毛嫌いの人
子供は馬鹿だから嫌いだ。
親が愛し合うことを望んで、親に愛されることを望んで、どこまでも献身してしまう。
親なんて見捨てて、二度と振り返らないべきなのに。
貧乏人は馬鹿だから嫌いだ。
汗を流す先に希望を見て、満ち足りた暮らしに憧れつづけて、体制を肯定しつづける。
金持ちを見かけたなら、火を放ってやるべきなのに。
権力者は馬鹿だから嫌いだ。
手にした力に責任を感じて、人助けが感謝されると夢想して、弱者らを守りつづける。
弱者への哀れみなんて、完全に捨て去るべきなのに。
人間は馬鹿だから嫌いだ。
自分を愛し、家族を愛し、心暖かな日常に溺れて、眼前に見える安寧を追いつづける。
世俗になんて見切りをつけて、神になるべきなのに。