馬になった
目覚めたら馬になってた。
それだけ
仕事で疲れて帰ってきて、死んだように眠ってたらいつの間にか死んじゃったらしい。
気づけば馬になってた。
...なんで?
転生なんだろうけど、人じゃないの?
ほんと危なかったよ?
縄で首と杭を繋がれてるから、驚いて危うく人を蹴り殺しそうになったんだよ?
向こうが気づいて避けてくれたからよかったものの、馬刺しコースをー直線に走り抜けるところだった。
馬なのが原因なのか、はたまた異世界なのが問題なのか、言葉は全くわからない
ただ、自分の役割は大体分かった
勇者の馬として育てられてるらしい
それが分かったのは転生してから一週間後くらい
突然頭上で大きな力の動きがあったと思ったら、今まで感じたことがない気配を感じたわけ
んで、その力がいわゆる魔力だってことも、気配が自分と同じ世界の人間のものだってことも直感で感じたの
こう、びびって感じで
まあ、異世界から人間が召喚されたってことは勇者なんだろう
それよりも重要なのは勇者が現れてから私の扱いが丁寧になったこと。
ご飯も美味しくなったし、ブラッシングも丁寧になって、まるで自分が王様になった気分。....馬だけど
こんな日々が永遠に続けば良いって願ってたんだけど、そううまくは行かなくって
ついに旅に出る日が来てしまった
勇者は典型的というか、最早やりすぎなレベルでイメージ通りなヲタクだった、気持ち悪い方の。
勇者と従者契約を結ばされて、大勢の人々に見送られながら王都を出た。
...まあ、いくら旅に出るからって言ってもそんなに変わんないでしょって正直なめてたんだよね、あんな勇者でも。
旅が始まってから、自分が甘かったことを強く思い知らされた。
エサなし、ブラッシングなしは当たり前、ゲームの感覚のままなのか、魔物に囲まれていても放置されるし、従者契約を結ばされているので、どこにいても、呼ばれればすぐに駆けつけなければいけない。
遅ければ殴りつけられ、罵倒され、乗り心地が悪ければ首を絞められ、馬肉にするぞと脅され、怯えて過ごす毎日。
そのうち、どれだけ殴られても痛みすら感じなくなっていった
...ほんと、最悪だった。
転機が訪れたのは、勇者が魔王と戦ってる時だった。
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はあ...やっと王都に戻れる...最悪な生活からもおさらばだ
(聞こえるか、不遇な馬よ)
へ?なんか聞こえた?...ああ、幻聴か....
(幻聴ではない。我は魔王軍幹部のゾルである。高圧的な話し方になってしまったが、お主の言葉に翻訳するとどうしてもこうなってしまうのだ。申し訳ない。)
いえ、それぐらい気にしなくても良いですよ。勇者に比べれば全然気にならないですって
(そうか...大変だな...)
いえいえ。で、何のご用で?
(本題に入るとするか。何となく想像がつくやもしれんが、単刀直入にお願いする。頼む!我が主を救ってくれ!)
いや〜無理ですって
(なぜだ?断るのなら理解は出来るのだが...)
?私、勇者と従者契約結んでて逆らえないし、そもそも、ステータスで勝てないし...受けれるなら二つ返事で受けてますって
(何を言っておるのだ。お主の実力なら契約どころか勇者でも瞬殺出来るぞ。)
.......へ?