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封印の惑星  作者: おきし
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第三話 起動

 どのくらい眠っていたのかわからない。

 俺は仄暗い場所で目を覚ました。


 ここはどこだろうか。

 そうだ、思い出した。

 学校に向かっていたら、突然富士山が噴火して校庭に亀裂が入った。そして俺はその亀裂に落ちたんだった。

 上を見上げる。その先に光は見えなかった。どうやら大分深いらしい。それにしてはここはどうして薄らとでも光があるのだろうか。周りを見回すが、発光していると思われるものはない。


「こんな深さを落ちてきて、どうして俺は無傷なんだ。」


 体を見回し、動かしたりして確認するが、怪我をしているような違和感は無い。体は勿論、着ている制服にも破れたりしている箇所も無いようだった。


「まぁ、深く考えても分からないものは分からないな。今は死ななくて良かったくらいに思っておこう。」


 元々、楽観的な性格だとか言われている俺は考えるのをやめた。そして他のことを考える。


「さて、どうしようか。まさか登って脱出、って訳にもいかないし。」


 辺りを調べていると遠くの方、それも地上の方から、地響きのようなものが地面の中を伝わってくるのが分かった。


「噴火、続いているのかな。みんな大丈夫かな。」


 地上の様子なんて分からない俺は、学校にいたみんなのことを心配する。


「さて、ここにずっといてもどうにもならないな。あっちの方に行けそうだから行ってみるか。」


 辺りを調べていて分かったが、どうやらこの空洞はまだ奥に広がっていそうだ。


「どこかの洞窟とかに繋がっていて、そこから地上に、なんてことないかなあ。」


 俺は淡い希望を抱いて歩き出した。



 どれくらい歩いただろう。

 結構な距離を歩いた気がするけど、歩き難い道でもあり、其ほど進んでいないのかもしれない。それでも他に当てはないので歩き続けていると、前方に少し開けた空間が現れた。


「なんだ、ここ?」


 目の前に広がっていたのは、体育館程の大きさの空間。

 今までと同じように回りは岩ばかりだが、なんとなく人工的な空間を感じさせる。空間は、その側面の壁が岩肌だが、真っ直ぐできれいな長方形だからだ。その中央部分に盛り上がった岩山がある。

 俺は岩山に近づいてみた。


「中に入れそうな穴があるな。」


 岩には人一人通れそうな穴が開いている。それは下へと続いているようだ。

 俺はその穴を覗きこんで驚き、確信した。人工物だ。

 何故そう思うかって、それは下に延びる穴の足元、地面が階段状になっている。まるで山にある寺や神社の階段のようで、こんなものが自然に出来るなんて考えられない。

 俺は地上に出られる手掛かりがあるかもと、その穴を下っていった。


 その先で更に驚くことになった。

 椅子がある。SFとかで見かけるような形をした椅子だ。

 周りにはパネルのような物とレバーのような物がある。まるで何かのコックピットのようだ。


「なんだこりゃ・・・?子供の秘密基地、なわけないよな。こんなもの、子供が作れるわけがない。というより、こんな地底にこんなものを作れるってどんな富豪だよ。」


 俺は歩き疲れていたのと、コックピットのような見た目に興味を惹かれたこともあって座ってみた。


「まじかよ。」


 全部岩でできたような見た目なのに座ってみるとシート部分が柔らかい。


「いったい何で出来てんだこれ?」


 俺は疑問に思ったが、その疑問は置いておいて目の前の操縦桿のようなものを握ってみる。

 ワクワクする。

 これでも男の子だ。ロボットアニメとかは小さい頃好きだった。と、いうか今も好きでたまに観ている。

 俺は地底をさ迷っている現状も忘れ、童心に戻って操縦桿を握る手に力を入れる。

 その時だった。


「いてっ!」


 首の後ろに何か刺さった。

 俺は振り向こうとしたが、それも出来ないほどの激しい頭痛が襲ってきた。毒を持った生き物か何かに刺されたと思い焦ったが、頭痛の原因が自分の頭の中に直接情報を流し込まれているせいだと気付いた。なにしろ今まで何も知らなかった此処が何処で、これが何であるか等が急に分かった、から、だ・・・。

