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封印の惑星  作者: おきし
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第十一話 海の胎動

大分更新が開いてしまいました。

 小波は海底にいた。


 近くに山本もいるが、パイロットの姿は見えなかった。


 海底といっても、溺れて沈んでいる訳じゃない。

 いや、実際、つい先程まではそういう状況だったわけだが。

 どういうわけか小波の周辺、数メートルは呼吸ができている。というよりも、海水自体が存在しない。海中にぽっかりと空いた、半球状の空間の中にいる。小波を中心に空間も移動するようだ。

 その証拠に-。


「これは一体どうなっているんだろうね?」


 山本が半球状の空間の中を歩き回る。


「あんまり離れないでくださいよ。」

「分かっているよ。うわっぷ。」


 先程もこうして歩き回り、海中に突っ込んでいた。

 すぐに戻っているからいいものの、それなりの水深の海底だ。いきなり全身突っ込んだりしたら危ない。


「なんでこうなっているのか分かりませんけど、取り敢えず陸地まで歩いて行けそうなので行ってみませんか?」

「そうだね。」

「陸地の方向って分かります?」

「うーん、どうだろう。墜ちたときに方向も分からなくなったし、水深のせいで周りもよく見えないからね。」


 周りは水深と、噴火による噴煙のせいでかなり暗い。

 小波は辺りを見渡すと、遠くの方の海底が盛り上がっているのがわかった。


「山本さん、あっちの方が少し上に上がっていますよ。」

「そのようだね。とりあえずあっちに行ってみようか。」


 小波と山本は海底が盛り上がっている方向へ進んで行った。


「これは・・・海底の丘のようだね。」

「陸へ続いてるんじゃなかったんですね・・・。」


 そこは海底が盛り上がっただけの丘のようだった。

 小波と山本はぐるりと丘の周りを回ってみた。


「これは、何ですかね?」

「人工物のように見えるね。石板・・・かな?」

「何か書いてあるようですよ。」


 小波は石板に刻まれた文字を確認するため、表面に付いた海藻を取ろうと手を伸ばした。

 その時---


「えっ?」

「うわっ!」


 小波は視界が一瞬暗転したような感覚に捕らわれ、次の瞬間には洞窟の中のような場所にいた。


「ここは?」

「これは・・・。高峰君の言っていた場所に似ているね。もしかしたら当たりかもしれない。」

「ここに護封機があるってことですか?」

「その可能性は高いだろうね。見てごらん。奥の方に続いているみたいだよ。」

「出口もわかりませんし、行ってみますか?」

「もちろん。その為に来たんだからね。」


 小波と山本は洞窟の奥へと進んで行った。

 10分ほど歩いたところで、洞窟が急に広くなった。


「ますます高峰君の話の通りだね。」


 山本は広い空間を歩き回る。


「これがそうかな?」


 山本が広間の中央付近に鎮座する、コックピットのような岩を見つけてそう言ったと思えば、躊躇なくそこに座る。そして操縦桿のようなものを握ったり、コンソールのようなものを触ったりしてみる。

 そうして数秒。期待に満ちた山本の表情が、困惑に変わる。


「何も起きないね?」


 山本はコックピットらしき場所に座っても、何も起きなかったことを残念そうにしながら立ち上がった。


「私も座ってみてもいいですか?」

「どうぞ。」


 小波は山本に確認すると、山本は場所を譲ってくれた。


「それじゃ早速。」


 小波は座席状の場所に座ると、操縦桿を握る、と。


「痛っ!」


 小波は首の後ろに刺すような痛みを感じ、そのまま意識を失った。



「・・・さん。海原さん。」

「うぅん・・・。」


 小波が目を覚ますと、山本が小波を軽く揺すりながら、名前を呼んでいた。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい。大丈夫です。私どのくらい寝ていましたか?」

