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平成のタスクフォース  作者: 月宵/氷渚
第一章/TaskForce
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Antimaterial Ammo

麓路の投げたスタングレネードが勢いよく爆発し、辺りを白の海で覆い尽くす。

テロリストは俺たちがいる場所から者が飛んでくるとは思っていなかったらしく、

驚愕の表情で投げられた物体を直視していた。そして俺は隙間から爆発の瞬間を見ていた。

奴は確実に100万カンデラ以上の強烈な光を直視していて、

しかもそれによって発生する180デシベル程の強烈な高周波が、鎧の隙間より入り込んで、

装甲内で乱反射されて大音量へと変貌し、彼の耳を直接攻撃しただろう。

少なくとも人間であれば絶対に数秒は動けない。

半ば呟くようにして麓路に次行動を伝える。


「麓路!給水塔の陰からM16で注意を逸らせ!」


麓路はこちらに返答を返すことなく頷きそして言われたとおりに給水塔の陰に身を潜める。

どことなくその動作にはぎこちなさが感じられた気がしたが、

今は取りあえずといった形ではあるが目の前の戦闘に集中するほかないだろう。

それと同時に頭の中で人知的にありえない速度で、

角度計算、発射速度、空気摩擦のブレを計算し、

即座にどういった向きでどういった速度で、相手の装甲の最高硬度や、

相手にどうやった撃ち方が適しているかを判断する。

結果、Mk23の.45ACP弾を装甲の薄い部分である関節部に撃ちこむことにした。

無論、無理に殺そうとはしない。仕方がない場合、後に引くわけにはいかない場合など

さまざまな条件下のみでの殺害しか合法にはならないのだ。

そもそもタスクフォースが存在するクロノスの憲章にも、

無益な殺戮殺生は合法ではないとす。という項目があることを以前結城から聞いたことがある。


「『第四条』

   ・無益なる殺戮、殺生は合法とみなすことは出来ない。

本当に私があげた学園の資料読んでいないの?」


あのときはそう言われたのを今でもはっきり覚えている。本心だったからだ。

一応クロノスの第四条に載ってる以上、破ればそれ相応の罰が下るのは避けれないだろう。

そういう懸念もあって俺はあえて急所を狙わないことにした。

テロリストという事は分かっている。だが、俺たちが接触した後は問題を起こしていない。

そのせいでこちらには正当防衛という手が使えないわけだ。

そうなれば当然武装解除をして降伏、投降させるしか方法が無いのだ。

無論、口で言うように簡単に事を運べれば苦労はしないのだが。

スタンが相手に影響を及ぼせておける時間は凡そ数秒と言った。

その数秒があれば正直なところ俺と麓路には十分な作業が出来た。


「麓路、左足関節をやれ」


俺がテロリストに走りながら麓路に命令する。そして瞬時にそのM16から三発の鉛玉が

頭を押さえてうずくまっているテロリストの脚に直撃し、その四肢の一つの働きを奪った。

すると当然足が使えなくなったことに気付き、バランスを崩して横向きに倒れる。

その隙を狙って、Mk.23の銃口をその眉間に突き当てる。


「チェックメイト」


そして静かな吐息とともにその引き金を軽く引く。

昼間の静寂を貫くようにして一つの轟音が周りを包み込んで喰らう。

やがてその轟音も次第に少しずつかき消されていく。

銃口を下ろしてほっと一息つく俺を横目に、麓路が寄り添ってきて驚いた様子でいる。


「……殺したのか?」


「いや、そうじゃない。あの至近距離でもこのヘルメットは貫通できないだろうさ。」


信じるかどうかは別として、見た目の状態からしてそうとう厚いと判断したのだ。

実際、半分賭けで撃ってみたが予想通り中の人間に脳震盪を起こさせただけに留まった。

後はこいつを拘束して捕獲すれば任務完了という事になる。

と、そこでユウを忘れていることに気が付く。慌てて端の方に行って下を見やる。

そこにはユウの姿はない。おいて行ったことでキレられてはいないだろうか。

ふとそんなことを考えてしまう。そしてテロリストの方をつい見てしまう。

だがそこには倒したはずのテロリストの姿は残ってはいなかった。


「いない!?」


思わず心に思い浮かべた言葉を口に出してしまう。

俺の大声に反応したのか俺の言葉に反応したのかは分からないが麓路もこちらに駆けてくる。

二人して、先程までテロリストがいた場所を眺めていたがすぐに捜索を開始した。

二人で手分けをして探すが見つからない。頭の中に混乱が生まれてしまう。

そして気付いた。あの重装甲も無いという事に。逃げる当てがないのなら装甲を脱いで逃げる筈だ。

それを着込んだまま逃げたという事は逃げる当てがあるという事だ。

それを思い浮かんだ時に、下の階の方でユウのM82の銃声が響いた。


「麓路!ラペリングしろ!俺は逆側から行く!」


麓路を反対側の淵からラペリングさせる。俺はその反対側から行う。

自分でも分かるのが不思議だが、鷹の目が切れかかっているのが分かってしまう。

それに焦っている自分もこの判断の何処かにあるのだろうか。

ラペリングをしながら降りるものの、中を一回一回確認しなければどの階なのかが分からない。

残念ながら今回はユウは狙撃支援という事で無線を切ってもらっていたのだ。

通信傍受をされていては結局意味がないからなのだ。


「いた、7階だ零斗」


「了解。位置に着いた。やれ」


俺の合図で窓を蹴り破って突入する。そこにはM82を肩に担いで座っているユウがいた。


「ユウ、大丈夫か」


「私は大丈夫です、例のテロリストは私が排除しました」


そう言ったユウの傍らには頭部を撃ち抜かれて絶命したテロリストが横たわっていた。

装甲と言えども対物徹甲弾には敵わなかったのだろう。


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