第五十六話 保護者
「話はまとまった?」
その声に顔を上げると、ファグお姉ちゃんが不安定にホウキにまたがりながら降りてきた。そしてほとんど落下と言ってもいい感じに着地する。
「あの霧の魔女、箒乗れないんじゃないの?」
アクアちゃんが私にそっと耳打ちをする。私も小さな声でうん、と返した。
「ファグお姉ちゃんは魔力の使い方はすっごく上手なんだけど、ホウキは全然なんだよ」
小さな声で言ったのだけど、お姉ちゃんは聞こえたのか少しムッとした顔をした。
「ウェンディー? なーにを話してたのかなぁ?」
お姉ちゃんはやっぱり少し怒っている。私は慌てて話題をそらした。
「こ、このアクアちゃんとね、海軍に入りたいって話してたの!」
「海軍?」
「うん、そう海軍! 私強くなりたいんだ! まだまだお姉ちゃんたちみたいに上手くは使えないけど、せっかく魔力が使えるようになったんだし……それで、ええっと……」
不意に、勝手に決めて怒られるんじゃないかと思って次の言葉が出てこない。下を向いてもじもじと指をからませていたら、アクアちゃんが私の頭にポンと手を乗せた。
「ウェンディも私ももっともっと強くなりたい。それには海軍はうってつけだと思う。私は元々海軍に入りたくて島を飛び出してきたんだし……危険なのは十分わかってるつもり! それでも、私はウェンディの意思を尊重して連れていきたい。あなた、お姉さんなんだからわかってあげられるでしょう?」
恐る恐る顔を上げるとファグお姉ちゃんは大きくため息をついた。
「危険とわかっていて1人で行かせられる訳ないでしょう? 私はウェンディの保護者よ」
「ご、ごめんなさ……」
「だから、私も行くわ! 3人で一緒に海軍に入らせてもらいましょう。ツテもあるし、ちょっと調べたいこともね……文句あるかしら、アクアちゃん?」
アクアちゃんは少し不敵に笑って、ないよと返した。