表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
29/95

第二十八話 笑う般若

僕は大勢の人に町中を連れ回され、くたくたになって広場のベンチに腰かけていた。思わずため息が漏れる。最初こそ二十人以上もの人が僕の周りを囲っていたが、今はもう誰もいない。まるで僕に飽きてしまったかのように見向きもしなかった。

「ベラ……大丈夫かな? アクアさんも心配だなぁ」

「それがあんたのお友達の名前?」

「わっ!」

急に話しかけられ飛び上がった。目の前にあのお面の人が立っている。口元に手を持っていっているから、おそらく笑っているのだろう。僕は少し頬を膨らませた。

「何だ少年。気を悪くしたのなら謝ろうか? だが、そんなもの必要ないだろ? 怒るな怒るな。笑えよ、少年」

「いいです、笑いたくありません。僕、帰りたいんです。出口はどこですか?」

「何で帰りたいんだ? ここは人の想像する理想郷なんだぞ? ここにいれば誰もが笑っていられる。ホラ、見ろよ周りを。悲しんでいる奴がいるか?」

僕は広場にいる人々の顔を流すように見て、首を左右に振った。

「じゃあ、苦しんでいる奴は? 憂いている奴は?」

首を横に振ることしかできない。

「無表情の奴は? いないだろ? なぜなら、ここが桃源郷だからだ! すべての人が笑っている。これが人間の理想だ! あたしたちはそれを実現できている! お前もただ笑っていられるというのに、なぜ帰りたがるんだ? 何が気に入らない?」

僕は俯いて唇を強く噛む。何だかよくわからないけれど、この人がすごく怖い。悪寒が走り、冷や汗が垂れた。

「ホラ、言ってみろ少年。ここはそうして日々進化しているのだ」

笑った般若の顔が近づく。

怖い。怖い。怖い。怖いよ、ベラ……助けて!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