第六十話 一人目と二人目
アルは嬉嬉としてフラッシュの用意した小船に乗り込んだ。フラッシュはいそいそと帆を張っている。ボクは陸の上で箒の乗り心地を試していた。上物ではないがボクの浮遊魔法と相性が良く、すごく乗りやすい。フラッシュは予備にともう一本くれたが、別に二本もいらないからアルにあげた。アルも魔法が使えるようになったら乗れるだろう。しかしまあ、フラッシュのくれた船は小船とはいえ帆船で、オールまで付いていて結構立派だ。
「……ふーん」
「あのおっきい方に比べてちゃんと手入れしてあるぞ。元は買い出し用の船だがな」
船に乗らずジロジロと見ていたからか、フラッシュが振り返ってニッと笑った。
「体に気を付けるのよ、フラッシュ」
後ろからファグが声をかけた。振り返ると、アクアもウェンディもいた。2人ともなにか憑き物が落ちたかのようにスッキリした顔をしている。
「うん。ファグ姉はどうするんだ?」
「うん? 私はウェンディの保護者として、キッチリ面倒見なきゃね」
ファグはウフフと笑ってウェンディの頭に手を置いた。
「私たち海軍に入ることにしたの!」
ウェンディが元気いっぱいに答えた。あの弱虫で自分では何も決めれなかったウェンディが……
「フッ……よかったな。まあ、もう会うこともないだろうがな」
ボクはヒラヒラと手を振って船に乗り込んだ。それを待っていたかのように風が吹き帆が膨らむ。船はあっという間に島から離れた。
「じゃあなー! ファグ姉もウェンディも元気でなー!」
「アクアも元気でねー!」
フラッシュとアルが大きく手を振ると、ファグたちも聞こえないが何か言いながら手を振り返した。