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封印の惑星  作者: おきし
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第十九話 真の姿

 遠くから何かが激しくぶつかる音がする。近くで人の声もする。

 俺はぼんやりと目を開けた。


「ここは・・・。ああ、そうか。ここはアーディオンのコックピットだな。」

「アーディオン、それが貴方がこの護封機に付けた名前ですね。」

「えっ?」


 すぐ後ろで声がした。

 振り向くと金髪の幼女がいた。アーディオンのコックピットの後ろ部分にあるスペースに、小さな椅子が出ており、そこにちょこんと座っていた。


「夢じゃなかったんだな。」

「?わかっていたと思いますけど。」

「まあね。アーディオンを起こすけど、そんな椅子で大丈夫か?」


 幼女が座っている椅子は、簡易的なもので観光バスの補助席のようだった。


「私はシステムですよ。アーディオンの中でどうこうなるわけがありません。」

「そうか。んじゃいくぞ。」


 俺は操縦桿を握り、沈黙したアーディオンを起動する。

 駆動音が鳴り、コックピットの各種モニターに光が点った。


『ヒロ!?』


 それと同時に外の音を拾い、小波の声が飛び込んできた。


「ああ、小波か。」


 目を覚ます前に聞こえていた声は、小波だったのだろう。なぜアーディオンが沈黙していたのに聞こえたのだろう?


『小波か、じゃないよっ!心配したんだから!』

「悪い、ちょっと気を失っていたみたいだ。」

「彼女は大海の護封機に認められた人間のようですね。」

『だれっ!?』


 俺たちの会話に突然幼女が割って入り、小波が驚いた。


『ヒロが・・・ヒロが、なんか女の子と一緒にいる!あんな狭いとこで!』


 急に小波が慌て出した。


「落ち着け小波。後で説明するから。それよりどうなった?俺が気を失っていた間のことを教えてくれ。」

『そうだ!クーゴ君が大変なんだよ!崖に落ちちゃったみたいで!』

「崖に落ちた!?」

『そうなんだよ!それで・・・。』


 小波から聞いた話では、倒れてきたアーディオンから小波を助けて、一人崖側に取り残された。そしてアーディオンが倒れた衝撃で崖が崩れ、クーゴが巻き込まれたという話だった。


「マジかよ・・・。俺のせいでクーゴが・・・。」

『それで今、神田さんがクーゴ君が落ちた辺りを探しに行ってる。』


 クーゴが俺のせいで?俺も探しに行った方がいいんじゃないか?


「クーゴですか?そのクーゴという人間なら無事ですよ。」

「えっ?」


 突然幼女がおかしなことを言い出した。


「なんでそんなことがわかるんだ?」

「こんな姿をしていても、護封機のメインシステムということですよ。」


 まったく意味がわからん。


「それよりも集中してください。敵がこちらに気づきましたよ。」


 そう言われて改めて外の様子を確認する。

 さっきまで鳥の怪獣と戦っていた竜巻の怪獣が、アーディオンが再起動したのに気づいてこっちへ近付いてきている。


「しかし、こんな状態の護封機でよく再生機を二体も倒しましたね。」

「はっ?再生機?」

「護封機の呪縛を解きます。そもそもこんな姿をしているのは、私が侵蝕されていたのが原因ですからね。今なら只の岩っぽい拘束具みたいなものです。」

「は?え?呪縛ってなんだ?」


 俺の疑問はスルーされて、幼女が虚空を見つめる。すると顔と腕に光る青い線が浮かんできた。


「大地の護封機、並びに大空の護封機、大空の再生機の拘束を解除。実行・・・・成功。」


 幼女がブツブツと何かを呟き出した。

 大空の護封機?小波のは大海の護封機だったはずだけど。それに大空の再生機ってなんだ?

