第六十四話 男子禁制の島
遠くから見えた小さな島は、近付いてみると案外大きな島だった。船着場から真っ直ぐに大きな通りがあり、左右に市場が展開している。通りの突き当たりには城のような建物が建っていた。
「……王宮? 国か、ここは」
あたしがポツリと呟くとアルが顔を輝かせた。
「無人島じゃなくてよかった! こんなに大きな国なら、きっと立派な医者がいるよ」
「そうだな」
アルが先に船を降り、船のロープを柱に括りつける。
「ちょっと、そこの男!」
声に顔を上げると、護衛兵らしき女性が数人こちらに銃を向けていた。
「あ、あの…ぼ、僕らは怪しい者じゃ……」
アルはビビって挙動不審になっている。立派に怪しい。あたしは女性とアルの間に割って入った。
「すまない、あたし達は怪しい者じゃないんだ。コイツはかなり臆病でな、いきなり銃なんか向けられたもんでビックリしただけなんだよ。だから銃は下ろし……」
「そっちは女だな? その黒いマントは魔女か? まあどんな種族であれ、女ならば入国審査の後入国を許可する。しかし男はダメだ!」
銃を構えてない女性が前に出て、眼鏡を少し上げながらあたしの言葉を遮った。その偉そうな物言いに少しカチンとしたが、ベラのためにもここは穏便に済ませたい。あたしは作り笑いを浮かべて、どういうことですか? と聞き返した。
「ここは男子禁制の島、フラウ王国。男性の入国は一切禁じられているのだ。わかったら女は審査室へ! 男は船で待機だ!」
女はまた眼鏡を少しだけ上げた。




