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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
男子禁制の島
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第七十三話 病人の嘲笑

アルに呼ばれた気がして、ボクは重い瞼を開けた。随分とリアルな夢を見たせいで、まだ現実との境がハッキリとしない。ぼんやりとした頭でここはどこだろう? と考える。辺りを見回しても木目しか見えず、そう言えば船の上だったとようやく思い出した。身体が熱く気怠い。しかしアルを探そうと、ボクは這うようにして操舵室から出た。フラフラと飛びながら辺りを見回すと、どうやらここはどこかの港のようだった。しかし、大小様々な船が停泊しているわりには静かすぎる。アルの気配も感じない。ボクは嫌な予感がして船から飛び降りた。しかし力が抜けて冷たいコンクリートの上に倒れ込む。ひんやりとしていて火照った身体には大変気持ちよく、たちまち睡魔が襲ってくる。ボクは頬を叩いたり抓ったりして無理やり目を開けた。けれどぐわんと世界が回り、ボクは口元を抑えた。胃液が逆流して食道を焼く。何とか飲み込んだそれは口内になんとも言えない苦味を残して去っていった。しかしまた襲ってくる。それをまた飲み込み、バタリと床に倒れ込んだ。腕にも力が入らず、もう動くことができない。静かな港に自分の荒い呼吸がこだまする。床の冷たさを感じながらボクはゆっくり目を閉じた。

ボクはこのまま死ぬのか……

なんて柄でもないことが頭をよぎる。身体が弱っていると精神も弱くなっていけない。この症状はどうせまた魔力の使いすぎだ。たしかに、あの島で対魔女と対アクアと、間を置かずに魔力を使った。捕った魚を焼くのにも炎を使った。こうなると分からなかった訳でもないのに、随分と軽率だったと嘲笑する。放っておいたせいでここまで症状が酷くなるのは久しぶりだ。こうなったらもうDr.でないと治せないだろう。しかし、頼みの綱のDr.は今どこにいるのやら。あの日Dr.を置いていった自分を少しだけ恨んだ。

でも、もういいや……何だか疲れてしまった……

ゆっくりと沈んでいく意識の中、微かにボクを呼ぶ声が聞こえた気がした。

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