百合、いりませんか?(前)
【ご注意】きちんと百合フィルターをかけてご覧下さい(笑)
~○月×日~
よーし!今日も頑張るぞ~♪
お店の開店準備をお兄ちゃんと一緒にやる。
重たい鉢はお兄ちゃんに任せて、私は小さい鉢を表に並べる。
~○月×日~
うわー、とっても綺麗なお姉さんにあっちゃった!
さらりと流れる長い黒髪。
キリッとした眼差し。
もうすっごいナイスバディなの!!
自分の幼児体型が悲しくなるよ……とほほ。
仕事とかバリバリ出来そう。
デキル女ってやつ?
……憧れちゃうなぁ。
~○月×日~
今日は生憎の雨。
お客さんもあんまり来ないかなぁ。
あ、お客さん!
あ、あああぁぁああ!!あのお姉さん!
お姉さんがお客さんで来てくれたよ。
あ、あ、濡れちゃってる!
タ、タオル~!
「あの、良かったらお使い下さい」
「え?……あぁ。ありがとうございます」
最初、ちょっと不審者ギミにみられちゃった。
ちょっとションボリ。
でも直ぐに笑顔で受け取ってくれた!
嬉しいなぁ。
「オススメでフラワーアレンジメントを作ってほしいんですけど、どのくらいかかります?」
「時間は30分くらいで、お値段は3000円~になります」
「じゃあ、予算は5000円くらいでお願いします」
美人さんは、声まで綺麗でした。
~○月×日~
またあのお姉さんがお花を買いに来てくれた!
この前のフラワーアレンジメントが好評だったんだって!
喜んでもらえた!嬉しいな♪
よーし、今日も気合いを入れて作るぞー!
えいえいおー!!
~○月×日~
あ、お姉さんだ。
今日はアレンジメントじゃないみたい。
「オススメの花は?」
どうやらお花が好きみたい♪
私も大好きだから嬉しいな。
~○月×日~
お姉さんは今日もお花を買いに来てくれた。
何度か来てくれているうちに、私のこと覚えてくれたみたい。
「いつもありがとうね。貴女のお名前はなんていうの?」
口調も余所行きの敬語から、ちょっと砕けた言葉になった。
ちょっとは仲良くなれた……かな?
~○月×日~
今日はなんだか芙蓉さんの格好が可愛らしい。
綺麗で可愛いなんて、最強だと思います!!
あ、この前名乗ったときに「芙蓉って呼んで?」って言われたの!
もちろん、呼び捨てなんて畏れ多いので、「芙蓉さん」って呼んでるの。
「芙蓉さん、こんにちは。今日はどちらかへお出かけですか?」
「えぇ、今日は彼とデートなの」
え!びっくりした。
でも……そうだよね。芙蓉さん綺麗だもん。
彼氏がいないわけないかぁ。
~○月×日~
今日は雨。
私は猫っ毛だから、雨が降るとまとまりが悪くて嫌なんだよね~。
四苦八苦してると、店先からクスクスと笑う声がっ!
え!?
芙蓉さん!!?
もしかして……見てました?
ああぅ~恥ずかしいっ!!
「芙蓉さん、こんばんは」
「ふふっ、小百合ちゃんの髪、猫っ毛で柔らかいのね」
そう言って、芙蓉さんはほつれていた髪をスッと耳に掛けてくれた。
長くて細い指先が、頬を掠める。
な、なんだかドキッとしちゃったよ……。
「ありがとうございました」
少し震えてしまった声は、バレなかったかな?
~○月×日~
今日は晴れ!
こんな日は気分までうきうきするな♪
鼻歌を歌いながらお花にお水を上げていたら、芙蓉さんが来店した。
「今日はアレンジメントをお願い出来る?」
「はいっ!お任せ下さい!!どんな感じにしますか?」
「小百合ちゃんに任せるわ。小百合ちゃんが作るアレンジメント、好きなのよね」
うわわ、嬉しいな。
最高の誉め言葉だよー!
「これで如何でしょうか」
「うん。今回も可愛いわ。ありがとうね」
パチン!て片目でウインクされちゃった!素敵だなぁ。
~○月×日~
あ、あれ?
芙蓉さんが泣いてる!?
なんで?どうしたの?
「彼氏に振られちゃった」
ええぇ!?
この芙蓉さんを!?
あり得ない!
「な、なんでですか!?芙蓉さん、こんなに素敵なのに!!」
思い切り叫んだら、芙蓉さん、目を見開いて驚いていた。
わわ、驚かせてごめんなさい!
「小百合ちゃん……ありがと」
それから、ポツリポツリと芙蓉さんが話してくれたところによると。
芙蓉さんの仕事が忙しくて、なかなか会えなかったんだって。
それで、今日久々にデートしたときに口論しちゃったみたい。
「俺と仕事どっちが大事なんだよ」って。
仕事に決まってんでしょ!?
彼氏さん、バカなんじゃないの!!?
でも優しい芙蓉さんは、きっぱりと言えなかったみたい。
口ごもる芙蓉さんに、彼氏さんは、「別れる。お前は俺がいなくても、一人で生きていけんだろ」って言って去っていったらしい。
そこまでを弱々しい笑顔で語る芙蓉さん。
私はもう、胸がいっぱいだった。
彼氏さんは本当にバカだ。
芙蓉さんのどこを見ていたの?
こんなにも、彼女は貴方のことを好きだったのに。
「……無理して笑わないで下さい」
悔しい。
悔しい。
芙蓉さん、泣かないで。
顔を上げた芙蓉さんの涙が、ぴたりと止んだ。
「小百合ちゃん……。バカねぇ、貴女が泣くことないのに」
私はボロボロ泣いていた。
本当……私バカだ。
泣きたいのは芙蓉さんなのに。
なのに、涙を止めたいのに、次から次へと熱い涙が止められない。
必死で嗚咽を抑える。
私、今最高にぶちゃいくだ。
「ふ、芙蓉さん、私が、泣いて、す゛み゛ま゛せ゛ん~~」
そんな私に、芙蓉さんはフッと微笑んで、涙をぬぐってくれた。
そして両頬を挟んで、コツンと額を合わせてきた。
「私のために、泣いてくれてありがとう」
ここまで読んで頂きありがとうございました。
百合に初挑戦でしたが、如何でしょう?
よろしければ後編も読んで頂ければ幸いです。