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第四十七話 アルの悲劇
「お姉ちゃん、この船ホコリっぽいよ……」
緑髪の女の子が紫の髪の魔女のマントの裾を引っ張った。僕は魔女たちに囲まれて腰が抜けて動けない。
「ゴメンね、ウェンディ。すぐに掃除するから、少しだけ待てる? 辛いようなら降りるからね」
紫の魔女は女の子の頭を撫でてウインクをした。
「ファグ姉! すぐに掃除しようよ!」
能面の魔女が箒の柄で紫の魔女の頭を叩いた。
「フラッシュお姉ちゃん、ファグお姉ちゃんが痛そうだよ。それに、私なんだか全然苦しくないの。いつもならすぐにセキが出ちゃうのに」
そうなのか? と言ってお面の魔女が少女に近づいた。包囲網が解けた隙に僕はその場を離れようとする。けれど、砕けた腰では立つこともままならず、2、3センチほど動いて倒れ込んだ。
「おいおい少年、どこに行くんだ? ベラはこの下だぞ」
お面の魔女がナハハと笑って指を鳴らす。目の前でチカチカと何かが光って僕は悲鳴をあげた。
「おやおや、随分と臆病な方ですね」
紫の魔女がクスクスと笑った。そして震えている僕の頬を舐めた。
僕はまた大きな悲鳴をあげて意識を手放した。




