会議
「さて、早速だがリエルに用事を頼みたい。魔物を勧誘してきていただきたいのだ。配下の魔物たちは、あらかた勇者にやられてしまったのでな。」
「その件については、ほんと申し訳ないです。」
「よいよい、気にするな。悪いのは全て勇者だ。」
「まあでも、運んできたのは私ですし」
「最終的に勇者を倒したのはリエルだ、気にすることはないぞ」
「んー。まあいっか。で、具体的には誰を勧誘してくればいいの?」
「それは私がご説明致しましょう。今我々がいる魔王城から南に三百里ほど離れた草原にゾリグトイと呼ばれるアンデット・ホースがいます。」
アンデットホース、て言うと旅の途中で見かけた首のない馬かな?
「彼は他のアンデット・ホースよりも数倍体が大きいため群れの長として他のアンデット・ホースを率いています。彼を魔王軍に勧誘できれば他のアンデット・ホースたちも魔王軍に加入してくださるかと。」
「確かに、あいつら足速そうだったし群れでたくさん仲間になればいろいろ助かりそうだね。」
「それにリエルも馬だから勧誘しやすいはずだ」
そういってから魔王は軽く笑った
「まあ、リエルのような馬は見たことも聞いたこともないがな」
「その通りです。ゾリグトイが果たして馬だと認識してくれるのかすら怪しいですよ。」
うんうんとジルが頷く
「・・・そんなに私っておかしい?」
「そうだな・・・魔王の俺すら若干...いやかなり恐怖を覚えるくらいだと言えば良いか?」
笑いながら魔王は言った。いや、若干顔が青ざめているあたり半分冗談半分本気といったところかもしれない
死が身近にあるこの世界で最上級に強い魔王が恐れるほどかぁ。
ま、まあ舐められるよりはいいけど、一応女子なんだよ?いや馬だけど。
「ですが、たとえ馬だと認識されなくとも、服従させる事ぐらいは容易かと。」
なんだか馬鹿にされてる気がするんだけど
「散々言われたけどつまり仲間にできるって事だよね?なら、行ってくるよ。広い魔王城に三人だけってのも寂しいし」
「ああ、よろしく頼む。俺たちも新たな仲間を探しに行くとしよう。行くぞジル。」
何かいいかけた後ハッとした様子でジルは言った
「リエル様、魔王様がご命令を仰ったら魔王様の仰せのままに、と言うのが魔王軍の規律です。ご協力していただけるとありがたいです。」
あーやっぱ規律とかあるのか、面倒臭い、とか思ったけどなんだか格好いい気がする・・・かも
「「魔王様の仰せのままに」」
心なしか、ジルは満足そうだった
「あー、ジル?そんなのなかったと思うんだけど...」
「いえ、私は思うのです。魔王様は日頃から敬意を表されることが少なすぎるのではないかと。」
「いや、俺は親しみやすい魔王を目指してるからそれでいいんだが」
「いーや、それはいけません。魔王様はもっと威厳を持たなくては。先代の魔王様も仰られていました。貴方は優しすぎると。威厳を持った立派な魔王にすると私は約束したのです。」
「そうか、まああまり気にせず程々にな。」
「あなたのことなのです」
苛立ちを抑えられず語気を荒げるジルを見て少しは焦ったのか
「わ、わかった。気をつけるよ。すまなかった」
「・・・はあ、そういうところです。」
頭に?を浮かべている魔王の隣でため息をつくジルを見てなんだか笑いがこみ上げてきた。
「ふふっ」
「「なに笑ってるんだ!」
ですか!」
性格は真逆なのに全く同じタイミングで反応する二人を見てまた笑ってしまった