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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
男子禁制の島
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第七十話 死なせねぇ

眼鏡の女の人はベラの体をあちこち触って何かを確認した後、船を島の反対側に誘導した。そこは大きな入江になっていて、いろんな大きさの船がたくさん泊まっている。けれど、なぜか人気がなく静まり返っていた。

「ここはなんですか?」

僕は恐る恐る女の人に聞いた。眼鏡をクイッと上げてその人は答える。

「ここは港だ。あの船着場は入国審査の為に一時的に船を寄せる場所であり、停泊させる場所ではない。船の停泊や荷物の積み下ろしなどは全てこの港で行う。わかったら船をロープで繋ぎ止めろ。そして船から一歩も降りるな」

そう言い残して女の人は通路の向こうに消えていった。僕は言われたまま船にロープを繋ぎ、大人しく船の上でフラッシュが医者を連れてくるのを待った。

操舵室のベラは未だ目を覚ますことなく、うなされて何か言っているが声が小さくてよく聞こえない。僕はタオルで汗を拭いてあげながら、何? と聞き返してみた。するとベラが薄目を開けた。

「ベラ! 気が付いた!? 大丈夫……なわけないよね。どこか気持ち悪いとかある? 喉乾いてない? 少しだけなら水はあるよ。それとも、何か食べ物をもらってこようか?」

思わず詰め寄って、ハッとしてゴメンと項垂れた。大きな声で聞いても頭に響くだけだし、未だ荒い息を繰り返すベラがいくつも答えられるはずがない。

「……ア、ル」

絞る出すようにしてベラが僕を呼んだ。顔を上げて何? と優しく笑いかける。するとベラは僕の頬を優しく撫でて、フワリと笑った。

「良かった、生きてて……」

「えっ……?」

呆気に取られる僕にベラはゆっくりとした動きで抱きついた。

「お前……だけは、死なせねぇ……から……オレが

絶対……守る、から……」

しばらくしてハッとした僕が慌てて聞き返しても、ベラはまた固く目を閉じてしまっていた。

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