第三十九話 光差す
ベラが空に昇って少しすると、天井の穴から光が差し込んできた。この洞窟を照らす明かりとは全く違う、太陽の暖かな光。街の人たちは声を震わせた。中には泣き出す人もいた。やがて降りてきた縄梯子を我先にと上っていき、後には気絶した魔女と僕たちが残った。
「……何があったのかな?」
「外はあんなに雲が覆ってたのに、太陽が覗くなんて……! ベラさんってやっぱりすごい!」
アクアはぐっと拳を握った。穴からベラが降りてくると真っ先に駆け寄ったが、その腕の中にあの子がいるのに気づいて少し後ずさった。
「べ、ベラさん。なんでそんな子と一緒なんですか。危険ですよその子」
ベラは女の子を下ろしてため息をついた。やれやれと首を振りながら肩をすくめる。
「ウェンディが危険なわけあるか。この子は生まれつき体が弱くて魔力も少ないんだ。だからファグたちが笑気を集めて元気にしてやったんだ」
魔力だの笑気だの訳の分からない言葉が飛び交うが、アクアは何か納得したようにそう…と項垂れた。しかしすぐに、バッ顔を上げて言い返そうとした。ベラが頭を掻きながら遮る。
「まあ確かに、ファグたちがしたことは正しいとは言えない。ウェンディを助けるためとはいえ、したことは誘拐だ。だけど、この島の人たちが光を求めていたことは事実。人間は太陽の下でないと生きられないからな。そして、フラッシュの能力でこの洞窟を光で溢れさせ、村の人たちを笑顔にしたのも事実だ。まあかと言って、ボクらが出来ることはもう無いけれどな」
確かに、島を覆っていたあの分厚い雲がなくなったのなら、もうこんな地下にいる必要はない。
「……ベラ様、よくもやってくださいましたね」
憤怒の声に振り向くと、魔女が2人とも起き上がってこっちを睨んでいた。