 そんなことを疑問に思っていると、バキンっとすぐ近くから音が響いた。

 それは連鎖的にバキンバキンと続いていく。


「な、なんだ?」


 コックピット内にも変化が出ていた。

 岩のようだった内部が光の粒子に包まれる。それはまるで岩が光に変わって捲れあがっていくように。

 目の前のモニターは近未来的な機械のように。その他サブモニターがホログラフィーのように。シートはまさにシートと呼べる姿に。其々が変わっていく。


「まじかよ。」


 外の変化はもっと顕著だった。



「な、なにあれ?」


 小波が声を上げる。

 心配そうに見つめていたヒロのアーディオンから、岩の破片が剥がれるように落ちている。


「ここにいては危険です。もう少し離れましょう。」


 笹本さんの助言に従い、小波たちは距離を取って再度アーディオンの方を見た。


「えっ!?うそっ!どうなってるの!?」


 小波たちが見たアーディオンは、岩のような外装が半分以上剥がれ落ちていた。

 鋭角にエッジの立った鋭い頭部。金属機械的な太い腕。それでいて小回りの利きそうな細めの腰回り。

 白、赤、グレーを基調にしたカラー。

 岩の下から現れていたのは、今までの石の巨人とは思えないような金属の巨人だった。


「あれが本当のアーディオンってことなのか?」


 蒼也がそう呟く。


「どういうこと?」

「アニメなんかでは岩の巨人の中に、ロボットが入っているようなことがよくあるわね。」


 小波の疑問に答えたのは、以外にも委員長だった。


「そういうものなの?」

「わからんが、委員長の言っていることは強ち間違いではないと思う。」

「ほえぇぇ。か、かっこいい。あ!私のは?私のアンダインもあんな風になるのかな?」

「なるんじゃないか?」

「ふえぇぇ。」


 小波が変な声を出しながら、再びアーディオンの方を見ると、既にほとんど岩の面影はなかった。



「これは・・・?」

「言ったじゃないですか。護封機の呪縛を解除しました。それよりも来ますよ?」

「え?」


 慌てて前方に目をやると、数百メートルの距離まで近づいていた竜巻の中から超高速の触手が飛んできた。


「!」


 さっき食らって気を失ってしまった攻撃だ。さっき以上に不意を突かれてしまった。

 咄嗟にガードしようとする。ここまでさっきと同じだ。しかし。


 ドオオオオオンという重い音を響かせて触手は止まった。

 アーディオンの足下は、衝撃で少し後ろにずれているが攻撃を完全に受け止めた。ステータスモニターに目をやるが異常は無い。コックピットにもダメージは来ていない。

 反応速度、防御力、どちらを取ってもさっきまでとは比べ物にならない。


「すげえ。」

「これが護封機です。さあ反撃ですよ。」

「反撃と言っても・・・。」


 俺は竜巻の怪獣の方を見遣る。

 竜巻は少し距離を取っていた。さっきは効いた攻撃を止められたことで警戒したか?

 そして最大の問題は高度だ。

 いくらアーディオンが100メートル程の巨体だと言っても、竜巻のいる高度には届かない。


「あんな高いところバトルアームでも届かないぞ?」

「バトルアーム?」

「あるだろ、コイツの武器に。腕が棒みたいになるやつ。」

「腕が棒?・・・ストライクパニッシャーですかね。」

「すと、なんだって?」

「ストライクパニッシャーです。確かに見た目は腕が棒のようにはなりますね。」

「正式名称はそうなのか?」

「正式名称は別に有りますが、人間の貴方には発音出来ないと思いますよ?言葉のニュアンスから私が考えました。」


 どこか、ふんす!という表情で幼女が言った。


「でも確かに今のままでは届きませんね。」

「じゃあどうすんだよ?」

「大丈夫ですよ。」


 幼女が俺から目を離し、前方のモニターに映る空を見遣る。

 釣られて俺も空を見た。

 するとそこには。


「な、なんだあれ!?」


 視線の先の空には巨大な鳥がいた。

 白い体にエメラルドグリーンの翼を持った巨大な機械の鳥。


「大空の再生機ですよ。さっきからいたじゃないですか。」

「さっきからって・・・えっ!?あの地上絵から出てきた鳥の怪獣か!?」

「怪獣?なぜそう呼ばれているかわかりませんが、石のような鳥だったものですよ。」

「マジかよ・・・。」


 俺は今日何度驚くんだ。

 そういえばさっき、ついでのようにコイツの拘束も解除とか言っていたな。

 怪獣だと思っていたものが再生機?どうなってんだ。

 俺がそんなことを考えている間、大空の再生機は竜巻の怪獣と戦い始めた。

 こっちは本当に怪獣なんだろうな?


「やはり再生機だけでは厳しいですか。」


 幼女のそんな言葉通り、見た限りでは鳥は劣勢のようだった。


「まあ大丈夫でしょう。来ました。」

「は?何が・・・。」


 俺が疑問を言い切る前に大気が渦巻いた。

やっと真の護封機登場です。

ダン○ーガみたいに引っ張りました。

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