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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
男子禁制の島
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第八十四話 不穏な二人

突然ガラガラと大きな音をたてて天井が崩れた。暗い洞窟に降り注ぐ岩を必死に避ける。牢屋の柵を潰した岩を乗り越えて瓦礫の届かないところに避難した。

「いったた……やりすぎちゃった」

土煙の中から聞き慣れない声がした。ムクリと起き上がった人は僕をまじまじと見た。

「茶色い髪に茶色い瞳……あなたがアルね!」

肩をガッと掴まれ、僕は縮み上がった。コクコクと頷く。鮮やかなピンク色の瞳を輝かせ、女の人はよかった! と笑った。

「フラッシュから話は聞いたわ。あなたを助けに来たの。私はディアン、医者よ。ベラも私の診療所にいるわ」

「ベラ!? ベラは無事なんですか?」

「ええ、大丈夫。安心して、私は名医よ」

自分で言うのも何だけどね、とディアンははにかんだ。

「ディアン? そこにいるのですか?」

瓦礫の向こうからゆらりと立ち上がる影がある。

「あら、メリー? メリーじゃない! どうして王女のあなたがこんなところに?」

「それよりも、これはどういうことです? なぜ魔物たちが伸びてるの? ディアン、あなたが倒したの?」

よく見るとたしかに、瓦礫に潰された魔物たちがいた。

「倒して何が悪いの? 魔族は私たちの敵じゃない」

「あなただけよ。少なくとも、私の敵ではない。ちゃんと交渉すれば命は助けてくれる」

「アルは生贄ってわけ?」

なんだか険悪な雰囲気に僕はますます縮み上がった。

「あなたこそ、その子と何の関わりが? 男よ? この国の子じゃないわ。あなたが助ける理由はないはずよ」

「いいえ、あるわ。アルは大切な人の仲間なの。みすみす死なせるようなことはできないわ。あなたこそ何なの? こんな魔物なんかに従う必要はないでしょ。それなのに男を連行して、そんなに我が身が大事?」

気が付いて身を起こそうとした魔物をポカッと殴って、ディアンはメリー王女を睨んだ。メリー王女は拳をワナワナと震わせる。

「あんたなんかに……国を捨てたあんたなんかに何がわかるの!? 王女の地位も早々に手放して、私に丸投げにして! 自分はのうのうと海外で生きていたくせに! 国が大変な時にひょっこり帰って来て、島の救世主? 奇跡の名医? ふざけないで!!」

メリー王女はディアンの胸倉をガッと掴んだ。僕はディアンの後ろで生まれたての小鹿のようにプルプルと震える。メリー王女はさらに大きな声で叫んだ。

「あんたがいてくれたら! 唯一魔物たちに対抗出来る神の使徒のあんたが! 島に残ってくれてたら、私だってこんなことしなくていいのよ! 腐王に国民を人質に取られることなんてなかったのよ!!」


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