見えた。
点滴。心電図のコード。
ベッドの脇に置かれたモニターが、規則的に音を鳴らしていた。
「……目が覚めましたか?」
女の声。
顔を向けると、白衣を着た看護師が立っていた。
年の頃は二十代半ばくらい。髪を後ろでまとめて、淡いピンクのマスクをしている。
その目が、少しだけ驚いたように開かれた。
「本当に……意識が戻ったんですね」
“本当に”。
その言い方が少し引っかかった。
俺は口を開こうとしたが、喉がうまく動かない。
代わりに、掠れた声で訊いた。
「……ここ、どこですか」
「都立第三総合病院です。交通事故に遭われたの、覚えてませんか?」
事故。
その単語が浮かんだ瞬間、頭の奥が軋んだ。
記憶をたぐろうとしても、靄のように掴めない。
「名前は、分かりますか?」
「……白羽。白羽勇樹」
そう答えたとき、自分の声が自分のものに聞こえなかった。どこか別人が喋っているような感覚。
看護師は小さく頷いて、メモを取る。
「よかった。……しばらくは安静にしてくださいね。
男性の患者さんは珍しいので、皆心配してました」
――珍しい?
その言葉が耳に引っかかる。
だがそのとき、彼女はもうナースステーションへ戻っていった。
残された静寂の中、テレビの音が流れている。
「続いてのニュースです。国内の男女比格差が依然として拡大。男性支援予算は昨年度比でさらに二割増加しました」
……ん?
最初は、聞き間違いかと思った。
けれどアナウンサーは真顔だった。
背景にはグラフが映っている。
女性の人口を示す赤い棒が画面を覆い尽くし、
男性を示す青が、下のほうにかろうじて一本。
「現在の推定男女比は、およそ一対千――」
音が、遠くなった。
脳が現実を処理しきれず、思考が空転する。
一対千?
そんな数字、ありえるか?
息を吸い、吐く。
ベッドの上で、拳を握り締めた。
心臓が速くなる。
それは恐怖でも混乱でもなく――興奮だった。
俺は、違う場所に来た。
この世界は俺のいた世界じゃない。
景色も言葉も同じなのに、根っこの構造がまるで違う。
男が希少で、保護され、管理される社会。
そんな世界で、俺は――
笑いが込み上げた。
喉の奥で、くぐもった音が漏れる。
モニターが一瞬だけ速く点滅する。
まるで、神が退屈しのぎに用意した舞台みたいだ。
俺は、腕の管を見つめた。
その透明なチューブの中を、点滴の液がゆっくり流れている。静かで、整っていて、何もかもが“安全”。
だけど俺は、もう気づいてしまった。
この世界は、俺のために用意されたんだ。
──俺はこの世界で、ハーレムを作る。
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