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ちょっぴり憂鬱な冒険者ギルドの皆さん  作者: ついていきます
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第二話 ある新人冒険者の憂鬱②

--- ある新人冒険者の憂鬱 --- ②



「本日の依頼は…西の池の岸辺で薬草を二束と、その手前の洞窟で食用キノコを一籠採集、

ですか…報酬は合計で銅貨六枚、採集した数が多ければ別途買い取り」


 青札二枚に書かれた依頼内容を確認して、私は採集物を入れる編み籠を背負子にくく

りつけると、背負子の肩紐に両手を通して立ち上がりました。


(よっこらせっ、と)


 まだ空っぽの編み籠はさすがに軽いのですが、町を出て西に延びる街道を行く私の足取

りは、ちょっとばかり重いのです。


(うー、また昇級できませんでした…)


 私としては昨日の依頼をキチンと完了できていれば、たぶんギリギリで昇級基準を満た

していたと思うのですよ。


 ランクEへの昇級を間近に、私も少し焦っていたのでしょうね。昨日は思わぬ不覚をとって

しまいました。





 私はエンリ。ランクF冒険者の魔法使いです。ちなみに十六歳です。冒険者としては駆け

出しで、今はとりあえずランクEを目指しています。回復魔法も多少は使えるのですが、

得意なのは攻撃、特に火炎系魔法でしょうか。


 やはり轟々と音を立てて燃え盛る炎には、男の浪漫とでも言える何かがあるように思い

ます。特に獰猛な害獣が大仰な悲鳴を上げ、真っ赤な炎に呑まれていく様子は、ふふふ…

何とも言えない美しさを感じますね。


「ナノさん、攻撃はもう少し早めにお願いできますか?獲物を引き付け過ぎている気が

しますので」

「悪ぃ、エンリ。遠隔系の釣り役がいないとどうもなぁ…」

「いえいえ、事故を起こすよりは安全第一でいきましょう」

「そう言ってもらえると助かる。…じゃあ次、行くぜ!」


 格闘家のナノさんは、やはりランクFの新人冒険者です。元気いっぱいで好感がもてるの

ですが、なにせ今日の害獣討伐は二人PTです。いつも以上に用心しなくては…


 討伐対象のレッサーラビットは毒こそ持っていませんが、高威力の後足のキックが要注意

だとか。ええ、依頼の赤札にはちゃんと補足事項として太字で書かれていましたからね。

こういうポイントを見落としたら大変です。


「見つけた!…よし、アターーック!」


 ナノさんが獲物を見つけて殴りかかりました。

 手順ではそのまま反転して私の方に獲物を引っ張ってきます。次に私に近づきすぎない

距離で踏みとどまり、一旦、獲物をやり過ごしつつ、態勢を入れ替え、獲物を私と挟み

こむ形にします。この時点で獲物もナノさんに向き直っており、私には背中を向けている

ことになります。


 ナノさんが獲物に正面から攻撃を加え、一瞬ですが、獲物の動きを停めます。すかさず

後方に飛び退いて距離を取るナノさん。そこに私が獲物の背後から、必殺の火炎魔法を

叩き込む!

 一瞬で高温の炎に焼かれて燃え上がる獲物!次の瞬間に、獲物は黒焦げの塊となって

その場に崩れ落ちるのです!ふふふ、うふふふ…美しい…


「燃えろ!」


 ゴオォォォォッ!と盛大な音とともに炎と黒煙が獲物を包み込み、肉の焼ける何とも

香ばしい匂いが辺りに立ち込めます。


 依頼達成まで残り三匹。そして私の胸算用では、私自身のランクEへの昇級も、おそらく

これで…。


「ぎゅるるるるぅっ!」


「エンリ、悪い、もう一匹いたっ!」

「えっ?」


 まだ収まらない黒煙の中から飛び出したのは、今こんがりと焼き上げた奴より一回り

大きなレッサーラビット!

