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2.かくれんぼ
短い、短い話を一つ。
俺がまだ幼い頃――そう、それこそランドセルを背負っていた頃。一人の帰り道を「探検」と称してあちこち歩き回ったことがある。別に友達がいなかったから1人で帰っていたわけではない。ただ単に同じ方面に帰る子供がいなかったのだ。
その日は、良く知らない道に出た。てくてくと一人で歩く。そして、あるモノが聞こえた。
もういいかーい
まーだだよー
複数の、子供の声。どうやらかくれんぼをしているようだ。いったいどこでだろう。
きょろきょろと辺りを見渡しながら歩き続ける。
その時。
「もういいかい?」
子供の声が聞こえた。
遠くからではない。
耳元で、はっきりと。
横を見る。しかしそこには誰もいない。
そして後ろを振り返ると――
在ったのは、壁だった。
今まで通って来た道などどこにもない。
すぐ前には、何故か俺の家があった。
後から聞いた話だが、昔ここの周辺で、かくれんぼをしていた子供が数人、行方不明になったらしい。
何十年たった今でも、子供達はかくれんぼを続けている。
【終】