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パンドラの箱  作者: 傘屋 佐菜
悪魔の島
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第十話 ベラとアクア

アクアが水中へ消えた後も、僕は上を向いたまま動けなかった。少しして、アクアが戻ってきて船が小さく揺れる。そこでやっと僕は正面を向いた。それでもまだ声が出なかった。口を開けたまま唖然としていると、ベラが落ち着いた声で言った。

「人魚の幻獣か……珍しいな。人魚は普通、幻獣族の島から一切出ないと聞いたが?」

「私、家出したんです。海軍に入りたくて」

アクアがそう言うと、ベラは少しだけ眉をしかめた。

「海軍だと? キサマ海兵志望か? 無謀な奴め。海軍は政府直属の機関だぞ。海兵のほとんどが魔族だ。奴らは異種族を認めない傾向が強い。ただでさえ幻獣族は珍しい種族なのに、その中でも普通は出会えられない人魚が、政府に近づいたらどうなるかわからないほどバカなのか?」

「違います」

「じゃあ、自殺志願者か」

「それも違いますよ。幻獣族は世界一の戦闘民族ですから。その中でも、人魚は秀でた魔力を持つんです。私、まだまだ小さいですが、こう見えて結構強いんですよ? 私はこの力を、正義のために使いたいんです」

そう言いながら、アクアはウインクをした。僕はベラの静かで激しい怒気に怯えながら、それを正面から受けて平気な顔をしているアクアをすごいと思った。ベラは小さな声で勝手にしろと言った。アクアは勝ち誇った笑みを浮かべ、初めからそのつもりですと返した。

「だいたい、私より小さいベラさんに言われたくありません」

「何を!? ボクはお前よりずっとずっと、ずーっと年上だ!」

ベラがアクアを指さして叫んだ。急に声を荒げたベラに少しだけ驚く。

身長は、確かにベラのほうがだいぶ低い。口調のせいもあってアクアの方が随分と年上に見える。ベラはわざわざ翼を出し、少し浮き上がって上からアクアを睨んだ。アクアも負けじと睨み返す。僕は間に入って二人をなだめた。

「まあまあ、二人ともケンカしないで。どっちが年上でもいいじゃないですか。実際、お互いに年が分かるような証拠なんてないでしょう?」

僕がそう言うと二人はムッとして、声をそろえてそうだけど! と言った。息が合ったことに二人はまた睨み合ったが、すぐにフンッとそっぽを向く。ベラも静かに降りてきて翼を仕舞った。

僕はまだハラハラしていた。

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