 なるほど、夫婦ものでしたか…なんて、感心している場合ではありませんね…しかし困り

ました。火炎魔法を撃つには距離がちょっと近すぎる…


「うおぉりゃあぁぁっ!」


 二匹目の獲物に、掛け声とともにナノさんが追いすがり、飛び掛かります。とは言え、

走る相手を背後から殴りつけたのでは威力が十分ではありません。

 レッサーラビットはナノさんを無視して真っすぐ私めがけて突っ込んできます!

 ち、近いっ!


「燃えろっ!」


どっぉぉぉぉぉーんっ! 


「エンリィィィィィィィーーッ!」


 目の前が突然暗転して、私は意識を失ったようでした。



「エンリィィィ、エンリィィィィィィィッ!」

「いやですね…生きてますってば、ナノさん」

「ううぅ、よかったよぉぉぉ」


 私はしばらく気を失っていたようですが、その間にナノさんが私を抱えて安全な場所

まで移動し、応急処置まで施してくれていました。いやぁ、ありがたいですね。

 今いる場所は岩場で、小さな泉が湧いています。湧き水は透明で、これなら煮沸しな

くても充分に飲めそうです。…ナノさんが何も言わずに差し出してくれた木の椀から、

汲みたての冷たい水を頂きます。


「ありがとうございます、助かりました」

「いやいや、俺のミス、だから、さ」


 自分の火炎魔法で獲物もろとも黒焦げになるかと思いましたが、どうやら着弾の直前

にレッサーラビットに弾き飛ばされたのが良かったようです。

 火炎魔法は着弾地点に楔のように突き刺さるので、対象物が今回のように走る動物

だったとしても、その場で串刺しにして丸焼きにできるのですよ。もちろん距離が近すぎ

れば、周りの味方や自分自身を巻き込む危険はあります。

 落下地点が分厚い蔓草の茂みだったのも幸いでした。もっとも全身打撲に加えて蔓草の

棘でローブはズタズタ、むき出しの皮膚も擦り傷だらけですが…


 とりあえず傷口には消毒を兼ねて回復魔法をかけておきましょう。

(痛たたた…ヒリヒリしますね)


