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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
男子禁制の島
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第七十九話 囚われの姫君

薄暗い牢屋の中で、メリー王女はその身に起こった悲劇を教えてくれた。

「この島は元々緑豊かな綺麗な島でした。そして女性しかいない女人国。この島では何故か男が産まれないのです。不思議でしょう? この島で産まれた女性は、男を求めて外の世界に旅立って行きます。そして帰ってこない……よっぽど外の世界が魅力的なのでしょう。私はここを離れる訳にはいきませんが、一度見てみたいです。あ、まあ、男の人はもう見ましたが……」

王女様は少し身震いした。

「初めて見る男はおぞましいものでした。アレは噂に聞く魔物以上に恐ろしい……アレが来てからこの島は腐ってしまいました。木々は枯れ、水は濁り、空気までも汚れてしまいました。でもアレには誰も敵わない。姉さんでさえ敵わなかった。だから、私は交渉を持ちかけました」

王女様は自傷気味に薄らと笑う。

「話術は得意ですの。アレはとても強いのですが、何故か姉さんを恐れました。理由はそう……姉さんは選ばれた者だから。だから、私達は逆らわない代わりに生かしてもらいました。その対価で私はこうして牢の中ですが、国民が無事ならなんともありません」

「王女様……」

かける言葉が見つからない。

「えっと、あの……アレとは何ですか?」

何とか続けた言葉に、女王様は目を見開いた。

「知らない方が身のためです」

「いえ……よければ教えてくださいませんか? 何か力になれるかも……」

「なれませんわ!」

女王様はぎゅっと膝を抱えた。

「貴方はもうじきアレの餌食なのですから……」

「えっ……?」

さっきの衛兵が言っていた言葉を思い出す。ここはさしずめ食料庫と言ったところか。ならば王女様も危ない……

「に、逃げないと! 女王様も」

「私は逃げれませんわ。私がここにいる限り国民の命が保証されますのよ。大丈夫。私は食べられたりしません」

女王様の言葉に首を傾げる。嫌な予感がする。

「アレは女性は食べないと約束してくれました。私がここで、捕えられた男の気力を削ぐのを手伝うから……」

僕は慌てて女王様から離れた。繋がれた鎖がジャラジャラと音を立てる。

「貴方は助かりません。アレには誰も敵わない。諦めて……そしたら私の国民は生きられる」

僕は狂気に足がすくんだ。

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