「寝ていたというか、そうですね、大体5分くらいでしょうか。」

「そうですか。うーん、まだちょっと頭がぼんやりします。」


 そういいながら小波は頭を軽く振った。


「それでどうでした?」

「どうでしたって・・・あぁ、当たりですね。護封機でしたよ、これ。」

「おお、やっぱり。でもどうして僕では何も起きなかったんでしょうか。」

「それも分かりましたよ。」

「どうやら、一定の年齢未満の人間にしか反応しないようです。」


 ヒロの時には無かったが、山本が直前に一度触れたからだろうか。護封機を起動するための条件のようなものも判った。


「どういうことだい?」

「詳しいことはここから出て、ヒロと合流してからにしませんか?」

「確かにそうだね。」

「じゃあ、これで脱出しましょう。後ろのスペースに乗ってください。」

「僕も乗って大丈夫なのかい。」

「乗るだけなら大丈夫みたいです。」


 そう言われると山本は、ワクワクした気持ちを隠しきれない表情で小波の後ろに乗り込んだ。


「それじゃ、行きますよ。」


 小波がレバーを押し込むと、コックピットブロックが丘の中に格納され、直後、地鳴りのような音が聞こえてきた。




「くっそ、ちょこまか動くんじゃねえ!」


 ヒロは護封機の腕を、棒状の武器に変えて戦っていた。

 ヒロはこの腕の形状をこっそり『バトルアーム』と名付けていた。

 そのバトルアームを振り回して戦うが、狼型の怪獣はその姿の通り動きが早く、未だダメージを与えられていない。


「くそっ、こいつに構ってる時間なんか無いってのに!」


 その時、振り回していたバトルアームがちょうどよく、怪獣の進路と重なった。

 当たる。そう思った瞬間、怪獣の周りの炎が一瞬大きく膨らみ、怪獣の輪郭がぼやけたと思ったらバトルアームがすり抜けた。


「またかよっ!」


 ヒロが言うように、この現象は初めてではなかった。

 既に何度か、当たっていたら少なくないダメージになっていたであろう攻撃があったのだ。

 しかし、その度にさっきのようのバトルアームはすり抜けていった。


「こんなのどうしろって言うんだよ!」


 怪獣の攻撃は、突進する、体の周りの炎を飛ばすといったもので、護封機にとってはたいした攻撃ではない。

 しかしこっちの攻撃が通じないのでは、倒すことができない。

 ヒロは苛立ちを見せながら、後ろを確認する。

 実はヒロは、護封機にダメージが通らないのであれば、いっそ怪獣を無視しようかと考えていた。

 しかし、怪獣の進行方向に街があることに気づいてしまった。

 いくら小波のことがあっても、街を丸ごと見捨てるのは気が引ける。

 そういう経緯があって、ヒロは怪獣を速やかに倒して、小波の捜索に向かうことを決めたのだった。


 ヘリコプターの墜落から大分経ってしまった。

 その時間は20分か、30分か。

 ヒロには永遠にも感じられる時間だった。

 その間も、怪獣に攻撃をかわされ、怪獣の攻撃が後ろに行かないように防ぐ。


「くそっ!くそっ!くそっ!」


 ヒロは必死に現状の打開を図るが、その方法は見つからない。

 焦りが動きの単調化を生み、それ故に攻撃も当たらなくなってきていた。


「これ以上時間がかかったら小波がっ!」


 ヒロがそう叫んだとき、陸地から離れた場所の海面が突如盛り上がった。


「2匹目!?」


 ヒロは2匹目の怪獣が現れたと思った。

 この状況で2匹目は不味い。そう思い、海面から浮上してくる巨大な影に意識を向ける。


 海面を割って現れたのは、大きな体に太い腕、短い足。そして胴体にめり込むような形で申し訳程度で頭部が付いた岩の巨人。


「「「「ヒロ~!!!!!」」」」


 巨人の方から、大気を切り裂かんばかりの大音量で、ヒロを呼ぶ小波の声が聞こえた。


「こ、小波?」


 ヒロはその巨人の方を、ただただ呆然と眺めていた。

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