「で、ナノさんはお怪我はありませんでしたか?」

「あぁ、直前に『燃えろっ!』て叫びが聞こえたからさ、とっさに身体をひねって真横にすっ

跳んで逃げたから、巻き込まれずに済んだよ。…魔法使いが無詠唱で魔力を発動させ

られるのにわざわざ叫ぶのは、こんな時のためなんだな。よくわかったぜ」


 魔力の発動に際してわざわざ「燃えろ」とか「凍れ」とか叫ぶのは、連携した属性攻撃を

繋げやすくするためでもあるのですが…まあ、それはそれで。なにせ私たちはまだまだ

初心者なのですし。


「時々、いらっしゃいますよね、『今こそわが呼びかけに応え、集え!炎の精霊たちよ』とか

なんとか…」

「あぁ、いるいる!何を考えてるんだかわからねぇ奴な!」

「ふふっ、若気の至り、とでも言うのでしょうかね…」

「ん?エンリ、何か今、遠い目してなかったか?」

「いや、それよりナノさん、やっぱり怪我してますね…片足首をくじいていませんか?」

「えっ…わかっちまったか。横に跳んだときにちょっと、な…」


 私の回復魔法には大した効果はありません。ナノさんの治療には専門の治癒師か教会の

司祭様の祈りに頼るしかないでしょう。

 依頼達成まであと二匹、でしたが…私たちは話し合って、今回の依頼は途中放棄すると

いう判断で合意しました。

 互いに肩を貸し合い、慎重に村に戻ります。夕日が泣いているようでした。



 そんなわけで、討伐依頼をひとつ失敗した私は、こうして地味な採集依頼をこなすべく、

村から西の少し離れた場所にある小さな池まで足を延ばしているというわけです。


 昨日ズタズタになったローブは町の道具屋にボロ布として錫貨二枚で売り、代わりに防具

屋で古着を値切りに値切って銅貨四枚で買いました。まったく大変な出費です。

 もっとも、昨日の相棒のナノさんは、今日一日宿屋で静養ですが。

 …今日は町に帰ったら、何か簡単な摘まめるものでも持って様子を見にいって差し上げ

ましょうかね。


 とにかく体調が完全に戻っていない今は、依頼の回数をこなして、一日も早くランク

アップに近づかなくては…


 こんな時でも報酬がもらえる依頼があるのが、冒険者ギルドのありがたい所ですね。

怪我をしたりした状態でも達成できるような、簡単な採集とかお使いの依頼が用意され

ているのですから。至れり尽くせりとはいきませんが、こうして体調を崩した時でも少ない

ながら収入が確保できるしポイントも貯まる。


 …システムとして考えても、けっこう良くできているんじゃないでしょうか。


 私の考えでは、ランク昇級はポイント制です。

 討伐依頼の達成を一回五ポイントとすれば、採集依頼が二ポイント、町の中や周辺での

「お使い」依頼なら一ポイント。

 FからEランクへの昇級は一番楽なはずですから、必要五〇ポイントとすれば討伐依頼

十回で昇級達成…なんじゃないかなぁ、と思うのです。


 この計算で行くと、これまでの私の獲得ポイントは四十五ポイント。取らぬ狸の何とやら

が正しければ、昨日の討伐依頼を達成していれば、


「おめでとう、これで君はランクE昇級の資格獲得だ。昇級面接を受けるかね?」

「ありがとうございます、もちろんです!」


 という流れになる、はずだったのですがねぇ…

 まあ、ポイント制と言っても必要ポイントが百とか千でした、だったりするかもなのですが。



 だらだらと歩いていたら、街道に沿った背の高い草の茂みの向こうに、池が見えてきました。

この近くにキノコの生えた洞窟があるはずなのですが…あぁ、ありましたね。大人一人が

ちょっと屈めば入れるぐらいの穴が、岸辺の崖になっている場所にぽっかりと開いています。


 町のずっと東の方に足を延ばせば、こんな洞窟にはゴブリンが巣食っている事もあるよう

ですが、ここらあたりは「洞窟」と言っても土質が脆くて崩れやすいので、彼らが住処として

定住するのは難しいらしいらしいですよ。

 



