序章 平穏な日常
はじめまして。遠野一樹と申します!色々と至らない点もありますが、少しでも楽しんでくれたら幸いです。
絆とは不思議なものだ。
目に見えず、触れることもできない。
絆の証として、お互い同じ物を持ったり、1つの物を分けたりしたりして、絆があるということを証明しようとする。
だけど、既に固く結ばれた絆なら、物がなくても、決して消えてしまうことはない。
見えなくても感じられるもの、それが絆。
午前の授業を終え、ようやく昼休みだ。
朝川結羽はいつものように屋上で親友の秋葉想志と昼食をとっていた。
目の前の光景に呆れつつ…。
「来未、もう私と籍をいれて鈴原家に嫁いで来てよ!必ず幸せにするから!!」
「きゃー莉愛ちゃん大好きー!!もっとぎゅってしてー!!」
「可愛いー!了解したわ。もう二度と離さないんだから!!」
と、目の前て繰り広げられているクラスメートの藍原来未と鈴原莉愛とのやりとりにだ。
「…あいつら、ますます重症になってない?」
飲んでいたジュースのストローから口を離し,想志が呟く。
「うん…」
結羽も頷く。
来未はともかく、莉愛は女の子が大好きで、
「世界中の可愛い女の子は全員私の嫁!!」
と、言っているほどなのだ。
来未はまあ、莉愛のその性格を知っているからそれに乗っているだけだが。
「結羽も想志も勿体無いよねー見た目が可愛いのに男だもん」
女の子だったら私の嫁候補に入っていたのに!と言う莉愛に結羽は呆れつつ、
「あぁ、俺今男でよかったって、心底思ったよ」
と、返す。
「仮に俺らが女だったらお前はどうするんだよ…」
変に想像したのか想志は嫌そいな顔をしている。
「女の子だったら……………胸はAカップがいいなー!」
と、笑顔で返す莉愛。
来未に至っては声はあげないものの、顔を俯かせ、笑っている。
「……末期だな…」
「諦めよう想志…これはもう絶対治らなねーよ…」
まだきゃーきゃー騒いでいる莉愛をみながら二人ははあ…と、ため息をつくのだった。
「…そういや明日かお前の誕生日」
話題を変えるかのように呟いた想志の声に、結羽はただ頷くだけだった。
平穏な、16歳最後の昼休み。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます!これからも少しずつ頑張っていきますので温かく見守ってもらえたら嬉しいです。