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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第三十二話 聞こえてるよ

飴を舐めながら無邪気に笑う女の子はまだ可愛げがある。けれど、その頭を撫でながら笑う魔女は不気味そのものだ。私は音を立てないように後ずさりした。

だいたい、魔力を蓄えるとは一体どういうことなのか。魔力は生まれたときからその絶対量は決まっている。他人のを吸い取って自分の魔力に変換するという能力もあるらしいけれど、それは一時的なもので、決して蓄えるという表現はしない。なら、今目の前で行われているのは一体……?

考え事をしながら後退していたら、大きな木の根につまずいて派手に後ろに倒れ込んでしまった。その音で魔女に気付かれてしまう。

「あら、逃げようとなさっていたので? 無駄なことを。第一、この場から逃げ出せたとして、どうやってこの島から出るつもりですか? あなたたちが乗ってきた船はもう粉々ですよ。それに、大切なお友達を見捨てて一人逃げるだなんて、なんて薄情な子なのでしょう」

口を歪めて魔女が笑う。私は金縛りにあったかのようにピクリとも動けない。真っ白な霧が辺りを包み込んで、私の視界はゼロになる。

「かわいそうな子。お友達も助けられずに、森の中で人知れず死んじゃうのね。ああ、かわいそうかわいそう」

魔女の笑い声がすぐ近くで聞こえる。きっと私はあのナイフで切り刻まれて死んでしまうんだろう。嫌だ、こんなところで……

「助けて。誰か、助けて!」

「……うるさいなぁ、聞こえてるよ」

空を仰ぐと、霧の隙間に燻った赤色が見えた。


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