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御徒町樹里シリーズ

未来小説 御徒町樹里ちゃんがゆく外伝 御徒町瑠里ちゃんがくる

作者: 神村 律子

 二千三十年。御徒町瑠里は大学一年生になっていました。


 不甲斐ない父親の杉下左京は他界して、瑠里は幸せに暮らしていました。


「死んでねえよ!」


 よろよろとしながらも、地の文に切れる左京です。すでに探偵事務所は廃業して、完全に妻の樹里の扶養家族になっています。


「ううう……」


 ぐうの音も出ない地の文の指摘に悶絶する左京です。


「そうなんですか」


 もうすぐ四十路になる樹里は、十年前と変わる事なく、笑顔全開で応じました。


 瑠里のお姉さんでも通りそうなくらい若々しいです。


 そして、恐ろしい事に、瑠里の祖母である由里もとても還暦を過ぎているようには見えない程若々しいです。


「恐ろしいって、どういう事だい?」


 どこかで聞きつけて、地の文に凄む由里です。地の文は全身の水分を全て漏らしてしまいました。


「行ってくるねえ、ママ、父ちゃん」


 瑠里は笑顔全開で、短めのプリーツスカートをヒラヒラさせながら、庭を駆けていきます。


「瑠里、パパって呼んでくれよお」


 涙ぐんで懇願する左京ですが、瑠里はニコッとしただけで、何も言わずに門扉から出て行きました。


「じゃあ、私も行ってくるね、ママ、親父」


 次女の冴里は、瑠里よりも短いスカートにした高校の制服を着ています。


 しかも、左京の予想を裏切り、瑠里よりも冴里の方が由里に似てきていました。


「せめて、父ちゃんにしてくれないか」


 泣きべそを掻きながら冴里に懇願する左京ですが、


「働かざる者、食うべからずだよ、親父」


 冴里は半目で左京を見ると、庭を駆けて行きました。


「ううう……」


 左京はがっくりと項垂れました。


「気を落とさないで、パパ。私達がいるからね」


 左京に優しく声をかけたのは、セーラー服を着た中学生の三女の乃里と、小学生の四女の○里です。


(あれ? 四番目の娘の名前が思い出せない)


 耄碌もうろくした左京は娘の名前を忘れてしまいました。


「行ってくるね、パパ、ママ!」


 冴里と○里は左京のほっぺにキスをして、庭を駆けて行きました。


「気をつけてね!」


 歓喜の涙を流して、乃里と○里を見送る左京です。


 そして、樹里も五反田邸へ出かけました。いつも現れていた不審者は、遂に逮捕されて登場しません。


「違います! 逮捕はされていません!」


 どこかで切れる昭和眼鏡男と愉快な仲間達です。


「さてと、後片付けをするか」


 左京は家に戻り、洗い物と洗濯、そして家中の掃除をしました。


 私立探偵を辞めて、主夫になったのです。


「くはあ……」


 また急所を突かれた左京は床をのたうち回りました。


 


「瑠里!」


 駅へと歩いている瑠里に声をかけたのは、田村淳です。でも、ロ○ハーのMCではありません。


「あっちゃん!」


 瑠里は嬉しそうに応じると、淳と腕を組みました。


「恥ずかしいから、やめてよ」


 淳は顔を赤らめて言いました。


「照れ屋なんだから、あっちゃんは」


 瑠里はニコニコして腕をほどきました。


「新しいお母さんとは、うまくやってる?」


 瑠里が尋ねると、淳は、


「うまくやってるよ。すごくいい人だから」


「うわあ、あっちゃん、実はマザコン?」


 瑠里がニヤニヤして言います。


「ち、違うって!」


 更に顔を赤らめて反論する淳です。


「瑠里こそ、ファザコンじゃないか」


 淳は口を尖らせて言いました。


「そうだよ。私、パパって呼ぶの恥ずかしいから、父ちゃんて呼んじゃう程、ファザコンだよ」


 瑠里は全く恥ずかしがる事なく、言いました。


「そうなんですか」


 樹里の口癖で応じるしかない淳です。


 左京が知ったら、喜び過ぎて死んでしまうので、ぜひ教えようと思う地の文です。


「いつか、瑠里のお父さんに勝てるかな?」


 淳がボソッと呟くと、


「それは無理。あっちゃんの事は大好きだけど、父ちゃんとは比べられないから」


 笑顔全開で瑠里が言ったので、


「そうなんですか」


 また樹里の口癖で応じてしまう淳です。


 


 めでたし、めでたし。

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