 籠を下ろし、中から枯れ草の束を取り出して洞窟の入り口に積み上げます。

 続いて魔力を少しだけ指先に集中して枯れ草に着火。間もなくモクモクと白煙が立ち

上るのを確認し、今度は手のひらに魔力を集めて弱い風を起こします。

 風で煙を洞窟に送り込んで待つことしばし。


 どうやら蛇も毒虫もいないようだ、と確認できたので、籠を引きずるように洞窟に足を

踏み入れると、足元から壁面から、そこは一面のキノコの世界。

 黙々とキノコを籠に放り込んでいきます。もちろん食用キノコだけを選別するわけです

が、ギルドからはそのための魔道具を貸し与えられていますから、うっかり毒キノコを摘み

取る危険性はありません。


 魔道具といっても、手袋の親指と人差し指の先端に簡単な魔方陣が染め抜かれた小さな

布が縫い付けられているだけのものです。


 この魔方陣は最初に設定した目的のものに反応します。ギルドで依頼を受けた際に、

見本のキノコを摘まみ上げると、ふたつの魔方陣が青く光って設定完了。

 あとは手袋をはめた手をキノコに近づけると、同じキノコならやはり青く光るようになり

ますから、私としては指先が光るキノコだけを無心にむしり取ればいいのです。

 無心にむしる…うふふふ…


 キノコを籠一杯に集め終わったところで、洞窟から出て、次は薬草採集です。

 薬草は葉が独特な色と形をしていて、魔道具で選別する必要はありません。

 魔道具の手袋は大切な借り物ですから、外して道具袋にしまい、ボロ布を手に巻き付けて

手袋の代わりにします。


 池のほとりまで近づくと、水辺の茂みの奥に何やら人影が見えました。


 ゆっくりと近づくと、独り言らしい声が聞こえてきます。


「…すが…もこの俺の…恐れを…よう…」


 何を言っているのか、もう少し近づかないとはっきりしませんが、何となく分かってしまい

そうな自分自身に少し嫌悪感を覚えますね。


 しかし目的の薬草は水辺に生えているのですから、ここで知らん顔をして回れ右して立ち

去る、というわけにもいきません。やれやれ、です。


 背の高い草の茂みをそっとかき分けて、声の主の姿が見える所まで近づくと、釣り竿らしい

物を片手で高々とかかげた、黒づくめの少年の姿がありました。


「我が伝説のシュバルツ・ロッドの威力を見よっ!」


(いや、そもそもその釣り竿代わりの木の枝?黒くないですし!)





 思いっきり突っ込みたいところですが、そこは言葉を飲みこんで、観察を続けます。


 少年は数日前から冒険者ギルドに姿を見かけるようになった新米さんですね。確か

名前は…『疾風のドトゥーレ』さん、でしたか。

 転生した勇者だ、と言う触れ込みで、ところが能力値がオールFでしたという残念な

方でしたっけ。ただ、元気の良さというかポジティヴさだけは抜群のようで、ギルドに出

入りしている冒険者の皆さんからは、それなりに目をかけられているというか、弄り甲斐

があると思われているというか…人気者ではあるようですね。


 今日はどうやら、「魚を釣ってこい」的な調達依頼でも受けてきたのでしょう。まだ日は

高いですし、もう少し観察を続けさせてもらいましょうか。



「クッ、またしても俺様の手の内から逃げおおせるとはっ!やはり暗黒竜の眷属かっ」


 釣り損ねたようです。いったい何匹釣れたのか、あるいは皆目坊主なのか、どちらにせよ、

依頼達成までには釣果はまだまだ届かないようです。

 しばらく地団駄を踏むと、場所を変えるでもなく、また「伝説のロッド」を構えた彼は、

今度は何を考えたのか、竿を持ったまま左に数歩、右に数歩とウロウロし始めました。


 しかし困りましたね。彼が立っているのは、水際の砂地になっている所なのですが、その

すぐ脇に目的の薬草が群生しているのを遠目ですが見つけてしまいました。このままでは

せっかくの薬草が、勇者様に踏みにじられてしまいそうです。



「うぉぉぉ、性懲りもなく餌だけを…さすがに手強い!だが…負けぬっ!」

「勇者様、釣れますか?」

「えっ?うひぇあぉぎゃピョしぇぇ!」


 私がそっと声をかけると、何という事でしょう…勇者様は取り乱した様子で何やら叫び

ながら、手に持った竿でお手玉でも始めたような勢いで、その場でジタバタと踊り出した

ではありませんか。

 ちょっと情けないので、私は手を伸ばします。今にも取り落としそうな竿を私がつかみ

取ると、彼はあっさりとバランスを崩して尻もちをついてしまいました。


「うわわわっ!」




「すると、『勇者・疾風のドトゥーレ』さんはギルドの依頼を受け、『暗黒竜の眷属たる伝説

の怪魚』を退治にいらした、という事でよろしいですね?」

「う、うむ。概ねそのようなものだ。エンリと言ったか…理解が早くて助かる。」



 へたり込んだままのドトゥーレさんのすぐ脇には、見事に潰れた魚籠が…どうやら、彼が

尻もちをついたのは、足元に置かれた魚籠の上だったようです。


 いつまでも「勇者様」でもないでしょうから、「ドゥトーレさん」とお呼びしますが、彼の受

けた依頼はやはり魚釣りのようです。

 青札を見せて頂きますと、[青サーモン五尾の調達]とありました。調達方法には特に

指定がありませんから、自分で釣っても誰かから譲ってもらっても構わない、それこそ店で

買ってもいい、ということですね。


 ドゥトーレさんは朝一番で依頼を受け、この池まで来てはみたものの、どうやら今まで

釣果は見事に坊主。受注の際に貰った釣り餌はとうに使い切り、以後は足元の砂地を掘り

返しては餌になりそうな虫を探して使っていたそうです。


(あぁ、さっき右に左にウロチョロしていたのは、餌探しでしたか)


 それにしても…ちょっとお気の毒ですし、というか…正直、薬草採集の邪魔なんですけど。 


「ドゥトーレさん、使える魔法は何かありますか?」

「魔法?うーんん、以前は『アルティメット・サンダーボルト・核雷撃スペシャル』を好んで使って

いたのだが、最近の俺様は、ちょっと調子が悪くてな…」


ぺしこーん!


