聖なる夜に。
12月24日。
今日はクリスマス・イヴ。
恋人たちが、甘い一時を過ごす日。
私は、もちろん芙蓉さんとお出かけします。
周囲は私以外にも人待ち顔の人たちでいっぱいです。
あまりにも楽しみで、待ち合わせの1時間前に来ちゃった。
今日は洋服が決まらなくて大変だった。
昨日の夜から考えたんだけど、芙蓉さんは綺麗な美人さんだし、あまり子供っぽい服だと釣り合わないよね……って考えると、どんどん服の山だけが出来上がった。
見兼ねたのか、次女の向日葵ちゃんがコーディネートを手伝ってくれたの!
向日葵ちゃんはオシャレだし、私もこれでいいと思うけど……芙蓉さんはどう思うかな?
そんな風にやきもきしながら待っていると、待ち合わせ時間の30分前に芙蓉さんがやってきた。
芙蓉さんが来るとすぐにわかる。周りがザワッとして、みんなが振り返るもの。
芙蓉さんは今日もバッチリ綺麗でした。
さらさらな黒髪も自然なメイクも人目を惹いて離さない。
……あんまり、見ないでほしいな。私の、芙蓉さんなのに……。
「小百合! ごめんなさい。待たせちゃったわね」
「い、いいえ! 私が楽しみ過ぎて勝手に早く来ただけですし!!」
勢い込んで言えば、芙蓉さんは“しょうがないわねぇ、この子は”って感じの、愛しい者を見る目で笑った。
「小百合は今日も可愛いわね。こんなに可愛い子を独り占め出来るなんて嬉しいわ。行きましょう?」
耳元で、さらりと誉められました。
ど、どきどきしたー!!!
***
今日は芙蓉さんと一緒にクリスマスイルミネーションを見に行く約束をしたのですよ!
案の定カップルでいっぱいでした。
イチャコライチャコラしちゃってさ。
私だって負けないんだから!!
よし、いくわよ!
「ふ、芙蓉さん」
「ん? どうしたの?」
「手、繋ぎませんか!?」
言った!!! 私言ったよ。
ヤバい。絶対顔真っ赤だ。外は寒いのに、私だけ熱い。
コート脱ぎたくなってきた。いやいやそれは寒いか。
緊張でぐるぐるする。恥ずかしい。
「……顔真っ赤ね」
「言わないでくださいぃぃ!」
「本当、可愛いんだから」
そう言って、芙蓉さんは私の手を優しくとってくれた。
温かい手の感触に、心までぽわぽわと温かくなった。
イルミネーションはすっごく綺麗でした。
通り道以外の地上、建物、木が、色とりどりの美しい光を纏っている。
キラキラした光が、まるで星屑のようで、一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなる。
ふわ~、と見とれていたら、くいっと手を引っ張られた。
「……芙蓉さん?」
「確かに幻想的で綺麗だけど……私のことも、見てほしいな?」
……。
…………。
ふわぁぁあ!!!
ふ、ふ、芙蓉さん!?
今のはヤバかった!
今のはヤバかったですよ!?
「……もう、景色なんて目に入らないですよ」
ちょっぴりジト目で見やったら、芙蓉さんはフフッと悪戯っ子のように微笑んだ。
「ゴメンね?」
可愛いから許します。
***
イルミネーションを見たあとで場所を変え、ご飯を食べたら日付の変わりそうないいお時間でした。
次の日は仕事もあるので、あまり遅くなるわけにはいきません。
名残惜しいけど、仕方ないよね……。
少しの寂しさは胸の奥にしまい、笑顔でお別れをしないと。
そんな風に考え込んでいると、芙蓉さんから長方形の細長い箱を渡される。
「小百合。 これ、もらってほしいの」
「これは……?」
「クリスマスプレゼント。開けてみて?」
丁寧に包装紙を外して、箱を空けてみる。
「うわぁ……可愛い」
すると中にはお花の形をしたペンダントトップが付いた、華奢なネックレスが入っていた。
なんだか見覚えのあるお花だ。じっくりと見てみる。
「あ……このお花、芙蓉ですね」
「気がついた? つけてあげるわね」
芙蓉さんはにこにこしながら、するりとネックレスを手にとって、私につけてくれた。
しゃらりと首筋をくすぐる感触に、ちょっとだけ肩をすくめる。
「芙蓉さん、ありがとうございます。嬉しいです」
「これ……ね。私の代わりにいつでもつけていてほしくて、ネックレスにしたの」
神々しい微笑みの芙蓉さん。
うわわ!
もう無理です。勘弁して下さい!
今日1日だけで、芙蓉さんにドキドキさせられっぱなしで心臓が壊れそうです。
しかし、これだと私のプレゼントが渡しにくいな。
まぁ、渡さない選択肢はないけれども。
鞄をゴソゴソあさり、私のプレゼントを芙蓉さんに渡す。
「小百合?」
「これ……一生懸命作ったんです」
芙蓉さんは、私のプレゼントを開けた。
ふわりと広がったそれは、手作りのマフラー。
芙蓉さんに似合うように色や形を一生懸命に考えて作った一品。
芙蓉さんは、すぐに首に巻いてくれた。
「……温かいわ」
「よかったです!」
本当によかったー!
気に入ってくれたみたい。
時計を見ると、ちょうど午前0時になるところだった。
その時──ちらりちらりと白いものが降ってくる。
珍しい! 雪だぁ!! ホワイトクリスマスだね!
あ、そうだ。
「芙蓉さん、メリークリスマスです!」
芙蓉さんにぎゅっと抱きついてみる。
ちょっとびっくりした顔をした芙蓉さんですが、すぐに笑顔でぎゅうっと抱きしめ返してくれた。
「小百合、メリークリスマス」
来年も、貴女とクリスマスを過ごしたい。
私たちは、この後しばらくお互いを抱きしめ合っていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
指輪にするか迷った(笑)
またそのうち番外編とか投稿するかもです。




