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大正恋記 - Taisyo Renki - 〈一〉  作者: 伊東 勝平
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第四記 大変でも耀かったあの時代

この大正恋記〈一〉は、第一記から第六記までで構成される恋物語である。現代人にとってあまり馴染みのない大正時代を生き抜いた男女の恋愛事情をとくとご覧あれ。

第四記 大変でも耀かったあの時代


 婆ちゃんは私に2つの視点で「彼」との出会いについて語ってくれた。我々のような昭和後期しか知らないような人間でもわかるように、当時の環境や生活事情を赤裸々に語ってくれた。この話を聞いたそのままの状態で雑誌の記事にしたため、分かりづらく、苦情を多々受けたというのが後日談になるのだが。このままでは同じ状況になりかねないので、別の形で残りの話を綴ってゆくとしよう。


 時は、1929年。2人の少年少女は大人になった。道代だけでなく、作之介にも縁談の話がやって来るようになった。作之介を取り巻く女子の数は年々増えていったが、彼の道代に対する好意は、何年たっても変わらなかった。それと同じく、道代の作之介に対する好意も途切れたことは1度もなかった。ただ、残念なことに、2人の恋が実ることも無かったのだが。作之介の方は、結婚を急ぐ様子は無かったが、道代と縁談相手である次郎の結婚は間近に迫っていて、道代が嫌がっていても、誰にもどうすることも出来はしなかったのだ。

 一方、ダガシ屋の看板娘である三千佳は、初めて会った時からずっと気になっている作之介に対しての思いが、年を経るごとに強くなってゆき、密かに恋心を抱いていた。さらに、妹の三智恵までもが、作之介に対して好意を抱くようになってしまっていた。しかし、作之介は、三千佳や三智恵のこと仲の良い友達、や妹のような存在としか見ていなかったのである。三角関係では収まり切らない複雑な関係であったことを聞いた時、私は頭が混乱し、しばらくの間、頭が働かなかった。それは、複雑な関係であったことに対する混乱だけでなく、その時代にもそんな恋愛事情があったのか、という驚きがあったからかもしれない。

 私は、ここまで話を聞き、そのあとに続く物語を、こう考察した。

結局のところ、道代と次郎、作之介と縁談相手の女性が結婚し、三千佳や三智恵の恋は叶わない、単純な結末で終わり、私が雑誌の記事にするにあたり、嘘を無理やり付け加えて、オチを作らねばならない、とそこまで考えていた。しかしながら、実際に婆ちゃんから聞いた話はそんな単純なストーリーでは、全くもってなかったのだ。結末は私が思っていたものではなく、想定外のものだったので、言葉にできないほどの感情になったことを鮮明に覚えている。当時の社会状況をあまり知らなかった、無知な私であったからかもしれないが、私が思うに衝撃的な結末については、次章でお伝えするとしよう。

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