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封印の惑星  作者: おきし
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第二十話 大空の使者

「なんだ!?」


 上空で大気が渦巻いている。

 それはだんだんと加速度的に回転する速度を増していき、渦の周辺にスパークが走る。

 白く巨大な竜巻になった。


「竜巻が、もう一個?」


 それはまるで竜巻だった。

 目の前の空では黒い竜巻と白い竜巻が唸りを上げていた。

 同タイプの怪獣が二体?一体でさえこちらから手が出せないというのに、二体に増えたらどうしろって言うんだ。


「大丈夫だって言ったよな?竜巻が二つに増えたぞ?」

「はい、大丈夫ですよ。よく見てください。」


 二つの竜巻を前に、後ろの幼女に問いただしていると、黒い竜巻から触手が飛んだ。

 その触手は白い竜巻に触れると、スパークとともに弾かれた。


「竜巻の怪獣が攻撃した?あれは怪獣の敵なのか?」

「何をいっているんですか?貴方のお友達でしょう。」

「は?」


 竜巻の友達なんかいねえぞ?なんて思ったが、まさか。


 そんなことを思っていると、突如白い竜巻が四方に霧散した。

 白い竜巻は消えたがそ、そこにはまだいた。

 白いボディに銀とエメラルドグリーンが映える、機械の巨人が。

 鋭角さに磨きをかけたデザインの、細身の巨人が空に浮かんでいた。


『待たせたな、ヒロ。』


 そして聞こえてきた。聞き慣れた友人の声。


「クーゴ!おまえ、マジかよ。登場カッコつけすぎじゃないか?」

『そういうな。なんせ俺の場合・・・うわっと。』


 俺たちが話していても、怪獣には関係ない。

 クーゴに向かって触手を飛ばす。

 クーゴはそれを空中でヨタヨタと避けた。


「おまえ、さっきは弾いてたんじゃ?」

『あれはあれだ。登場シーンは無敵みたいな?どうやら俺の護封機はそんなに防御力は高くないみたいだからな。』

「まぁ、その見た目ならわからんでもない。でも空飛べるんだろ?なんでそんなにぎこちないんだよ。」

『飛ぶっていうか浮けるだけだ。空中じゃそんなに速く動けねえんだよっと。』


 その間も怪獣から飛んでくる触手を、フラフラとかわし続けている。

 俺はそんなクーゴの様子を見ながら、後ろの幼女に話しかけた。


「なあ?何が大丈夫なんだ?確かに浮かんでいたら竜巻の怪獣に届きそうだけど、あれじゃ戦いにならないだろ?」

「貴方はせっかちな人ですね。」


 そう言うと、幼女は再び虚空を見つめた。


「いつまで遊んでいるんですか?」


 そう言った後、クーゴの護封機のカメラアイが光った。

 上空を旋回していた鳥型の再生機とやらが急降下してくる。対してクーゴの護封機は急上昇を始めた。

 空中で上下から交差する二体。交差した直後、再生機が方向を180度変え、急上昇し、クーゴの護封機に接近すると、合体した。

 そう、合体したのだった。


「な、なんだそりゃあ!?」


 あまりの出来事に物凄く驚いた。え?再生機ってそんなことも出来るの?


『な、なんだこれ?急に勝手に動き出したと思ったら、鳥の化け物が背中にくっついたぞ!?』


 クーゴの方も驚いているようだ。しかしクーゴの意思じゃないとしたら、いったい誰が動かしていたんだろう。

 そういえば幼女が直前、誰かに話しかけていたような。

 その疑問は、次の発言者によって明らかになった。


『あまり騒がないでください。合体を起動した後、説明したじゃないですか。それにあれは再生機です。化け物ではありません。』

『そんなこと言ったってよぉ、サラッと一方的に説明されただけだし、こんなばかでかい鳥は、俺の中では再生機だろうと怪獣だろうと化け物なんだよ!』


 ああ、そうか。クーゴの方にもいるんだな。護封機の制御システムとかいうのが。

 事務的なお姉さんのような声を聞いて理解した。


「クーゴ!それでやれそうか!?」


 俺がクーゴに聞くと、クーゴは上空で上昇下降したり旋回したりし始めた。それは戦闘機なんか比較ならないスピードと機動性だった。


『おお、行けるぜこれは。竜巻野郎なんかに負ける気がしねぇ!』


 そう言って翼の端から白いベイパーを引きながら、超スピードで一直線に竜巻に突っ込んでいった。

 凄まじい速度だ。そのまま竜巻に突入し、突き抜けた。

 見た感じ竜巻に変化はない。クーゴの攻撃にどういう効果があるのだろうか。


『あれ?』


 クーゴの間抜けな声が聞こえた。


『貴方はバカですか?闇雲に突っ込んでも本体が何処にあるかわかってるんですか?それにこの護封機の装甲はそれほど厚くないと言ったでしょう。あんな直線的な攻撃で、反撃を受けたらどうするんです。』


