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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第十九話 霧の悪魔

アルさんが消えてしまったせいで買い物には行けず、私たちは一日中宿屋の部屋にいた。特に話もせず、私は椅子に座ってずっとアルさんのことを考えていた。ベラさんはフワフワと浮かびながら窓から外を眺めていた。

日が沈むであろうころ、ベラさんが独り言のように話し出した。

「悪魔とは、魔族の中で一番低い位にいる一族だ。魔物族のように力があるわけでもなく、魔女族のように魔力がずば抜けて高いわけでもない。どっちもそこそこなのが悪魔族だ」

「地位がどうしたんですか? そんなの関係ないじゃないですか。現に悪魔は人を食らってるわけですし……」

私がそう言うと、ベラさんは大きなため息をついた。首を左右に振りながら、お前はバカだなと呟く。

「悪魔たちは魔物みたいにむやみに人を殺したりしない、人徳があるやつらだ。それに、本当に食われているところを誰も見たことがないのも変な話だろ? こんなに手の込んだことをするだなんて、相当頭がキレるぞ」

「でも、だからどうなんですか?」

ベラさんが振り返って私を見た。赤とも黄色とも言えない彼女の瞳が妖艶に光る。一瞬寒気を覚えた。しばらくの間私はその瞳に魅入られていた。ベラさんが窓の外をチラッと見て、出口に向かって飛んでいく。私は慌てて椅子から降りた。

「どこへ行くんですか?」

「外だよ。霧が出てきた」

まさかと思って外を見ると、暗い道の奥から白い霧が流れてきている。振り返るとベラさんがいなかった。急いで下に降り外に出る。玄関を開けた先でベラさんは道の先を睨んでいた。私が話しかける前にベラさんが嬉しそうに言った。

「ほぅら。霧の悪魔がやってきたぜ」

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