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奇話百厭  作者: 水崎
8/9

8.前の子


 朝、私は七時半過ぎに学校につきます。学校全体から見ても早い登校です。

 ある日の朝でした。いつも通りの時間、教室のある二階は閑散としていました。廊下の東側から私は西側に向かって歩きます。二階には一年生の教室もあって、二年生の教室は西寄りにありました。

 かららと、私のクラスの扉が開いて友達が出てきました。そのまま私に手を振って更に西へと歩いていきました。階の端にはトイレがあります。彼女の位置からトイレまでと私のその時の位置から教室までは、ほぼ同じくらいで、彼女の前には同じくトイレに向かっていると思われる女の子がいました。

 ゆっくり歩いて教室までたどり着いたとき、突然トイレの扉が開きました。びくっと肩を震わせていると、飛び出してきたのはあの友達。恐ろしい形相で駆け寄ってきた彼女は、息をつまらせながら私に尋ねました。

 自分の前に人がいたかと、その人がトイレに入っていくのを見たのかと。

 どうしてこんなにも怯えているのだろう。どうしようもなくて私はうんと、見たよと言うしかありませんでした。真っ直ぐ前を見て歩いていたので、嘘ではありません。

 しかしその一言がまた彼女の背中に嫌なものを這わさせてしまったようでした。


 あのトイレには左右に三つずつ個室があります。彼女は女の子が自分よりも先に扉を開けて、それを閉めたのを見ていました。髪の短い子でした。

 開けておいてくれればいいのに。そう思った彼女は中に入って、どの個室に入ろうか少し迷ったようです。先に入った子の隣は少しやだかなと思い、顔を上げて、はじめて気がつきました。

 トイレは身構えるほど静かで。

 個室の扉はことごとく開いていました。

 なのに先に入っていったあの髪の短い女の子はどこにもいませんでした。

 でも私の学校にトイレの幽霊の噂なんてなくて、そもそも私は、トイレの扉が開いて閉じた音なんで、一回ずつしか聞いていないのです。



【終】

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