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少女魔王の親友、ふ術師エルメス登場編


 某所にある迷いの大森林、ひとたび入れば生きて帰れぬと言われる程に不気味で深い森である。

 そんな迷いの大森林の奥深くに佇む不気味な黒い城こそ、少女魔王ガーベラの居城であった。

 外見的には十歳にも満たないくらいの体格にはやや大きそうな玉座に実際偉そうに腰掛けながら眺めているのは、大画面の8Kテレビの画面だ、そこに映っているのはニュース番組である。


 「……令和だなんだと騒いでみせたところで人間のやる事など変わるものではないということねぇ……」

 つまらなそうにぼやいたガーベラは、不意に視線を無駄にだだっ広い王座の間の入口へと向ければ、閉じていたはずの扉が開き人影が歩いて来る。


 「三人か……」


 三人とも体格の良い男達であり手に斧や棍棒を握っている、上半身裸にモヒカンという特徴的なスタイルは、ファンタジーよりも世紀末の世界にいそうな連中だ。 いやらしそうな嗤いを浮かべながら、無言でゆっくりと近づいて来る武装した男達を前に慌てるでもなく、「やれやれ……」と面倒そうに立ち上がる。


 「退屈しのぎにもならないと分かっていても相手をしないわけにもいかない……面倒な事をさせてくれるわね……」


 ガーベラが右腕を天にかざすとそこに黒い闇が現れ、それは十字を形作り一振りの剣の姿となった。 黒い刀身に柄に赤い宝玉が嵌ったこの剣こそ、魔王の証ともいうべき魔剣である。


 「そんな剣一本で俺達に勝つ気なのか? 子供が?」


 モヒカンの一人が馬鹿にしたように言ってくる。


 「剣一本あれば人間を殺すには十分よ? 人間なんて案外簡単に死ぬ生き物だものねぇ?」


 淡々と言いながら歩き出すガーベラ、そしてモヒカンとの距離が三メートル程になった時、先にモヒカンの方が飛びかかって来た。


 「「「ひゃっはぁぁぁああああああっっっ!!!!」」」


 ガーベラは慌てることなく魔剣を振るう。 直後、両者がすれ違い、再び三メートル程の距離が開いたところで互いに振り返った。


 「……終わりよ……いや、この場合は、”あんた達はもう死んでるわ”かしら?」


 言葉と同時に「「「はぁ?」」」となった表情のままモヒカン達の頭部が床に落ち、少し遅れて胴体も床に倒れ伏した。  そして、直後にその物言わなくなった肉の塊が発行し始め数秒後に爆発四散したのにも、魔王少女は驚くことはなかった。



 

 気持ちの良い青空の下にある勇者王の城、その執務室では主である少年勇者王であるガオ・レオンハート・・・・・・が今日の分の事務仕事を終えて一息吐いていた。


 「……ん?」


 彼が唐突に怪訝な表情になったのに、サイレント・ヒル地方産の緑茶とお茶請けであるポテト・チップスを運んできたピンクの髪の猫耳獣人メイドさん、ゼフィランサスが「どう致しましたガオ様?」と首をかしげる。


 「いや……何か紹介の仕方に違和感が……?」

 「はぁ……まあ、この作者アホ)のする事ですし、気にしても致し方ないのでは?」


 ゼフィは穏やかで優しい性格であり誰かの事を悪く言う事もあまりないのだが、その彼女でもには容赦ないんだな……と、ガオはそう思った。



 「……そろそろ出てきたら? 符術師エルメス?」


 天井を見上げて言うガーベラの前方三メートル、つまりモヒカン達が爆発四散した場所にそれぞれ紙切れのようなものが落ちている。 長さ十五センチ、幅は五センチ程ののそれには、何やら文字とも模様とも思えるものが書かれている。


 「あーーー流石に分かるかぁ~~」

 「符術魔法による異世界・・・からの召喚、あなたの得意技でしょう?」

 

 異世界とはいっても我々の地球セカイというだけではなく、核戦争によって荒廃した世紀末セカイや宇宙に進出した人類が人型機動兵器で戦争するセカイ、はたまたこことはまた別のファンタジーセカイなど、様々なセカイから召喚が可能なのだ。

 原理としては相手の”存在”を呼び出し、札を媒体に具現化させるという。 なので本人を呼び出すというよりは、このセカイでコピーを創り出すという方が近いだろう。

 

 「まーそーかー♪」

 

 能天気そうな女の子の声と共に上から床に落ちている紙と同じものが一枚振ってくると、次の瞬間それが爆ぜて魔族の少女へと姿を変えた。 外見年齢はガーベラと同じくらいで、少年にも思えるくらい短い藍色の髪をしている。


 「まったく……遊びに来るなら普通に来なさいよ?」

 「それじゃーあたしらしくないでしょベラちゃん?」


 あっけらかんとした様子で笑う幼馴染みの親友に、「……相変わらずか、エル……」と肩を竦める。


 「……って言うか、あなたが面白そうな事を始めたって聞いて手伝いに来たんだよ?」


 ガーベラが驚いた様子もないのは、「耳が早くて好奇心旺盛も変わらずね……」という事であるが、「あ! ちゃんと手土産も持参したよ?」と言うのには顔をしかめた。


 「ま。 話したいことはもっとあるけど、先に荷物の整理してきちゃうわ」


 言いながらポシェットから呪符を取り出すエルメス、すでに城内に自分の部屋を確保し荷物を符術で転送してあるのだ。 召喚だけでなく割といろいろこなせるのが、エルメスの符術魔法だったりするのだ。


 「あんたは……家主の許可も取らずに……」


 呆れはあっても、怒っているでもなければ嫌そうでもない表情のガーベラである。

 そんな少女魔王の前で呪符が爆ぜ、エルメスの姿は煙となって消える光景は実際手品めいた光景だ。 


  「……で、これが手土産なわけね……五月となると例大祭・・・だったかしらね?」


 エルメスが消えた後には代わりに数十冊の本が積まれて置いてあった、厚さは五ミリにも満たない、巫女さんが主人公の弾幕シューティングの薄い本だと分かるイラストの表紙だ。

 しかも、明らかにお子様厳禁のものである。


 「……術師のエルメスも相変わらずってわけね」



 呆れと愉快さの入り混じった笑いをした直後に、「魔王様! 城内に怪しい気配が!」と入って来たのは、青いツインテール魔族少女ことテトラだ。 ガーベラはその彼女の方を見ることもなく「遅い……」と指を鳴らす。

 次の瞬間にはテトラの足元に円形の穴が開き、「……へ?」となった時には重力に従い「あひゃぁぁああああああっ!!!?」と王座の間から姿を消した……。 

 ちなみに、その落とし穴の傍には何故か期の立て看板もあり、”地下拷問室逝き”と書かれていたのであった……。


 

 


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