 お姉さんの辛辣な声が聞こえた。


 どうやらクーゴが考え無しに突っ込んだみたいだな。


「おい、大丈夫かクーゴ。あいつの本体はさっき突っ込んだところよりもう200メートルくらい上だぞ。さっきちらっと見えた。」

『おお?そうだったっけか?そんじゃもう一丁!』


 今度は直角的に、不規則な起動を描きながら飛んでいく。うっすら残像が見えるくらいの速度なんだけど、あれってコックピットはどうなっているんだろうか。


「コックピットブロックは、システムによってカバーされています。衝撃や加速度による影響を最小限に抑えています。」

「そ、そうか。」


 こいつは俺の頭の中が見えるのかな?

 幼女の発言に若干引き攣りながらクーゴの方を見た。クーゴは既に竜巻の目前まで到達している。竜巻から触手が飛ぶが、あの高速で飛んでくる触手がまるで捕らえきれないほどに、クーゴの護封機は超高速だ。

 そして竜巻に突入した。

 鈍く重い音が大気を震わせた。

 その直後、竜巻が急激に小さく薄くなり、目玉が顔を出した。目玉には無数の傷と、深く大きな傷が一つついていた。何をやったらああなるんだ?

 目玉の動きは鈍く、空中でグラリと傾いた。そのまま高度が徐々に下がる。


『ヒロ!今のこいつのパワーじゃこれが限界だ!後は頼むぜ!』


 目玉が、もう少しでアーディオンでも届きそうな位置まで降下してきているのを確認してクーゴが叫ぶ。


「わかった!バトルアーム!」


 俺はいつもの愛用(?)の武器を選択する。

 アーディオンの右腕が形状を変え、肘がせり出し、80メートルはあろうかという巨大な棒状になった。いや、先端を見る限り筒状と言った方が正しいか。


「あれ?何時もよりデカくないか?それに形が・・・。」


 バトルアームは腕から先が棒状になっていた。肘まで延長して、こんなに巨大にはなっていなかったはずだ。


「戦闘記録を見ました。これが貴方がバトルアームと呼んでいる武装、『ストライクパニッシャー』です。」

「これが?」

「さぁ、来ますよ。構えてください。」

「お、おう。」


 目前まで迫った目玉にストライクパニッシャーを構える。


「行けます。」

「ストライクパニッシャアァァァァ!」


 幼女の声に、俺は思い切りストライクパニッシャーの先端を目玉に叩きつけた。


「トリガー。」


 幼女の指示に従いトリガーを引く。


 ギュルルルルルという擦過音が響き、ストライクパニッシャーから鈍い金属の色をした、巨大なドリル状の杭が高速回転しながら飛び出した。

 それはまるでそこには何もないかのように、無抵抗に目玉を貫通した。

 貫通した箇所からどす黒い液体が吹き出し、目玉から生気が消えた。


「マジかよ・・・。やべぇな・・・これ。」


 バトルアームの時とは比べ物にならない威力。

 クーゴが仕留めきれないと言っていた怪獣を、まるで豆腐のように貫いた。


「杭打ちに、ドリルかよ・・・。」


 何処ぞのクラスメイトが喜びそうな装備だ。

 ストライクパニッシャーは仕事を終えると、四方に煙を渦巻かせながら元の形に戻った。


『やったな!ヒロ!なんだそれ?必殺技か?』


 クーゴが興奮したように聞いてくる。


「クーゴ、それも含めて取り敢えず集まって情報を交換しようか。」

『わかった。』



 俺たちは護封機から降りていた。


「えーと、還れって考えるだけでいいんだったよな?」

「そうだな。」


 俺とクーゴが護封機の送還を念じる。

 アーディオンは大地に沈むように、クーゴの護封機は垂直に上昇し、ソニックブームの影響が出ない高度に達すると超高速で星になった。

 いや、この表現は死んだみたいだな。空の果てに消え去った。


「お前の護封機はなんでそんな派手なんだ?」

「いや、俺のせいじゃないだろ?」


 登場といい送還といいなんかカッコいいな。羨ましい。


「しかし、あの還り方は結構な人数に目撃されてしまいますね。」


 そんな事を言う神田さん。


「確かに今後の運用は考えた方が良さそうだな。」

「マジかよ!?折角手に入れたってのに!」

「ねぇねぇ、ヒロ?その女の子は誰?」


 小波が目の奥が笑っていない笑顔で割って入ってきた。


「色々情報過多過ぎる。一度整理しよう。」


 そうして俺たちは今回手にいれた情報を整理することにした。

 今回は護封機の中枢と言えるシステムがいる。何が出てくるのだろうか。

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