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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
男子禁制の島
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第六十八話 捜索

入国審査を通り街に入ったあたしは、早速道行く人に声をかけた。

「すみません、医者を探しているのですが、病院や診療所はありませんか?」

だが、道行く人は誰も足を止めず、むしろそそくさと離れていった。理由はなんとなく分かる。あたしが魔女だからだ。この国は人間の国らしいから、人間より権力者の魔族はさぞ嫌われ者だろう。何しろ法で、魔族は人間を殺して喰ってもいいと定められている。もちろんあたしはそんなグロテスクなことは好まないし、他の魔女たちが喰ったという話も聞かない。悪魔族は特に紳士的で人間に友好的だと聞いている。人を喰ったなんて話は魔物族しか聞かない。あんな野蛮な奴らと一緒にされるのは心外だ。

焦りと苛立ちが募っていく。

「あたしは魔女だが何もしねぇよ! 医者を探しているつってんだろ、教えろよ!」

つい怒鳴ってしまうと当然逆効果で、尚更人は離れていった。

こうしている間にもベラの状態は悪化しているかもしれない。とてもじゃないが冷静になれなかった。

「お嬢さんや、何をそんなに焦ってなさる」

不意に声をかけてきたのは、メイン通りの角でひっそりと店を出している占い師の婆さんだった。婆さんは水晶に手をかざし、フムと笑った。

「お嬢さんは今、見えない闇に襲われておるな。不安、焦り、苛立ち……そんな荒んだ心では見えるものも見えなくなる。明鏡止水の心で周りを良く見なされ。さすれば見えてくるは希望。それは新たな出会いと旅立ち……」

婆さんの話を最後まで聞かずに、あたしは辺りを見回した。目に入ってきたのは日で色褪せた一つのポスター。

『Dr.ピンクの診療所 原因不明、不治の病治します』

あたしはそのポスターをまじまじと見た。文字は少し掠れているが、小さく診療所の場所が書かれている。

「あの王宮の門の手前だな! わかりやすい!」

走り出す前に婆さんに礼を言おうと思ったが、振り向いたそこにはもう誰もいなかった。

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