第四十四話 アルと魔女
やっと追いついたと思ったらアクアはまた走り去ってしまった。
「ま、待ってー!」
僕の悲痛な叫びも耳に入らないのか、アクアはあっという間に見えなくなった。僕は足を止めて呼吸を整える。
どうせあのおっきな船に向かっただろうから、ゆっくり歩いて行こう。
そう思った矢先、急に後ろから肩をつかまれて僕は飛び上がった。
「驚きすぎだ、少年」
振り返ると黄色い髪をなびかせた青い瞳の女の人が立っていた。この見覚えのある髪の色は……
「も、もしかして……お面の魔女さん……!」
アタリ! と魔女さんは後ろに回していた般若の面をかぶって見せた。僕は腰を抜かしてぺたんと座り込んだ。ブルブルと震えていると、能面を取って僕の顔を覗き込んだ魔女さんが大口を開けて笑った。
「ナハハハハ! 怯えすぎだ少年。あたしはただ謝りに来ただけだよ。さっきは怖がらせて悪かったな。って、今もか!」
「べ、ベラー! タスケテー!」
僕は思わず叫んだ。すると魔女さんは余計に笑って僕を抱き上げた。
「そう喚くな。今ベラのとこに連れてってやるよ。それまで静かにしてな。こうしないとあたしは人を乗せて箒には乗れないんだから」
小さな人形になった僕を抱えて、魔女さんは箒にまたがって空高く舞い上がった。