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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第五十二話 連れて行って

アルという少年の半生は思いの外面白くないものだった。本当の親に捨てられ、拾われた先の島の領主の娘に仕え、ベラ様に出会ったのはつい最近。魔物に襲われたところを助けられ、そのまま流れで付いてきたようで……

あまりベラ様と接点はなさそうですね。アッチの娘はこの島に来る直前に出会ったようですし。ベラ様がああも明るくなられた原因は、いったい何なのでしょうか?

閉じていた目をそっと開けると、目の前にベラ様の顔があった。

「どうされました?」

動揺を悟られないよう平静を装って言うと、ベラ様はくっくっと笑われました。

「お前、過去見聞魔法使ってたな? アルの過去を見たのか。見てどうする。お前の知りたいことは見えたのか?」

ベラ様は意地悪そうに笑って言われました。私はため息と一緒に、意地悪ですねと漏らした。

「今更だ」

ベラ様に過去見聞魔法を使えたら楽なのだけれど、簡単に舐め取らせてはいただけないでしょう。

「……ベラ様、イメージ変わられましたね」

それとなく本人から聞き出そうとしたけれど、ベラ様はたちまち不機嫌になって、背中を向けてしまわれました。

「教えてなんかやらないし、お前が知る必要はない」

ゾクリと背筋が凍る低い声に思わず後ずさった。ベラ様の赤い髪が風に靡き、その合間から見えた目に射抜かれて動けなくなる。しかしそれも一瞬で、ベラ様はすぐに前を向かれて、翼をいっそう大きく広げられた。

「じゃあな。お前らとは二度と会うこともないだろう」

「待って!!」

飛び去ろうとしたベラ様をアルが呼び止めた。ベラ様がアルを見下ろしながら、なんだ? と問われました。その声はさっきの声とは比べ物にならないほど優しい声で、やはりベラ様にとってアルは特別な存在なのだと確信する。

アルはベラ様に向かって手を伸ばし、必死の形相で叫んだ。

「僕も連れて行って!!!」

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