 先ほどドゥトーレさんの手からもぎ取ったまま手にしていた、釣り竿代わりの木の枝ですが、

意外といい音を立てて彼の頭にヒットしました。


ぺしこーん!


 おまけにもう一発。


「要するに、『今は魔法は使えないんだよ、はっはっは』ということでよろしいですね?」


 右手に持った木の枝で左の手のひらをぺちぺちしてみせながら、私はドゥトーレさんの顔を

軽く睨みます。


ぺしこーん!


「そこ、何気に目を逸らさない!」

「すっ済みませんんんんんっ、エン…エンリさんっ!」

「わかればよろしいです」


 人間、何事も素直が一番なんですよねぇ、まったく。


「簡単な雷撃魔法が使えるようでしたら、水中に叩き込んで獲物を麻痺させて捕らえる。

火炎魔法も同様に爆発の衝撃波を発生させて、という手も使えたんですけどねぇ」

「な、なるほど!魔法攻撃と言ったら山ひとつ消し飛ばすぐらいが基本だと思い込んでいた。

まさかそんな使い方があったとは、これはさすがの俺様にも想定外の事態というべきか…」


ぺしこーん!


 池に『俺がここのヌシだ』的な生き物が潜んでいたら困りますが、依頼の青札には

そんな注意書きはありませんでしたから、とりあえず岸辺に落ちていた木切れを

拾ってドゥトーレさんに渡します。


「それじゃドゥトーレさん、これをちょっと池の中央に向けて放って下さいな」

「は…はいです、エンリさん」




 大きく振りかぶったドゥトーレさんが木切れを投げると、さすがに私が投げる

よりも遠くまで飛んでいきます。私は木切れが着水して水に沈むタイミングを見

計らって、ぼそっと呟きます。


「…燃えろ」


 水中で『ボスンッ!』という音が響き、続いて少し派手めの水柱が上がります。


 間もなく、水面に大小様々な魚たちがプカプカと浮かんできました。



「じゃあドゥトーレさん、大漁ですよ。どんどん獲っちゃって下さいな。あ、もちろ

ん泳ぎは得意なんでしょうね?」



 ドゥトーレさんは少し硬直していましたが、それでも気を取り直したのか服を

脱いで水に入っていきました。途中、魚籠を忘れたことに気づいて取りに戻って

きましたが…



 私は慎重に周囲を観察し、今しがたの爆音や衝撃で害獣の類が近寄ってきて

いないことを確認し、枯れ枝を集めて火をおこします。戻ってきたらドゥトーレ

さんには、この焚火で体を乾かしてもらいましょう。


 安全が確保できたようなので、キノコを入れた編み籠は焚火から離して置き、

薬草を摘み始めます。

 茎を折ってしまっては新鮮さを保てないので、根元近くを二本の指先で挟むよう

にして、そっと引き抜いていきます。これ、中腰だとけっこう辛いんですよね…


 確か職人ギルドで錬金の修業を積めば、この薬草からポーションとエーテルポー

ションを作れるようになるはずなのですが、修業にどれだけ時間がかかる事やら。


 二束の依頼ですが、夕方より少し早く、なんとか三束集め終わりました。運よ

く薬草が群生していてくれたおかげです。



 焚火の方からドゥトーレさんの大きなくしゃみが聞こえます。獲物を確認して、

彼の依頼である青サーモン五尾以外の魚は…当然、私が頂きますとも。

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