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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第四十二話 大人と子供

「おとうさん、おかあさん、おかえり!」

「よかった。やっと会えた」

「もう離れない。僕たち家族はずっといっしょだよ」

なあ、おかしくないか? なんでそんなに喜んでいるんだ? まあ確かに、離れて暮らしていた家族に再開できたのはどれだけ喜ばしいことか。俺も、久しぶりに弟に会えてうれしくないわけじゃない。でも違うだろ?

「あいつらのせいで俺たちはひどい目に!!」

「あれがウワサに聞く魔女だ!」

「なんてひどいことを! ウワサ通りの外道だわ」

違うだろ。そうじゃないだろ。

「ねえ兄ちゃん、魔女って……あの人たちってそんなにひどい人たちだったの?」

弟が遠慮がちに俺の袖を引いて声を潜めて言った。なんだかすごく悲しそうな顔をしている。お前が痛いわけじゃないのに、優しいなお前は。兄ちゃんうれしいよ。

「そうだなぁ。父さんたちが言ってることは間違ってないのかもしれないけど、兄ちゃんはそうは思えないんだ。俺たちは自分から望んで魔女について行ったんだからなぁ。騙すほうが悪いのか、騙されるほうが悪いのか……兄ちゃんにはわからないよ」

弟は少し困ったような顔をした。難しい話だったか。

「あのね、お兄ちゃん。僕わかるよ」

……わかるのか?

「きっと誰も悪くないよ。魔女さんにもきっと理由があったんだと思うよ」

「どうしてそう思うんだ?」

「だってね、天使さんが魔女さんたちを助けてたんだ。天使さんが助けたなら、きっと悪い人じゃないよね!」

……何のことだ?

天使……確かに天使はいた。この島にまとわりつく雲を払いのけてくれた、あの赤髪の天使。遠かったから目の錯覚かと思っていたが、こいつもあの人を見たのだろうか。僕らを助けてくれたあの人が魔女も助けたとしたら、それはきっと……

「兄ちゃんもそう思うよ」

でも、父さんたちに言っても無駄だろうなぁ……なんて、胴上げを始めた大人たちを見ながらそう思った。

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