第三十八話 雲消えて
ウェンディはしゃくりあげて泣き出した。ボクはその涙をそっと拭ってやる。
「できるさ、今のウェンディなら。今まで食べてた飴玉はな、人の笑気を固めたものなんだ。まあわかんねぇだろうが、魔力には生まれ持った絶対量があるが、人の笑顔はその不変のはずの絶対量を高めるっていう効果があるらしい。お前はずっと人の笑気を取り込んできたから、今ならどんな大技だって出せるほど強くなってるさ」
ウェンディには難しすぎたか、少しうつむいてキュッとボクの服をつかんだ。
「……私、強くなれたの? お姉ちゃんたちをもう悲しませたりしない?」
「ああ、しないさ。だからほら、お姉ちゃんたちに強くなったところみせてやれ」
優しく頭をなでると、ウェンディはゴシゴシと涙を拭って、力強く頷いた。どんよりとした雲に向かって手を突き上げ、ウーンウーンと力む。
「お姉ちゃんがやってるみたいに……ブワッとビューっと……」
手のひらに少しずつ魔力が集中していく。ボクはそっと手を添えて魔力を少しだけ分け与える。
あの時助けてくれたウェンディに、わずかばかりの恩返しを……
ウェンディの手から放たれたそよ風は小さなつむじ風になり、やがて暴風となって雲を蹴散らした。