第二十九話 お姉ちゃん
「お姉ちゃん、こっちこっち」
「ちょっと待って。引っ張んないでよ」
青い髪のお姉ちゃんは腕を大きく振って、私の手を振りほどいた。私はムスッとして振り返った。
「なによ、遊んでくれるって言ったじゃん」
「言ってない言ってない! 一っ言も言ってない! あなたが勝手にそう思ってるだけでしょ。こんなところまで連れて来て……腕痛かったんだからね。どこよここ」
お姉ちゃんは腕をさすりながら周りを見回す。でも周りは木ばかりで、ため息をつきながら私の後ろを見た。
そこにはお城の入り口のおっきな扉がある。
「お姉ちゃん、お外で遊びたいの? でも中の方が明るいよ?」
「あなた、ここに住んでるの? 王族か何か?」
「おうぞく……? わかんない!」
笑って答えるとお姉ちゃんはまたため息をついた。
「ため息ついたらシアワセがにげちゃうんだよ」
「うるさい! 関係ないわよ! だいたい、あなたがいけないんでしょ」
「えー、なんでー?」
首をかしげながらきくと、お姉ちゃんは頭をクシャクシャとかき混ぜて、知らないわよ! と怒鳴った。
「うるさいのはお前だよ」
不意にお姉ちゃんの後ろから声がした。うっすらと霧が出てくる。
「あ! お姉ちゃん、おかえりー!」
私はファグお姉ちゃんに手を振った。