ただ笑った顔が見たかった
衝動的に書いたただの短編です。何も考えずに読んでください。特に中身は無いです。
好きな人がいた。
綺麗な人だった。
男性とは思えない、とても透明感のある人だった。
彼はいつもその全てを見透かすような真っ黒な瞳で、真っ直ぐ私を見て話した。
誰からも存在を無視されていた私を、彼だけは認識してくれていた。
酷い言葉の書かれた机と牛乳を掛けられた椅子に座らされて、授業を受けていた。
先生は見て見ぬ振りをしていた。
どの先生もそうだった。
誰も私をなんて見ていなかった。
それなのに彼は、彼だけは、私を見てくれていた。
好きな人がいた。
例え彼が私を虐めている主犯でも、私の言葉に反応してくれるのは彼だけだった。
「死んだらいいんだよ、君なんて。とても汚い。そんなに汚れてまで生きている意味があるの?」
とても純粋な目で、彼は問う。
彼は、放課後私と二人で屋上に行くのが好きだった。
汚いバケツの水を掛けたり、足蹴にしたり、暴言を吐くのが好きだった。
私を汚くしているのは貴方なのに。
酷く歪んだ表情をした彼は、それでもとても美しかった。
私は、彼の笑った顔が、見たかった。
「死ねよ」
無慈悲な顔で、それでいて何処か悲しそうな顔で、彼は呟く。
私は笑った。
彼は驚いていた。
そして私は、屋上から───。