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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第二十四話 お嬢様

頬に痛みを感じて僕は跳ね起きた。般若のお面を被った人が僕を覗き込んでいる。僕はぶるっと身を震わせた。

「そう固くなるな新入り。何もお前にひどいことをしようとして攫ったわけじゃない」

くぐもった女性の声だった。お面の人は僕の頭をそっと撫でた。蚊の鳴くような悲鳴が漏れる。お面の人はくっくっくっと笑った。

「だからビビる必要ねぇって。あたしらはあんたに楽園を見せてやろうと連れてきたわけよ」

「楽園?」

「そうさ。周りを見てみな」

そう言われて辺りを見渡すと、そこは洞窟のような場所だった。しかし、天井は照明で埋め尽くされて眩しく、開けたこの場所にはビルや家々が立ち並んでいた。

「こ、ここはいったい……?」

「ここは”桃源郷(ユートピア)”。この島の半分以上の人がこの街で暮らしている。水も食料も、衣服、住居でさえも支給される。お金もいらず、働く必要もなく、この街では年中遊んで暮らせるんだ。まさにユートピア、楽園だろう? で、今宵はお前が招待されたのだ」

お面の人は僕の頭をわしゃわしゃと掻き回した。されるがままの僕は、その仕草に懐かしさを覚えた。

まだ小さかったころ、お嬢様はよくこうやって僕を褒めてくれた。よくやったなアル、と誇らしげに笑いながら。とてもうれしかった。産まれてすぐに捨てられ、お嬢様のご両親に拾われてから十何年、いつも僕はお嬢様の隣にいた。わがままだけど実はすごく優しい、一生を捧げるはずだったお嬢様はもういない。

知らないうちに僕は泣いていた。

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