 俺は処理しきれない情報による激しい頭痛で意識が飛んだ。


 何もない深層意識の空間に流し込まれてくる情報が過ぎ去る。

 約46億年前。

 宇宙に星を喰い荒らす化け物がいた。

 何処で発生した生物なのか、そもそも生物なのかすら分からない。

 宇宙大怪獣。

 語彙に乏しい頭ではそうとしか言えない存在だった。

 宇宙の星々は何億年もの間こいつに食い荒らされていた。

 そしてある時、大怪獣が流れ着いた先。そこには文明を持った生物がいた。

 巨大宇宙人。いや、巨大知的生命体。止そう。ボキャブラリーの無さが明るみに出る。

 100メートルはあろうかという巨人の星だった。

 巨人達の文明は、現在の地球と比べるのも烏滸がましい程の技術力を持っていた。それは戦力という分野でも。

 巨人達はその強大な戦力で大怪獣と戦った。しかしそれでも大怪獣の力を少しずつ削るのが精一杯で、巨人の戦力は磨耗していった。

 宇宙の辺境、銀河系の更に端まで戦場は移り、このままでは大怪獣を倒す前に巨人の戦力は瓦解する。そう悟った巨人達は

 大怪獣を封印することにした。

 巨人の技術力と、残った技術者、資源そのすべてを注ぎ込み大怪獣を封印することに成功した。

 それが地球。

 なんてこった。地球は普通の惑星じゃなく、怪獣を封印した封印設備のようなものらしい。まじか。

 その封印に必要なエネルギーは、循環する自然のエネルギーを使っているらしい。

 そして本命はここからだ。いや、今までのだって十分驚いたよ。だけどここからだ。

 ここ最近の災害の頻発は大怪獣のせいらしい。どうやらその封印が解けかけているそうだ。

 自然エネルギーを使って稼動している封印は、人類による環境破壊で急激にその能力が低下し、大怪獣が活性化しているのが原因だそうだ。そして災害の頻発の先は、封印の隙間を縫って小型の眷属が出現し始め、最終的に大怪獣が復活。必然的に封印だった地球は崩壊、ということらしい。

 そして今いるここ。こここそがその大怪獣の眷属や、その他から封印を守るためのシステム。『護封機』というシステムのコックピットだという。

 俺の頭の中に護封機の全容が浮かぶ。

 うん、これ、巨大ロボだ。

 見た目の質感こそ岩のようなそれは、ロボットの彫刻のようだった。


 俺は目を覚ました。

 周りを見渡す。磨いた岩のような物でできたコックピットのような場所。巨人族は自分たちを模した機動兵器を封印の守護者とし、遥か未来に生まれるであろう、この星の知的生命体をコンピュータで予想した結果、人間サイズのコックピットになったんだと。なんだそれ。巨人族、万能か。

 というよりも、人間がこれに乗って眷族と戦ってくれなかったらどうするんだ。そもそも、人間が誕生する前に何かしらの敵が現れた場合とか。

 というか、本当の話なのか?まるで漫画の話だ。今までこの地球上で生きてきて、いきなりさっきのような話を信じろといわれても難しい。

 しかし、頭の中に勝手に入ってきた情報という技術はなんだろうか。頭の中には護封機の動かし方なんかも入っている。

 俺はとりあえずその知識の通りに起動操作、レバーを押し込み「起動」と強く念じた。


 ゴガン ゴガン ゴガン


 何かが外れるような音が外から響いた。


「え?なんだ!?」


 軽い気持ちでやってみた結果、何かが反応した。さすがに焦る。


 ドガン!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 最後に一際大きな音が響き、その後、地鳴りのような音とシートに押し付けられるようなGが襲ってきた。


「うおうおおおお!やばいやばい!なんだこれ!?」


 どうやら急激に上昇しているらしい。らしいけど何も考える余裕がない。


 徐々にGが治まり、周りのパネル状の物に明かりが点る。それは周りの様子を映し出していた。

 どうやら先程の上昇で地上に出たらしい。周りに自分の住んでいる街が見える。

 だがしかし、それは。


「な・・・なんだ・・・これ?」


 俺の目に入ってきたのは燃え盛る見慣れた街並み。そして目の前に立つ禍々しいほどの異形の怪物だった。

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