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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第四十一話 やっつけた!

その後、捕らわれていた村人たちは自分の家族の元へ帰り、あんなに桃源郷が素晴らしいところだと言っていたにもかかわらず、手のひらを返したように魔女たちを非難した。石つぶてを投げる子供もいた。僕はそれをアクアの後ろに隠れて見ていた。見ているだけで何もできなかった。僕はとてつもない臆病者で、恐ろしい顔をしている村人たちも、ベラと魔法対決した魔女たちも、どっちも怖かったから。アクアも当然の報いですよ、と小さくつぶやいただけだった。魔女たちは抵抗もせずうなだれておとなしいまま、絶えない石つぶてを甘んじて受けている。ウェンディは二人の魔女の背に庇われて石は当たってないが、その壁になっている魔女たちは顔や手から血が流れている。それでも石は止まない。それどころか、大人たちも一緒になって投げだした。僕は目を見開いた。これじゃあ、どっちが悪者かわかったものじゃない。魔女たちはちゃんと反省しているのに……

そこに人間はいなかった。あるのは収まることのない怒りと、それをふつふつと沸き立たせる狂気のみ。

止めなくちゃ! とは思うものの、恐怖で足が動かない。アクアはまだ魔女たちを許せないのか、横目でちらちらと見るだけで止めかねている。ウェンディが耐え切れず泣き出した。魔女たちは後ろ手でウェンディの頭を優しくなでる。腕を伝って流れてきた血を見て、ウェンディはさらに泣きじゃくった。つられて僕も泣きそうになった。昇る朝日に照らされ、魔女たちの黒い陰が光に飲まれていく。

そして瞬きをした瞬間、魔女たちが消えた。

僕もアクアも村人たちも動きを止めてポカンと呆けていたが、僕はすぐに気が付いて空を見上げた。はるか遠くにキラキラと光る白いものが見える。その間から赤と黒も見え隠れする。

「や、やっつけたぞー!!」

大きな声に驚いて視線を戻すと、村人たちが大はしゃぎしていた。うれし涙を流す人もいた。

「バカバカしい。自分たちが魔女をやっつけて、平和を取り戻したとか言って喜んでいるのですよ」

聞いてもいないのにアクアが答えた。僕はなんだか少し寂しくなった。アクアの袖をちょいちょいと引いて上を指さす。アクアが空を仰いで、なーんだと呆れたような声を漏らした。でも、その口元は少し嬉しそうだった。僕も少し嬉しくなった。

僕らは勝手に喜んでいる村人たちを放って、飛び去るベラの後を追った。

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