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平成のタスクフォース  作者: 月宵/氷渚
番外編:おまけ
7/58

(2022,12,24)Christmas

「よって、ここにクリスマスパーティーを開催することを宣言する!」


「「イェーイ!!」」


2022年12月24日、零斗がクロノスに帰還して8ヶ月が経過したクリスマスの夜。

麓路が考案したクリスマスパーティーを執り行うというので本部に集まった所存である。

ユウと詩乃も11月より新たに加わったTFメンバーとしてこのパーティーに参加している。


「じゃぁ取りあえずユウと詩乃のTF加入を記念して乾杯!」


「ちょ、これ酒だろオイ!」

「私オレンジジュース」

「じゃぁ俺はコーラで」

「俺ファンタで!」

「わたしくっきー」

「俺は薄めたカルピス」

「私はお茶で」

「私は水で」

「私は零で」

「「オイオイ」」


など各員それぞれ久々に全開で羽目を外しているらしく、

普段よりもさらにエスカレートしたこの状態は混沌その物と言っても過言ではないだろう。

それぞれ誰なのかは分かるものと分からないもの、両方があるがあえて言わないとしよう。

そもそも言った所で特にメリットもなくデメリットもないのだ。

そんな感じでテンションは無駄に昂っていき、最早手におえないレベルにまで達していた。

中でも企画者である麓路は既にMAXの域を超えて武力行使でもしないと止められなさそうな程に悪化しており、パラライズ無しでは恐らく捕まえられないだろう。

そもそもパラライズってなんですか。何か頭がボーッとして上手く働かない。

まさかと思い、コップに注がれた中身の入ったペットボトルのラベルを真っ青になった顔で穴が開く程睨んだ。賞味期限表示やらなんやらが相変わらず並んでいる中、ようやく商品名の書かれた部分を発見した。そして更に真っ青になる。

「製品名 : 日本酒(お酒は20歳になってから)」


「麓路ぃぃぃぃぃ!!」


有無を言わせず一発ぶん殴ってやった。酔った勢いだろうか。

取りあえず、麓路が俺に注いだ飲み物は薄めたカルピスではなく明らかな日本酒だった。

殴られた麓路は何のことかさっぱり分からない様子でこちらを見ている


「お前俺に酒盛っただろうよオイ」


「へ?いや、俺が注いだのは新守のファンタだぞ?」


「あぁ?じゃぁ一体誰が……」


「……」


「……」


「……詩乃?」


「う、うん?何……?」


あまりにも分かりやすい反応だから分かる。酒を盛った犯人は詩乃である。

言動もおかしいし挙動も何かしらがおかしい。と、ここでは思っていた。


「そうだけどあれノンアルだよ?」


「「へ?」」


もう一度日本酒?の入ったペットボトルのラベルを覗きこむが先程と同じである。

勝手に動くことのないラベルが動くわけはない。確かに「日本酒」と書いてある。

そこで、一つのいわゆる最終手段。運命をこの最後の賭けに託すことにした。


「アリス、ほら」


「麓路が入れ替えてた」


「ッオイィィィィィ!!」


賭けはどうやら成功したらしい。碧と同じ狙撃主を務めるアリスは無類のクッキー好きである。その習性というか好き嫌いを利用するためにいつも隠し持っているクッキーをアリスに渡すとごらんの有様である。容易く寝返ってくれる。

取り敢えず詩乃と二人で麓路を縛って隅っこに放り投げる。


「さてと零、コレでどうする?」


「放置」


「了解―」


麓路を縛って放置した後再びパーティーに戻る。それからは結城のスピーチやなんやらがあってかなり盛り上がったものとなっていった。詩乃の番になった時には散々俺の事を語り始めて視線がちょくちょくこちらに注がれるので流石に痛いし恐らく顔も赤い。

そして遂に俺の番が回ってきてしまった。回ってきて欲しく無かったのだが。

だが周囲のギャラリーがはやしたてるので仕方なく段に上がる。

相変わらず俺は人前に出て喋るのは苦手である。それでも喋ろう。


「えー、皆が俺をここに留まらせてくれる理由だと思っているんだ。

 いきなりなんなんだと思うかもしれない。でも実際その通りなんだ。

 皆が今こうして居てくれる。それが俺の存在意義でもあるんだ。

 そして俺の事をいつも考えてくれている詩乃が居るという理由もある。

 それだけじゃない。結城が俺に可能性を見出して誘ってくれなければ、

 今の俺はここには居なかっただろう。それは僅かな違いなんだ。

 結城の機嫌が悪かったり俺がいつものルートを通っていたりすれば、

 皆の前にこうしている事も無かったし、

自分が黒金の血を継いでいるという事も知る事は無かっただろう。

もっと大きいのは詩乃と出会うことが無かった。だから俺は言いたい。

皆がまた来年も今日と同じ状態でまたパーティーがしたいんだ。

これで俺の一言スピーチを終わるよ。メリークリスマス!」


俺がそういうのと同時に会場が歓喜に満ち溢れた。隅っこでうずくまっている麓路も、

さりげなく身動きして解けと言っているので流石に懲りたと判断した俺が縄を撃ってやると待ってましたとばかりに立ち上がってクラッカーを鳴らしだした。

すると突然皆が懐からクラッカーを取り出し、一斉に引いた。

パンッという乾いた音と共に数色のビニールテープが勢いよく飛び出して視界を覆う。

ようやく払いのけた時には皆は着席していて、詩乃が代わりに目の前にいた。


零、色々あったけど君と居るとやっぱり楽しいよ。

 色々にまとめたのは多すぎて皆を待たせちゃいけないと思ったからだけどね。

 それでね、実は言いたいことがあるんだ……。

 私ね、零斗がね……」


ひと時の間。時間が止まったかのような感覚に囚われそうになる。


「……好きです。付き合って下さい…………」


「……あぁ、俺も詩乃が好きだ。俺でよければ……」


途端もう一度クラッカーの嵐に巻き込まれる。ビニールテープに視界が遮られる中、

詩乃が俺に抱きついたのが分かった。その頭をそっと撫でる様にして詩乃を見ていた。

夜が完全に明けるまでいつまでもこの拍手喝采は止まずまた、それを叱る者もいなかった。

こうして、2022年のクリスマスが明けていった。23年はもう目の前だ。




「目標の偵察、完了しました」

「ご苦労。引き続きやってくれ」

「御意」

「さて、君はどう思う。彼は私を凌ぐほどに強くなれるのかな。」

「貴方様に敵う者はこの世界には存在しませぬ。ましてや人間に……」

「違う。彼はもう人間ではない。気付かないようだから言っておくが、ゼウスの憑依下だ」

「あの若造が……でございますか。未熟に見えますが……」

「今は、だな。これから楽しみになる。花村零斗いや、黒金零斗」


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