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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
旅立ち
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第一話 変わらない日常

僕はいつも通り、まだ空が暗いうちに目覚めた。寝床の布団をキッチリと直し、キッチンに出る。勝手に電気はつけられないから、テーブルに置いたランプの明かりだけで床を掃いた。ついでに水回りもきれいにする。あらかたきれいになると、買い物用の竹カゴとボロ財布を片手に外へ出た。

市場まではかなりの距離があり、歩いて行くと、着く頃にはたいへんな賑わいを見せていた。僕は立ち並ぶ出店の品々を丁寧に、しかし早足で歩きながら見比べていく。真っ赤なリンゴは手に取り蜜を調べ、尻のにおいを嗅ぐ。きらびやかなペンダントなどは、お嬢様に似合うだろうなとは思いつつも、センスがない僕は立ち止まって眺めたりなんてしない。朝の市場で買っていいのは食べ物だけ。実際、それ以上のものを買うお金は持たされていない。

必要なものを全て買い終わるとすぐに市場から離れた。人通りの少ない道を、カゴをあまり揺らさないようにしながら全力で走る。今日は目当ての食材がなかなか見つからなかったから、全力で走っても朝食の時間に間に合わないかもしれない。流れる汗も気にせず、ただひたすらに足を動かした。急いで角を曲がったせいで、丁度そこにいた人とぶつかった。せっかく買ったリンゴが一個、宙を舞う。それを相手の人がキャッチしてくれた。素早く立ち上がりリンゴを受け取る。

「すみません。ありがとうございます」

そう言って頭を下げると、相手の顔も確認せずにすぐさま駆け出した。

「……アル」

名前を呼ばれた気がして、足を止めずに目だけで後ろを見た。そこには誰もいなかった。


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