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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第三十話 私死んだなぁ……

「“水鉄砲”!」

私は指を銃の形に構える。掛け声と共に、指先に溜まった水泡が勢いよく飛んでいく。しかし、真っ白な視界の向こうで、木が砕ける乾いた音しかしない。

「どこを狙っているのです? 私はこちらですよ」

後ろから魔女の笑い声が聞こえる。私は振り返りざまに、声のした方へ数発お見舞いする。また乾いた音が響いた。

「アハハ、お姉ちゃんヘッタクソぉ」

あの女の子の笑い声も響く。霧に視界を奪われ、もう伸ばした自分の腕さえ見えない。真っ赤な炎が脳裏をよぎって、小さく舌打ちをした。

「あらあらお嬢さん、もう終わり? 張り合いがありませんねぇ。ベラ様のお付きの方なら、もっと魔力を使いこなせてもいいでしょうに」

「お姉ちゃん、もっと遊んでよ。魔力使えるんでしょ? もっとおっきい技出してよ!」

呆れたような声と無邪気な声があっちこっちから聞こえて、頭の中でぐわんぐわんと反響する。思わず耳を塞いでうずくまった。ギュッと目をつぶって、首を左右に激しく振る。

冷たい霧が体に纏わりついて気持ち悪い。汗なのか水滴なのか分からないものが体中を伝う。不意に右手を掴まれた。私は思わず目を開ける。視界いっぱいに魔女の顔が広がっていて、甲高い悲鳴が空気を震わせた。

魔女の後ろで鈍く光る銀色の何かが見えた。私に向かって振り下ろされるそれを凝視しながら、ああ私死んだなぁ……なんてのんびりと思った。


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