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奇話百厭  作者: 水崎
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3.ぶらんこ


 以前オカルト番組に近所の公園が紹介されているのを見た。それを一緒に見ていた家族みんながこう思ったはずだ。

 ああ、あのブランコか。

 あの公園にはブランコが三つ、ある。周りに柵が張り巡らされてはいるが、使えないことはない。

 真ん中のブランコだ。

 あのブランコは、ひとりでに動き出すブランコだった。風が吹いていないときでも、突然揺れだし勢いをつけ、大きく揺れる。左右はぴくりともしないのに、真ん中のブランコだけが、ぶらぶら一人遊びする。

 そしてあのブランコに乗る子は、例外なく『飛び降りさせられる』。


「なんだかね、押されるーっ、てのじゃなくて、元から座っていた人が立とうとして、それで落ちちゃう感じ。その人が無理やり立とうとするから落ちちゃうんだ」


 インタビューに答える子供と同じ証言を、あのブランコに座った子供たちがする。私も、聞かれたらああ言うだろう。でも、あのブランコには、誰も座ってなどいないのだ。


 特集は、そこで終わっていた。

 なんだ、それまでかと、私は思った。


 あの柵が、何のためにあるのか、言わなかった。



 ちょっと前の話だ。

 あの柵ができる前、あのブランコの周辺では怪我人が続出していた。

 怪我をした子たちみんながみんな「靴が当たった」と言う。大人たちは靴を投げた子どもを見つけようとしたが、いなかったし、彼らはどんな靴が当たったかを聞かれると、知らないと答えていた。

 そのうち、靴はブランコから飛んできたと言い出す子供が現れる。

 ぶらんぶらんと一人遊びするブランコから、靴が飛んでくると。

 その後、柵が取り付けられた。


 今でもする。

 ブランコが大きく揺れ出した後に、柵ががしゃんと、大きな音を立てるときがある。

 誰も傍にいないのに。


 私も幼い頃、靴跳ばしという遊びをしていた。

 たち乗りをしたブランコから、半分脱げた靴を足で片方ひょいと跳ばし、どれくらい飛んだかを競う遊びだ。


 まだあの柵はがしゃん、がしゃんと、音を立てて揺れるのだ。



【終】

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