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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
旅立ち
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第四話 常闇の訪問者

ボクは高いところから屋敷を見下ろした。やっと居所を見つけたのに、すでに時遅し。崩れた屋敷にゆっくりと降りた。あちこちに死体が転がっている。しかし、その中に探している人はいなかった。うまく逃げたか、あるいは連れていかれたか。とりあえず、ボクは足元の死体を担ぎ上げた。

「これでいいかな? 巻き込まれて死んじゃうなんて、不運だったなキミたち。ただの人間が魔族に出会ったら、まず生きてはいられないからな。かわいそうに……」

あまり『かわいそう』という気持ちはわからないが……

屋敷の裏庭に即席の墓を作って、静かに手を合わせた。見ず知らずの人たちだが、ボクたちの争いの巻き添えを食ったカワイソウな人たちだから、せめてもの供養だ。人にはやさしくするべきだと、亡くなったお母様がよく言っていた。それで何が報われる訳でもないだろうにと、小さくため息をつく。手の土を払ってマントのフードをかぶりなおした。

「さてと……どうしたものかな」

とりあえず彼が生きて逃げたことに賭けて、街の方にでも探しに行くことにした。

秋の夜風が吹く中、ボクはぶらぶらと街中を回った。日が暮れてもうだいぶ経っているから、大通りにも人気がない。明かりがついているのは飲み屋程度だった。ガラの悪そうな男たちが下品な笑い声を上げている。そんなところに、今朝会ったあの臆病そうな彼が入れる訳もないだろう。連れていかれたか、と諦めかけたとき、街の外れで動く人影があった。急いで飛んで行く。

「なんだ、生きてたか。運のいいやつ」

探していたアルは、あの屋敷に続く階段の前で息を整えていた。後ろからゆっくりと近づく。肩に手をかけると、その肩が大きく跳ねた。ひぃ! と小さな悲鳴が聞こえる。そしてゆっくりと振り返った。


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